埼玉県の加藤聡先生等が上尾の渋谷病院に来られた患者毎年1,000人の
歯内療法の治療状態を1969(昭和44)年から1980(昭和55)年の11年間にわたってレントゲン的に評価。
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レベル1:根充剤が歯冠部にしかない レベル2:根充剤が歯根1/2までしかない レベル3:根充剤が1/2以上あるものの根尖部までは根充されていない レベル4:根管充填がきちんとなされている レベル5:根充剤が根尖孔より溢出している |
示されている結果は残念ながら予想どおりといいますか,11年間観察し続けても,各レベルの割合に
変化は見られず,レベル1が45〜55%,レベル2が25〜35%,レベル3が15〜25%で,期待する
レベル4や5はわずか1%以下でした。
歯種別に見ても大臼歯部の治療がほとんどレベル1,あるいはレベル2の歯根中央部までしか
根管充填がなされていなくて,根管充填剤がきちんと根尖近くまで入っているものがわずか
0.2%以下しかないということでした。
全体の推移や歯種別の推移がともに最初の年1969年(昭和44年)から,だんだん改善が見られる
ならいいのですが,11年経過しても根管充填状況に改善が見られなかったということで,非常に
残念なデータであります。これは1980年までのデータですから,来院患者数の問題とか,地域性
そしていろいろな社会的背景も考えなければいけないと思いますが,ある時期の日本の現状を示
していると思います。
日本歯科医師会雑誌 Vo1.51 No.21998ー5
日付、時間:Tue May 16 8:33:40 Japan 2000
氏名: 吉田佐知子
所在都道府県:東京
職 業:学生
年 齢:21歳
性別: female
ご意見・ご感想:
私は埼玉歯科衛生専門学校に通っている二年生で、今は蕨歯科クリニック
で臨床実習を行っています。
一年生の頃に専門の友達と渋谷病院に通っていましたが、私は以前に他の歯医者でも根充した
事がなかったのですが、友達は以前他の歯医者でいいかげんな根充をされていた、と言う事が、
渋谷病院で明らかになって、友達は嫌な気分と言ってました。
今実習先で、人にやられて嫌な事は自分もしない、とのことを院長から何度も言われているので、
私が歯科衛生士になって、患者と接する時は、常にこの事を念頭において、働きたいと思います。
一言:
根管治療による、術後の疼痛は患者さんだけでなく担当する医師やスタッフにとっても不愉快な
状況です。その不愉快さを少しでも減らす努力をすれば医院内の環境も随分と改善されることと
思います。
最善を尽くしても100%が有りえない現状で、“いいかげんな根充”では患者さんの苦情が目に
浮かびます。おそらく医院内の環境も精神衛生上宜しくないのではないでしょうか。
ご意見・ご感想:
昨年末より左の奥歯の歯茎が痛みすごく腫れました。半年に1回くらいの
ペースではれていたので市販の痛み止めの薬でやりすごそうにもがまんできないほどだったの
で年があけてからいつもいっていたところとはちがう歯科医にいったところすぐに切開して膿を
だしていただきました。レントゲンをとったところかぶせてあるところの根元に膿がたまりおまけ
に歯根もとけてきているとのこと。さっそく銀歯をとり根管治療をしてみましょうということになりま
した。
しかしかぶせた時点での歯の左側の根管治療がいいかげんでななめになっていて根元まで到底
たどりつけそうにないので最悪抜歯になるでしょうといわれました。たしかにかぶせる原因になっ
た虫歯にしてしまった私も悪いのですが素人、ましてや自分では絶対見る事のできない部分の
