メインテナンスの制度が「絵に描いた餅」たる所以は数えればキリのないくらいあります。
その一つが「歯周疾患の症状が安定したことを確認してメインテナンスに移行すべし」という
文言です。
一度症状が安定すれば永遠に安定し続けることが前提です。メインテナンスを続ける限り
永遠に何事も問題が生じないと信じるならば全ての国民に即刻強要すべきです。しかし現実は、
或る一定以上進行した症例ではメインテナンスを行なっていても腫れたり、被せがはずれたり、
新たな虫歯が見つかることもあります。腫れたら歯医者の責任で、投薬や全ての処置は無料で
行なわなくてはなりません。被せがはずれたり新たな虫歯が見つかったら、その言い訳をいち
いち報告しなくてはいけません。被せがはずれて作り替えようとして良くみたら両方の接触部
分に虫歯が見つかったりしたらもう大変。そんなに大量の治療などあろうはずがないという
見解ですから、無料で治療しなくてはならないのです。
メインテナンスに入った限り、少なくとも1年間何事も起こらないと確信できる状態など
絶対に存在しません。結局何かあったら歯医者の責任ということですので、ほとんどの歯科医
にとって挑戦することすら不可能な文言です。
初診時に全体の問題点を見つけ出して一連の治療を済ませたあと、更なる問題がないかどう
かを確かめてメインテナンスに移行するというパターンだけを前提にすればあながち間違いで
はありません。「何かあったら、その時対処する」は通用しません。次の1年を保証しなくて
はいけないからです。しかし、このメインテナンスが長年続いたらどうなるでしょう。
被せの中がちょっと虫歯っぽい。根尖病巣がちょっと怪しげ。と思ったとしても、その時に
治療することが必ずしも得策ではないこともあります。逆にいえば「これからの1年間に必ず
その部分が問題を起こすという確証がないからです。しかも患者さんは何一つ不自由していな
い歯を無理やり説得して治療することくらい難しいことはありません。メインテナンスを始めて
10年も経過すればこのような部位って必ず存在するようになります。そんな事態を想定しないで
作った規則であることは歴然ですね。
メインテナンス期間中に3か月来院が途絶えると初診扱いとして再スタートを切ることに
なっています。新たに初診料を払えば再びメインテナンスを続けることができると簡単に思
いがちですが、実は色々と障害があってまともに取り組んだら実質メインテナンスなんかで
きない仕組みになっています。これも「一旦メインテナンスに入った限り3か月来院が途絶
えることなんか想定していないとしか言いようがありません。
再初診時の治療費が若干高くなることは誰にでも理解していただけると思いますが、たった
3か月途切れただけで何で3回も検査しなくちゃいけないの?患者さんの希望はただ単に以前
のようにメインテナンスの継続です。それでも全くの初診患者さん同様、一から資格審査みた
いな検査を行なって、ペナルティーとして以前メインテナンスに入った時期まで数か月待たな
くてはいけない仕組みになっています。
よかれと思って役所が規則を細かく決めれば決めるほど、規則からはみ出す人が増えてくる
のは明白です。融通の利かない規則は、患者さんの都合とか医師の裁量権を奪って何も出来な
くなっています。かくして、歯医者が歯槽膿漏治療から手を引いた。そして歯槽膿漏はますま
す増え続けている実態を行政はもっと反省すべきです!!