歯槽膿漏への取り組み
メインテナンスが最善という結論を導き出した経緯


歯槽膿漏への取り組み  大学を卒業して、口腔外科に在局した私にとって骨の再生は身近な現実であると同時に衝撃 的な臨床事実でもありました。口腔外科領域では簡単に獲得できる骨の再生が、歯槽膿漏の領 域で不可能なはずはないという信念にも近い確信は今も当時も全く同じです。しかし、歯槽膿 漏の歯槽骨再生は未だに実現していません。
 その答えは簡単です。口腔外科領域の手術は、炎症を起こして歯槽骨を破壊する原因を完全 に取り除いているから歯槽骨は再生するのです。簡単な例としては、抜歯。歯の何処かに炎症 を起こすべき原因が存在するわけですから、歯を抜いてしまえばもう炎症は起こしません。  歯を残して歯槽骨の再生を試みようとするのが根管治療であったり歯槽膿漏の治療なわけで すが、現状の方法で歯槽骨が再生しない現実を考察すれば炎症を起こすべき原因がまだ残って いるという結論を導きだすのは簡単なことです。そちら方面の研究がほとんど為されていない 現実を知れば知る程、歯槽膿漏によって失われた歯槽骨を再生することが絶望的になってきま す。

 そんな現実を知らない20年前、私なりに歯槽骨再生の夢を追いかけながら他の医院で見放さ れた末期の歯槽膿漏治療に情熱を傾けていました。その噂を聞いて、患者さんは増える一方で す。そのかたわら、少しでも手術時期を遅らせるために行なっていたのが毎月の歯石除去でし た。今で言うメインテナンスです。歯石除去の主役は衛生士なので、私の手を煩わすことはほ とんどありません。「もうこれ以上患者さんが増えて欲しくない」という一念から、無料に近 い当時のメインテナンスを負担に感じることはありませんでした。同時にそれ程大きな成果も 期待していなかったことも事実です。ところが、5年・10年と経過していくうちにとんでもな い成果を感じるようになりました。

 歯槽膿漏が全く進行しない、虫歯もほとんど発生しないという事実を確認するのに10年は かかりました。一方でメインテナンスを行なっていない患者さんは、世間の統計通り順調に 口腔内環境が悪化していきます。この二つの相違が明らかになったことと歯槽骨再生の夢が 絶望的である現実を知った時期が今から10年ほど前だったと記憶しております。
 今でも歯槽骨再生の夢を捨てたわけではありませんが、悪くならない方法があるのだから まずはそれを優先して普及することが大切だと考えています。

      2003.6.22.


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