デンタルダイヤモンド  1997年 VOL 22 NO293 別冊号掲載 
こんなときどうする Part2

スタッフが給与や休日数に不満
給与や休日数などの待遇はスタッフにとって最大の関心事。少しでもよく、と望むのは当たり 前である。自院のスタッフが、給与や休日数に不満を持っていると人づてに聞いたとき、経営 者としてまず何を……。

スタッフが給与や休日数に不満
河田 世間の常識に照らし合わせる
世間の常識に照らし合わせ、改善することに何ら問題のない場合には、速やかに改善します。 そうでない場合は、対応策や妥協案を熟慮したうえで、直接スタッフから言われるまで極力放 置し、自然な形で消滅することをひたすら願いつつ、最小限の改善を行います。

経営コンサルタントのアドバイス
 従業員の不満というものは、どれほど労働条件がよくても出るものです。大会社の至れり尽 くせりの給与、勤務条件でもブツブツ文句を言う者がいるくらいですから、際限がないのです。 ただこの質問のように他人に不満を漏らしていることが問題なのです。ます事実の把握が必要 です。「人」というのがどういう人なのか、そのスタッフとどういう関係にある人なのか。そ の人はどういう言い方をしたのか等を確認してみる必要があります。誘導尋問にひっかかった ような状況の場合は、その「人」が意図的に流した情報であることが濃厚になりますしスタッ フが院長に伝わることを意図して流した場合も考えられます。また単なる不満を他人の前で漏 らしたことが伝わったのかもしれません。そういうことを頭において本人に確認してみること が先決でしよう。その時に注意して聞くべきことは、その人に「どういう言い方をしたか」と いうことです。その場の状況をできるだけ詳細に聞き出すことです。言葉のやりとりまで聞く ことが大切です。
 相手の言葉に乗せられたような状況で不満を言っていたのなら簡単な注意で済ませます。経 営状況からすぐには応じられないが、将釆は検討していきたいと言い、事情も知らない人にこ のような話をすると、自分の知らない間にドンドン話の内容が歪められて流れていく恐れを教 えて、言いたいことがあれば直接自分に言うよう話しておくとともに、その「人」の言動に注 意する必要があります。
 スタッフが意図的に、あるいは本当に不満をぶちまけたという状況なら、事態を深刻に受け とめなければなりません。ます優秀なスタッフの場合、自分の能力評価に不満をもっている場 合がありますから、本人と1対1で話し合うことが不可欠でしょう。ただ直接ではなく、他人を 介して伝えるという方法を採ったことへの疑問をただしてみる必要があります。本当に院長に 伝えたいなら直接言うべきであって、それが間接的な方法をとるというのは、他人に聞いても らうことで、自分の言うことの正当性を証明したいという意図された理由があるからかもしれ ません。優秀な人材ですぐ退職されると困るという場合は別ですが、それでなければ「でさる だけ速やかに、穏便な方法で辞めてもらう」ことが必要でしょう。
 また仮に優秀であつても、むしろ優秀だからこそ、このような手段によって勤務条件の改善 に成功したという経験は後の管理に必ず影響してきますので、代わりのスタッフを養成して早 い時期に解雇したいところです。ただそれに代れる人材が出てこない場合は使わざるをえませ んが。「人づてに聞いたからといって給与制度を急に変更する」ことだけは避けるべきです。 それとはまったく別に、このような問題が起こる自医院の勤務条件や待遇面について再検討す る必要があります。たんに不満を漏らすという場合は、思慮が足りないだけですから注意して 済ませることでよいでしょう。