デンタルダイヤモンド  1997年 VOL 22 NO293 別冊号掲載 
こんなときどうする Part2

保険指導や監査に対する留意点
やましいところはないが、保険指導や監査は誰でもいやなもの。その対象にならないような 心がけや不幸にも指導にあたった時は……。

保険指導や監査に対する留意点
河田 不備のないカルテ作りに努力
カルテコンピュータを導入している当院では、適応や記載事項の徹底に心掛けると同時に、 エラーチェックを最大限活用して不備のないカルテ作りに努力しています。治療内容の説 明やカルテの送付を求められた場合には、その正当性を最大限主張します。指導に際して は、医学的正当性を主張します。しかし、問題は医学的正当性以前に数字や頻度、保険上 の規則ですから一定の落とし所を覚悟したうえで引き下がります。

経営コンサルタントのアドバイス
 平成8年から新しい集団指導体制がとられるようになり、社保本人の1レセプト当たりの 平均点数が平均より120%以上になっている医院の中から、7〜8%の歯科医院を対象に指導 されるようになりました。これは誰からも不公平と言れれないための、また癒着を生み出 さないために考え出された医療費抑制策なのでしょう。当然指導の対象になった点数の高 い先生は点数を抑制するでしょうから、これを繰り返していけば、平均点数そのものが低 下していくことになり、期せすして点数抑制につながります。県の技官も集団指導体制に ついて質問されても、上方らの指示に基づいて指導しているのであって答えようがないと 言っているそうですが、こういう方法しかないのでしょう。
 ただ、将来さらに患者負担が増加していくと、受診率が低下して平均の患者数は減少し ていくでしょうから、1レセプト当たりの平均点数が上昇していくのではないかと思いま す。1レセプト当たりの平均点数が問題になり、患者数を増やせば下げることができます が、平成9年の4月1日からは社保本人と老人の自己負担が増える予定です。老人の場合は 月2回以下の通院なら自己負担額は減少しますが、1カ月の平均通院回数は3回を超えてい ますので患者負担が増え、したがって患者数の減少は避けられないでしょう。とすれば保 険の集団指導に当たらない工夫などあるのでしょうか。
 回答いただいた内容をみると、「節度ある請求を心掛ける」、「だらだら診療」でいく、 「難易度、複雑性で点数の異なるケースでは点数の低い方」を請求する、「平均的な点数 のとり方」をする、「リコ−ルの患者」を増やす、といった回答があります。それぞれ平 均点数を下げるためにそれなりの涙ぐましい努力をしておられるようです。また平成8年4 月1日より点数改定があり、補綴物維持管理料がつきましたが、平均点数が高いためにわざ わざ採用されなかった先生もおられるようです。先生の方針によってどのように請求され るかはそれぞれの方法があってよいことだと思いますが、このような集団指導体制や個人 指導体制の基での日常の診療活動における精神衛生上の負担はかなりなものがあると思わ れます。それならいっそのことカルテの記載をきちんとして、「カルテ、レセプト、口腔 内の状況が不一致」にならないように注意し、「堂々と保険指導でも監査でも受け」「治 療内容の説明やカルテの送付を求められた場合には、その正当性を最大限に主張する」と いう姿勢を堅持することが必要ではないでしょうか。指導や監査に呼ぼれて、びくびくし ていなければならないことほど自信をなくすものはありませんし、日常の診療姿勢に大き く影響してくると思います。「個別指導は医師としての人生観そのものを問れれるのかも しれない」という元保険担当の先生の書葉は大変示唆に富んでいると思います。