デンタルダイヤモンド  1997年 VOL 22 NO293 別冊号掲載 
こんなときどうする Part2

カルテを見せてほしい
突然、患者に「自分のカルテを見せてほしい」と言われたら、どうしますか。あなたは、 カルテを「どうぞ」と言ってみせますか、それともやんわりと拒否しますか。

カルテを見せてほしい
河田 裁判を前提とした場合は拒否も
開業以来15年、一度も経験はないが、現状でもし要求されれば自信をもって開示するつもりで す。ただし、治療に対する不信感があるからこそ、または信頼関係が構築されていないからこ そ、そのような要求が出るのだろうと思います。したがって、裁判を前提とした場合や、カル テを見ていただいても信頼を得ることが期待できないような状況では拒否する可能性もありま す。

経営コンサルタントのアドバイス
 最近は患者の「知る権利」を尊重する考えが時代の流れとなっています。インフオームド・ コンセントが強調されるのもその流れの一環でしょう。原則としてカルテの開示、閲覧を認め るという先生が圧倒的に多いようですが当然だと思います。患者の人権を守るという視点がら 再考しなければならない問題でもあります。ただ医科等で問題になっているように「悪性腫瘍 等の疑い」のある場合、あくまで患者には告知しないというのが、れが国での慣習とされてお り、告知はまだ社会的なコンセンサスが得られていない状況にあります。したがっていまだに 告知をしないという診療方針をとっている先生も多くいます。「悪性腫瘍の疑い」と診断した 場合、最終的には病院へ送って治療を勧めることになると思いますが、常日頃がらそういうケ ースに遭遇した場合の対処方法を承知しておく必要があると思います。
 このようなケースの場合、カルテを見たいという目的が問題で、何か患者に魂胆があって意 図的に見たいと言っている場合の対処方法に注意する必要があります。診療結果に満足してい ない場合が多いようですが、「治療に対する不信感がある」か、または「信頼関係が構築され ていない」ことによる結果が閲覧希望になっていると見るべきでしょう。したがって、まずど うしてカルテが見たいのがを聞いてみる必要があります。もってまわった言い方よりも表情、 言葉は柔らかく、しかしズバリ聞くのがよいと思います。「私の診療にご不審をおもちで、そ れでカルテが見たいとおっしゃるのですか」と聞いてみるのがよいでしよう。「そうです」と 答える人は少ないと思いますが、一般的には「べつにそういう訳ではありませんけど・…‥」 といった答え方が多いと思います。「いい機会ですから、診療についての私の方針と診療の手 順についてお話ししておきましょう」と断ってカルテを見せながら説明すべきです。こういう ケースの場合、ついカチンときて詰問口調になりやすいので注意が必要です。「見たければ見 よ」という姿勢ではなく、ある程度時間をかけて患者の話を聞き、治療の方針なり手順を説明 するべきでしょう。
 ただコピーをしたいとか、カルテを借り出したいという要望に対しては、ほとんどの先生が 拒否するという回答をされています。一人だけ「必要があればコピー等行う場合もある」と回 答されている先生がおられますが、これは先生ご自身が判断されることでしょう。「法的な要 請がない限り開示にとどめ、コピーや持ち出しは本人であっても不可である」とされている先 生や、また「書き写しやコピー等はされないように注意しないといけない」と回答されている 先生もおられます。診療方法やその内容について他人に見せ批判したいためか、何かの証拠と してコピーや写しが欲しいと言っている場合には渡すべきではないと思います。患者の知る権 利を尊重する必要はありますが、患者の批判に手を貸す必要はないからです。