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50歳代の80.6%から60歳代の43.8%と大幅に減少し、80歳代以降ではわずか
10.4%の者しか20歯の自分の歯を保有してない。 資料:岡山県歯科医師会 |
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建て前は「良質な治療の提供」15年ほど前の話です…
増え続ける歯周病患者に全国の大学病院は対応に追われ、本来の研究に支障を来たすほどだ
ったと聞いています。歯周病治療の評価が低く一般開業医では不採算だったこともあって、開
業医レベルで行なうべき処置がほとんど行われていなかったからだと思われます。時の厚生省
と歯周病学会はこの閉塞した事態を解消すべく大幅な保険制度の改革を断行しました。開業医
も納得できる高点数とそれに見合う?大学レベルの治療方法を取り入れた画期的な改革で、こ
の「良質な治療の提供」が実践されれば確実な成果がもたらされたことでしょう。
しかし実態は…
治療計画書に基づく歯周病治療を実践するにあたって、一挙に全てを変えることには無理が
ある(それだけ面倒な治療方法だということ)という配慮もあって、従来型(P U型)と
革新型(P T型)の二本立てが立案され実行されました。U型は、ほぼ従来通りですが多少
の面倒な規制が加わった上に保険点数は引き下げられています。保険点数が上がって良質な治療
が提供されるであろうT型への移行を促進する目的があったものと推測されます。
一方T型はというと、「大学レベルの良質な」というだけあって面倒・厄介・規制だらけと
3拍子揃ったツワモノで、開業医を訪れる患者さんのニーズと実態(都合や価値観)とはおよそ
かけ離れたモノでした。大学病院まで行く患者さんは、余程歯周病に悩んで通院を決意した人で
すし、治りたい一心からお役所的な面倒な治療にも耐え忍んで我慢している人たちばかりです。
歯周病の怖さは、ほとんど自覚症状もなく全ての成人が罹患しているということを重視しなくて
はいけません。その全く自覚のない患者さんが開業医を訪れて歯槽膿漏治療を望むはずもなく、
ましてや厄介な検査や処置を受け入れるはずもありません。仮に熱心な開業医が、歯周病の存在
を告げて説明しても不信感が芽生えるだけです。
開業医にとって、厄介な上に患者さんから不信感の目でみられるT型の治療にはもう一つ大き
な問題が立ちふさがっています。それは保険審査です。元来、医院の不正請求を監視して患者さ
んに良質の治療を提供することを目的とした医療のチェック機能を果たすべき機関です。その
一方で、行政からは一定のノルマが課せられていますので、一定の成績を挙げなくてはなりませ
ん。その小役人たちにとって格好の審査対象が規則の煩雑な歯周病の治療になってしまったので
す。規則が煩雑になればなるほど、何処かに落ち度が生じるものです。医学的に是非を判断する
ことは非常に難しいことですが、書類の不備を探し出すことは簡単です。かくして、厳しいレセ
プト審査が行なわれ、時には院長を呼び出して拷問のような審査が行なわれるようになってしま
いました。
強制的に保険金を徴収しておいて、全ての国民が必要としている歯周病治療を、事実上開業医
が行なえないようにしている保険審査のあり方は明らかに違法行為だと思います。PのT型は地
獄。U型は点数減少。歯周病治療に対する開業医の指揮は下がる一方です。その結果が、厚生省
調査のグラフが示すように疾患の増加をもたらしていることは明らかです。
脈々と現代に受け継がれた悪行政
不評の原点である煩雑な規則と実態を無視した規則は保険改正のたびに緩和されています。そ
の一方で、良質の治療を提供するためにという名目で新たな規則が追加されていきます。トータ
ルとして全く緩和されていない、というよりむしろ強化された規則に着いていくことはもはや
開業医には不可能といっても過言ではありません。
治療計画書の導入、そして2002年のメインテナンス導入と画期的な保険システムを導入しなが
ら、それらのシステムの普及率が上がらないことと増大する患者数の相関を担当する行政はもっ
と真剣に考える必要があります。「歯周病の効果的な予防法はなく…」と責任を逃れるのではな
く、行政の規制が疾患の増大を招いていることを正して下さい。
メインテナンスに象徴される歯石除去さえ普及すれば、劇的な効果が保証されています。その
ための規制緩和と対外的なアピールを行なうことが急務だと確信しています。
2003.5.10.