経 営 戦 略 デンタルダイヤモンド 1998年1月号(通巻307号) 23(1):41
河 田 克 之 |
近年、カルテやレセプトの情報公開を求める動きが強まっています。これは医療に対する信頼の
失墜が根本的な原因だと思います。これまで、プライバシーの保護を盾に公開を拒んできましたが、
実際には公開されると都合の悪いことが多いのが本音ではないでしょうか。
確かに"告知"の問題など克服しなければならない障害があることも事実です。乱れた文字や誤字も
その一つですが、記載不備や実体との隔壁が最大の理由です。それらに自信があれば進んで公開に
応じるべきですし、自信がなくても信頼を回復するためにも公開して非を正すべき努力をしなくて
はなりません。
私の医院での実体を振り返ってみると、カルテはコンピュータを駆使して非常に能率よく書けて
いますし、指定された内容はほとんど網羅しており、かなり完璧に近いと思っています。
勿論、コンピュータのことですから、誤字もなく書体を恥じることもありません。
カルテの記載要項に沿って、あらゆる情報をカルテに記載していますので効率の良い診療と
患者さんとのコミュニケーションを図ることも可能です。ところが、これだけのカルテを書く
ためには、1時間の治療時間のうち極端な場合30分も時間を費やしていることもしばしばです。
1初診1回とか年齢や歯数による点数の違いなどは、コンピュータが即時にチェックし自動的に
変換してくれますが、6人もいる衛生士の誰が・何時から・どんな内容の指導をしたとか、
義歯の装着日はいつで調整は何回目で以前に修理の経歴があるかなどを調べて記載するのは
大変な苦労です。
例えば、歯肉を切除し根面形成を行って、コアーの印象を採り、
TEKを作った場合。しかも、ブリッジを予定して数本の歯を処置した場合には、確実に
1時間程度の時間を要します。それが再診料の36点だけでは、支払いする患者さんも不信に思います。
おまけに、次回コアーセットしてTEKを作り直しても1時間もかからないのに請求は1万円以上
になると患者さんの不信は頂点に達してしまいます。このような不信を招く療養規則の改正を
すみやかに行っていただきたいと思います。