経営コンサルタントのアドバイス
質問の主旨が明瞭ではなかったこともあり、原則どおりの回答が多かったように思います。
この例ではまず再来の患者であり、以前に提示した保険証に基づいて治療し患者負担分はすで
に受領済みであり、保険者に対して請求もしているという前提になっております。したがって
治療済みの診療について患者に保険の資格があるのか、ないのかの確認、資格の有無による対
処の仕方、追加受領する場合の金額、今後の診療に対する料金の請求方法等が問題になります。
まず医院側の対応として毎月きちんと「保険証の提示」が求められていたかどうかが問題に
なります。「再三言ったにもかかわらず、このような事態に陥った場合」は、きまりであるこ
とを説明してその差額を請求する。つまり2カ月分について保険の資格確認が取れても取れなく
ても10割を請求するという対処方法や、保険の患者負担分はすでにもらっているわけだから、
保険者に連絡して資格確認をした後に資格があればよし、なければ10割と患者負担分の差額を
患者に請求するという方法、もしくは自費料金から保険の患者の負担分を差し引いた金額を請
求するという方法、最初に保険証の提示がなければ説明のうえ自費料金を請求するという方法
等、対処の仕方はいろいろ考えられます。
この場合、規則をきちっと説明して原則どありに処理するか、法的には少々問題があっても
あえて患者にできるだけ便宜を計ろうとするかは院長の経営姿勢如何ということになります。
たとえば継続診療手続きまでの空白期間に対して「数ヵ月間治療して信頼関係がうまく成立し
ている場合」は患者に詳しく説明して、その空白の2ヵ月の間に「再診、あるいは電話再診があ
ったことにして治療継続中であることにしてしまう」という先生もおられます。現実には保険
法違反であっても、患者の便宜を考えてこのような処置をする場合もあると思います。
この種の問題は原則どありの対応ができれば何も問題は起こらないれけですが、得てして現
場ではなかなか原則どおりいかないものです。医療機関としての責任、義務だけでなく、保険
者としての責任や義務、患者自身の責任や義務等が規定されていて、その前提のうえに医療保
険制度が成立しています。しかし現実には、その責任や義務が守られず現場では混乱を起こし
てしまうものです。その地域に密着して毎日診療されている場合、一方では法律で規定された
厳格な規則があり、他方には規則違反を繰り返す、あるいは怠惰な患者がいて、しかも医療は
現実に粛々として進めなければならないという局面に常にたたされている臨床の現場で、これ
らにどう対処していくべきなのか。同業者間競争が激しくなるなかで、どのように患者に説明
し規則に従ってもらうかが比較的重要な問題になっています。日常的なこのような行動の積み
上げが、患者にとってその医院のイメージづくりに大きな影響を与えていると思います。