治療をまかせてやってもらった結果が抜歯になってしまうとは...お金もそんなにかけられない
のでなんとか抜歯にだけはならなければいいなと思っています。このHPをみて大変勉強になり
ました。
メールアドレス: kintako@mtc.biglobe.ne.jp
ホームページURL:
回答:
根尖病巣がある限り根管治療で治癒する可能性はあります。しかし、どうしても治療が不可能な
場合は、病巣を抱えたまま過ごすか、抜歯を選ぶかの選択が迫られます。ただし、大臼歯の場合は、
治療不可能な根っこだけを切り取る ヘミセクションによって再び
機能を回復させる可能性が残されています。
ご意見・ご感想:
毎日根管充填で苦戦中です。歯の寿命を左右 する大切な治療にもかかわらず、
その保険評価は低いと思いま> す。そして、患者さん自身の認識も低いです。与えられた条件
の中でベストを尽くす、それしか考えていません。しかし、 時々難症例の根管治療が空しく感じら
れます。
メールアドレス: jnznj@sun.inforyoma.or.jp
回答:
同業者として全く同感です。
でもこれを積み重ねていくことが、「長い目でみた信頼獲得」だと無理やり自分を納得させております。
実際、「根管治療が“うまい”とか“丁寧”」という評価はなかなか得られないとは思いますが、総合的
に良い評価が得られる可能性のある世の中であることも感じています。
インターネットの中では、多くの患者さんが根管治療を上手にしてくれる歯科医を探していらっしゃる
姿をみて情報公開の恩恵がきっと来ると思います。
ご意見・ご感想:
歯内療法において根官形成は重要です。ただし良好な予後を得る第一歩に
過ぎないのでは?
形成に名人技を振るわれたとします、が しかし それだけでは予後にはっきりとした差が現れ
ない、というところにこの分野の難しさがあるのではないでしょうか。完全に形成ができたとします。
綿栓がぐちゃぐちゃだったらどうでしょう、良好な予後は期待できるでしょうか。おそらくそう遠くない
うちに、ペルってしまうことが予想されます。
また 充填後セメントの硬化時間についてはいかがですか、又その対策は?どのようなご意見を
おもちでしょうか。歯内に興味を持つ一人としてぜひご高説をお聞かせいただけたら幸せです。
メールアドレス: kiyosi@golf.interq.or.jp
ホームページURL: http://www.hips.or.jp/~kkdental/i_keiji003.htm
回答:
成功率98%を越えるハイレベルの次元では、“根官形成は良好な予後を得る第一歩に過ぎない”
と思います。私自身成功率90%以上(自称)と思っていますが、98%との差は究極のところ根管
形成に問題があった場合と解釈しています。直接の原因は、血液の混入が最も多いように分析
していますが、もし根管形成に何ら問題がなければ出血もないはずです。
一般的な治療レベルでは根管形成ができていないのと、根管充填の意味が正しく理解されて
いないことがとてつもなく大きな問題だと認識しています。「綿栓がぐちゃぐちゃだったらどうでしょう」
の意味がもう一つ理解できないのですが…。綿栓がぐちゃぐちゃだったら(ワッテ根充という意味でし
たら)、ご指摘のとおり遠くないうちにペル(根尖病巣に発展)ってしまうことはほぼ間違いがないで
しょうね。
根管貼薬時の“ぐちゃぐちゃ”という意味でしたら、それは根管形成に問題があって完璧な汚物の
除去ができていないと解釈します。
“充填後セメントの硬化時間について”は、根管充填処置に支障ない範囲で早い方が良いと
思います。操作時の硬さと硬化時間については、現在検討中で調整液(おそらく一般入手は不可?)
