デンタルダイヤモンド  1997年 VOL 22 NO293 別冊号掲載 
こんなときどうする Part2

経験者採用のポイント
スタッフは院長の片腕。その採用には慎重のうえにも慎重に……。他の医院で数年間経験し、 再就職を希望して来院したスタッフを採用するとき、その基準をどこにおきますか。院長の 目が問われます。

経験者採用のポイント
河田 前医院と自医院の違いを認識させる
治療方針と治療に対する価値観が各医院によって異なることを認識したうえで、当院での 患者さんとの信頼関係が現状の治療方針、価値観のうえに成り立っていることを理解して いただき、まずは従っていただくよう話します。採用後、貴重な情報源として、新たなま たは異なった方法、価値観を積極的に聞いて、一人よがりな判断を変えるよう努力します。

経営コンサルタントのアドバイス
 質問が適切な表現でなかったために誤解を招き、一度自医院で勤務したスタッフが他の 歯科医院で数年勤務して後に、再就職を希望して来院したというように受けとれる内容に なってしまっていましたが、単純に他の歯科医院で数年勤務していた人が、応募してきた と解釈していただければよいと思います。
 まず「他医院を辞めた理由」を聞くことが必要だと思います。それは数年間勤務してい るからです。少なくとも数年というのは歯科のスタッフとしては長い期間ですし、この間 前医の院長の性格や診療方針についてもよく理解していたはずです。年齢的にも卒業後数 年経っているわけですから、通常の知力であれば常識的なことはわっているはずです。給 与も少なくないでしょう。それをあえて職場を変え、給与も低下するかもしれない危険を おかしても再就職にこだわる理由は何か、話してくれるかどうかはわかりませんが、よく 聞き出す必要があります。前医の先生に退職理由を聞くという回答もありましたが、はた して正確に教えてくれるかどうが疑問です。その先生の話は事実であったとしても、たと えば結婚退職等が現実に退職した真の理由であるかどう方の保証はありません。
 また「前医の批判をしない」という条件をつけてあられる先生もいますが、その人の前 医批判を聞いてもよいのではないかと思います。前医の悪口、診療方針の批判等々聞くの は前医の方針に関心があるからではなくて、その人の考えを知るためです。すべてとはい いませんが、かなりやり手の衛生士の場合ですと、彼女なりのーつの考えをもっています。 それを説明する段階でどうしても院長の批判になる場合もあるのです。それを容認してや らないと彼女の考えを深く理解することができません。批判すること自体を封じ込めるの ではなく、批判の内容を吟味するべきでしょう。ただし院長の批判をすることは、理屈っ ぽく、骨のある人材が、たんなる受け売りの口先だけなのかを見抜く必要があります。骨 のある人材は扱いにくいという問題はありますが、扱いの要領を得ればかなり実力を発揮 するものでもあります。
 もちろん「内容だけでなく、その人の話し方や物事に対する考え方に注意して決定する」 ことが必要ですが、「経営上の内情を具体的に話す方」は避けるべきでしょう。経営上の ことに関心が向いている証拠で、今度も必す院長の経営上の、あるいは家庭上のことに関 心を向けてくるからです。
 また自分の診療方針をよく説明するとともに、すでにいるスタッフとの人間関係を壊さ ないで、「郷に入ったら郷に従う」という最低のルールは守らせる必要があります。前医 のよいところを取り入れるというのも面白いと思いますが、あまり度が過ぎますと軽視さ れる恐れがあり、本人のわがままが抑えられなくなりますので注意する必要があります。