「 物を作って売った限り品質に責任を持ちなさい」消費者にとってもっともな意見です。
原材料を吟味して、徹底した品質管理の下で作られる製品は可能でしょうが、その結果多くの
廃棄すべき製品・原材料が生まれてきます。
「医療も同じく、治療した限り責任を持ってよ」という言い分は十分理解できますし、日々の研修や
努力の積み重ねで極力そのニーズに応えるように努力しています。
ところが、余りにも厳密に"製造責任的発想"を医療に持ち込むことはとても危険です。医療は
原材料に当たる患者さんの品質を選ぶことができないからです。
患者さんの状態に関わらず最善を尽くすのが医療です。わずかな可能性に賭けて行う治療も多く
存在します。しかるに、治療した限り最低2年間は責任を持ちなさいと規定されると一体どうなる
でしょう。
ハッキリ言って、可能性の薄い患者さんや症例はお断りです。もしくは失敗の可能性を上乗せした
法外な費用請求が必要です。「そんなに治療費が高いならあきらめます」と言えるでしょうか?
それこそ"富める人も貧しい人も・・・"医の倫理が崩壊してしまいます。
歯科の世界には、この忌まわしい"製造責任"が導入されています。クラウン・ブリッジ・入れ歯など
がそれに該当します。確かにこれら補綴物そのものは製作に当たって原材料を選ぶ余地はあります
がそれでも保険規則に規定された範囲の中からだけです。破折がよく問題になる前歯の補綴
(前装冠)などは破折して当たり前の材質です(或る調査によると破折率20%)。より破折の
少ないメタルボンドは保険適応外です。こんな粗悪な材質を押し付けといて製造責任は
ないだろう!!
問題は更に深いところにあります。作った補綴物そのものが壊れることはほとんど稀なことです。
それよりも短期再治療になる原因は、歯そのものの状態の善し悪しです。
ダメかもしれないけど最善を尽くして残した歯でも通常は納得の得られるまで機能しています。
しかし、状態の良い歯に比べれば寿命が短いのは当然ですし、何かとトラブルが多いのも事実です。
歯を残したい患者さんの希望に添って、最大限の努力をすればするほど経営は苦しくなります。
一層のこと、ヤバイ歯を抜いて責任の薄い入れ歯にしたくなることもしばしばですし、現実には
使える可能性のある歯が無惨に抜かれたケースに多く遭遇します。
医療費抑制のために生まれた歯科補綴物製造責任は、決して国民の健やかな健康に奉仕する処か
破壊に導く制度だと思います。
保険規則の問題点/補綴物維持管理料について
ご意見・ご感想:
全く同意見です。ただ、患者さんの中には日本のような至れり尽せりの安い保険制度でもさらに高
いと感じている人が多いことも事実です。300万円もする自動車はローンを36回も組んですぐ買う
のに、歯科治療で20万円もかかるとすごくボラれたようなかんじがするらしいです。車なんか10年も
保ちませんのにね。
国民の意識の低さにも改善の余地があると思います。国民の財布に国が勝手に手をつっこんで保
険料を毎月とっていくような国民皆保険制度をやめたらいいと思っています。アメリカを見習うべきだ
と思いますね。治療の必要な人には必要な治療を行う。なにも健康な人からも毎月保険料徴収する
必要ないと思います。アメリカのように必要であれば任意で個人個人で必要な保険に入ればいいわ
けですし。アメリカの保険では、矯正治療もまかなえる保険もあるそうです。
メールアドレス: nagaya@dent.asahi-u.ac.jp
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感想:
規制緩和が進んで、宅急便みたいな民間保険会社ができれば良いとつくづく思います。
自宅まで取りにきてくれたり、難しい包装は無用で、クールまでサービスしてくれて、それでいて
値段は同じかちょっと高め。矯正治療がまかなえたり、メタルボンドやインプラントまでカバーして
くれる安価な保険。
理にかなわない保険は医者も患者も見向きもしない。社会主義的押し付けではどうも発展は
見込めないことは、歴史がとっくに証明しているはずなんですがね。