歯周疾患罹患相当部の象牙質に何か異変がある。

歯周疾患進行・治癒に及ぼす歯質の影響 U

−象牙質の変化−


河田克之
Katsuyuki KAWADA
●姫路市・開業



 歯周疾患を治療し予防していく上で、プラークコントロールを始めとした患者の自己管理や メインテナンスの重要性は改めて述べるまでもない。

口腔内をプラークフリーな状態に維持することは、治療上非常に有効な手段であり、 患者やわれわれにとって理想的な一つの目標である。 しかし、現実にこれを実践し一定以上の成果を挙げるのがいかに困難であるかは開業医である われわれが痛切に感じているところである。

一方、同一口腔内にあっても歯周疾患進行程度に大きな差が認められる症例では、 必ずしもプラークコントロールの成否だけでは理解できない場合が多い。

演者は、第11回兵庫県歯科医学大会において、歯髄の有無が歯周疾患の進行や治癒に影響をおよぼす 可能性について発表したが、今回は、日常臨床で遭遇する幾多の症例の中から歯槽骨破壊や再生に 関係する事実や疑問点を提起し、その関連性の中から歯周疾患の進行や治癒に影響する要因を推察し 報告したい。


 歯周疾患に対する研究は様々な角度から行われているが、歯周疾患罹患部におけるアレルギー 反応の存在や免疫に関する研究は今後ますます注目される分野であると思われる。

歯周疾患以外に 歯槽骨を破壊する原因として、腫瘍、外傷性咬合、根尖性歯周炎(根尖病巣)や歯根破折、 あるいはインプラントの失敗等が考えられ、これらは原因を除去すれば通常医学の原則通り回復する。

歯周疾患に関しても同様に原因となる歯を抜去すれば改善することは周知の事実であるが、 歯牙保存の立場から見て抜歯は良識ある治療方法とは言い難い。

そこで不良肉芽、歯石、 セメント質と順追って除去し一定の効果を挙げているが、目標とする効果は得られていない。 とするならば、更にその先、象牙質にも原因が潜んでいるとの考えも成立するし、事実、 象牙細管内への細菌浸入等の報告もある。

今回、歯周疾患罹患相当部の象牙質に認められた 異変についても併せて報告する。



第12回兵庫県歯科医学大会  1994年 6月26日
  兵庫県歯科医師会館
  (抄)歯界月報  518: 23 1994年 8月