を使用しています。
血液や、滲出液は、“無い”ことが前提ではありますが、現実にはここがネックになっているケースが
多いようなので、それをクリアーできる薬剤の検討を行っている最中です。
私の場合には“即日充填”が基本ですので、可及的に完全な根管形成と、親和性が良く・不変・
しかも死腔を完全に閉鎖することが可能な根充材の必要性を追求しています。
末筆ながら、これらに関するグッズをメーカーと開発中です。
とても興味深く拝見いたしました。話のできる先生がようやくいらっしゃたか という感じです。
即日充填の技をお振るいになるということですが、その場合充填剤はどのようなものをご使用
になるのでしょうか。
以前ヴィタペックスを用いて即日充填をなさる 先生のお教えを受けたことがありますがとても
すばらしいものでした。
感染根処のばあい即根充はムリなケースが多いと考えられますが、いかがでしょうか。
回答: 現状の歯科界では先生のご意見が一般的であることは、重々承知のうえで申し上げます。 歯周疾患・象牙質知覚過敏・カリエス・根尖病巣の原因論が歯科の一般常識から外れている のは私の方です。その中の一つ、根尖病巣の成因と治癒の理論についてお話します。 歯周組織を破壊するのは、炎症ですし、炎症の発生には細菌が関与していることは間違い ないように思います。その意味では無菌状態とか薬理効果も必要であるとは認識しています。 しかし、忘れてはならないことは、如何に細菌が存在しても正常組織の中では炎症を起こす ことはない(少ない?)という事実です。生体防御機能が働いているにもかかわらず、炎症が 成立するためにはアレルギー反応が不可欠?です。口腔内に限らず、生体を見渡してみると 炎症があるところには必ずアレルギー反応が存在します。これは、医学の立場からみると 常識のはずなのですが、歯科の領域ではほとんど無視されているように思います。 アレルギーの元→アレルゲンがあって始めてアレルギー反応が起こり、生体防御機能を 減退させて、そこに細菌が居るものですから炎症が成立するという図式です。
根管治療に際してのアレルゲンは、腐敗した歯髄壊死組織であり、取り残した歯髄組織が
腐敗したもの、また時としては腐敗?したかつての根充材などが該当します。これらを完璧に
除去すればアレルギー反応は消退しますので炎症は治まります。ただし、除去しただけでは
歯髄腔が死腔として残り、血液などの貯留と腐敗が起こって再び汚物の貯留場となり再び
アレルゲンとなりますので死腔の閉鎖が必要となります。改めて申すまでもなく、この操作が
根管充填です。根管充填材の具備条件は、アレルギーを起こさない生体親和性の優れた
材質で、生体内で不変のものが最低条件です。殺菌のための薬理効果は必要ありませんが、
混入した血液などによる変質を未然に防ぐための効果は絶対条件のように感じています。
以上の一連の理論から、可及的に根管内異物除去ができた段階で、血液や排膿による
異物混入がないような条件であれば即日充填が望ましいと考えています。開業以来、18年
即日充填に徹しておりますが、「術後の疼痛は圧倒的に少ない」と他院での勤務経験のある
衛生士は口をそろえて誉めてくれます。
少し前までは、ファイナペック(京セラ)を使用していました(理由は生体親和性に優れている?から
)。最近は、新しく開発中のキャナルス類似製品を使っています。 |
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返信: Jul 8 Japan 1999
セメント硬化とは根充後の硬化時間のことを言っております。たとえば、キャナルスとか、
FR,KEZとかです。セメントが硬化する前に患者さんが食事をすると 緊密な充填が損なわれ
ると考えられこちらが根管形成,充填を完璧に処置したとしても場合によっては全く無駄に
成る事も多々あると思われますので。これが克服できないので、予後が期待できない?
そのことが手間のかかる根管形成の努力を奪ってるとも考えられます。
オブチュラ的なものは封鎖力が弱いような感じですがいかがでしょうか。
ご高説をお伺いお教えいただけましたら幸せです。
回答: 硬化時間も確かに重要です。先日、5分ほどで固まる根充材を使って、即日コアーの 印象を採りました。仮歯を作らなくてはならないケースにも便利でした。 話の方向が違うようですね。私は、せめて1時間以内に硬化してくれれば通常は大丈夫かなと 思っています。仮封材が脱落するケースもありますが、その件に関してはあまり不都合に感じた ことはありません。具備条件に関しましては、先ほど示した通りですが、封鎖力に関しては ご指摘の通りです。それと、薬理効果の全く無いキャナルスNは、血液の混入にトコトン弱くて 使い物にならないことを実感しました。 |