歯根端切除のあと始末

歯根端切除のあと始末
歯根端切除のあと始末
歯根端切除のあと始末
歯根端切除のあと始末
【初診時】
不十分な根管充填と根尖部のアマルガムが問題
【根管治療後】
根充材の一部とアマルガムが病巣内に残存
【根尖部掻爬後】
根尖部に存在する全ての異物を除去

 正規の根管治療が絶対不可能で、歯根端切除術以外選択の余地がない場合もあります。従っ て歯根端切除全てを否定するわけではありませんが、現在行なわれている手術のほとんどが、 誤った認識から行なわれる誤った選択だと思います。ましてや、手術の予後が悪い場合には、 間違いなく誤った選択だったと言えるでしょう。

 炎症の原因が根管内の汚物である以上、この汚物を綺麗に掃除して、二度と汚れが貯留しな いように綿密な根管充填を行う以外治癒の望みはありません。この根管内の汚物を封じ込める ために正式な歯根端切除の術式では、摘出した根尖部の病巣から根っこの先を一部切除して (名前の由来)アマルガムや最近ですとコンポジットレジンを詰めて封鎖します。ところが 現実は、血まみれの手術部から確実な封鎖は不可能と考えられます。歯と詰め物の間に入り込 んだ血液は何れ腐って異物になります。また、綺麗に封鎖した積りでも、何れ必ず脱離してし まうでしょう。脱離すれば根管内の汚物と直接接触しますので元の木阿弥。例え脱離しなかった としてもアマルガム自体水銀化合物ですので、生体にとってはとんでもない異物なのです。
 考えてみて下さい。人工歯根の移植、つまりインプラントに使用されるチタン(金属)は現 状最も生体親和性に優れた材質ですが、その材質をもってしても成功率は95%。チタンほどの 金属ですら直接骨に触れると拒絶反応を起こして5%もの失敗があるわけです。歴史的にインプ ラントの材質として親和性に優れているとされて使われた金や銀ですら全て失敗でした。骨に 直接触れる場所に水銀化合物であるアマルガムを使用して拒絶反応が起こらないわけがないで しょう。

 あと始末の術式も基本的には感染根管治療と同じです。異なる 点は、根尖部がカットされ根管孔が大きく開いているために綿密な根管充填が難しいことです。 根充材が病巣内に大量に流出される懸念があって、流出した根充材や腐敗物が新たな異物とな って治癒を妨げる可能性が高いと思われます。量が少なければ、一時的な炎症はともかく、生 体により自然吸収されますが、量が多いと何時までも吸収されずに炎症を起こし続けます。ま た、アマルガムによる逆根充が為された場合には、これらを取り去る必要が生じます。
 根尖部の掻爬は術式的には 歯根端切除術と似ていますが、すでに正規の根管充填が為された歯根に対して、病巣内 に紛れ込んだ異物を除去するのが目的という点で大きく異なります。逆根充の行なわれていな い歯根端切除もありますので(何を考えて行なった手術か?)、必ずしも根尖部の掻爬が必要 とはいえませんが、歯根端切除のあと始末には根尖部掻爬術が付き物だと考えて下さい。