このコーナーでは、日常臨床と私生活を通して感じた事例を紹介します。

理想的な保険制度?
ドイツ

ドイツ  私が診たドイツ人というのも1人だけで、しかも開業前でしたので20年以上前の話です。 日本への出張中ということもあって、根本的な治療を極端に嫌われている様子でした。アマル ガム(水銀と銀との詰め物)の一部が欠けて気になる様子でしたが「グライディング・ グライディング」とにかく「研磨だけしてくれ」ということでした。口腔内いたるところに アマルガムがみうけられるものの、いわゆる銀歯というものはみあたりません。50歳という 年齢の割に歯肉状態も良く、普段の手入れの良さが伺われます。

 ドイツの公的医療保険は、収入によって強制加入か任意加入に分類されています。給付割合 は10割と恵まれている上に、歯科検診を含む予防や健康増進・リハビリテーションまで巾広く カバーされています。ここで興味深いのは、歯科補綴(ほてつ)についての扱いです。予防検診 の受診状況によって50%を基準に保険からの給付率を変えるといった、予防重視の給付が行われ ているということです。
 アメリカの民間保険同様、予防検診を行っている人の方が明らかに歯科補綴(ほてつ)に移行 する率が少ないことを物語っています。

参考:ドイツ医療関連データ集【2001年版】


 「ヨーロッパでは最高の保険システムだけど、日本のシステムの方が最高」とドイツ在住者 の弁。公的保険は無料だけど、プライベートの患者さんとは差別待遇があって待合室で長時間 待機。反面、プライベートで歯石除去を行なうと審美とみなされて保険給付がなく約2万円の 出費とか。色々と面倒な手続きや審査があって厄介そうです。抜髄や補綴処置が少ない反面、 ひとたび根尖病巣でもできようものなら抜歯か歯根端切除という恐怖的な治療が現実らしい。
2004.1. 9