エムドゲイン
保険外治療の口実


 歯槽膿漏によって破壊された歯槽骨を再生する方法として、一部で脚光を浴びている 歯周組織再生誘導材料エムドゲインがあります。 私個人の見解としては、誤った理論の下に生まれた効果の期待できない治療方法ですが、 ここではそのことよりも保険上の取り扱いに触れたいと思います。

 エムドゲインに限らずGTR法などの新しい手法が、 本当に有効であるとするならば即刻保険導入すべきだと思います。財政的な制約もあって 簡単には実現されないとも思いますが、導入されなかったとしても保険上の取り扱いに 大きな問題があります。厚生省は医師の裁量権を制約するものではないと前置きした上で、 それらの材料を保険外として使用することは問題ないが、使用した場合一切の歯槽膿漏治療 を保険外扱いとするという方針です。
 保険適応で歯槽膿漏手術(Fop)を行なった場合、1歯あたり¥6500(3割負担で約 2000円)です。エムドゲインはこのFopを行なった上で薬剤を歯根面に塗布しますが、 この薬剤自体の費用が通常10万円程度。さらにこの薬剤を使用したためにFopも保険外 扱いとなって1歯あたり3万円とか10万円(自由診療ですので医院毎に自由設定)になって しまいます。ついては2箇所で40万円という法外な金額請求 になるのです。その上厚生省の指導に従えば、それ以降(以前も)歯槽膿漏に関わる全ての 処置が保険外扱いとなり、治療費は膨大に膨れ上がってしまいます。

 この問題は厚生省の国民をあざむく違法行為という側面だけでなく、歯科医の合法的な 詐欺行為でもあります。エムドゲインが本当に患者さんにとって有効な治療方法であるか どうかよりも、それを使うことにより高額な保険外治療に導くことができることになります。 財政的理由から新規保険導入を拒否する行政と、保険外治療確保を願う歯科医の利害が一致 して、国民を裏切る詐欺的な行為が合法化されているといえます。
 通常必要な医療行為は全て保険で保証されることを条件に、強制的に保険料を徴収されて いる国民の願いとは程遠い歯科医療現場です。このような歯科業界医が国民の信頼を得るこ とはまずないでしょう。


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