巾広い用途で診療のレベル・アップ…

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ジョイントキャップ

● リテーナー用モールドシート



  
はじめに

 日常の診療において、テンポラリークラウンの必要性や重要性を改めて述べる必要はない。

最近の保険改訂で比較的高い点数評価を得たものの、経済的,時間的効率を考慮すれば、 できるだけ関わりたくないのが偽らざる心境ではなかろうか。

一方、ハイレベルの治療として注目されているインプラントや顎関節症を手がける際、 案外ネックになっているのがテンポラリークラウンである。 しかも、治療が高度になればなるほど症例が大きくなる。テンポラリークラウンを克服しない限り、 より高度な治療への脱皮が困難であると言っても過言ではない。

 このような状況の下に登場したのが“ジョイントキャップ”である(図1)。 応用範囲が広く、症例が大きくなればなるほど威力を発揮するたのもしいアイテムである。

図1.ジョイントキャップ(ニッシン)

使用感

 第1印象は、綺麗,簡単。患者さんの感謝の言葉に、思わずTEK作りが好きになりそう。 おまけに経済的とくれば、従来のTEK作りの道具が不要なものに思えてくる。


特徴

 理想的な咬合平面を付与した上下顎フルマウスのキャップに、それぞれS,L2種類のサイズ。 これだけで千差万別の症例に対応できるのかと思うが、実際に使ってみると必ずしも 支台歯が歯牙の中心にくる必要はなく全ての症例に対応できる。

 臼歯部は0゜陶歯の形態であることから、スムーズな顎挙上が可能である。


使用法

 使い方は(図2〜12)に示す通りである。多数歯を一括して作成できる上に、 レジン硬化前に口腔内において咬合させているので、咬合調整が簡便でチェアータイムが大幅に 短縮される。

 レジン填入に際しては、少数歯の場合は通常の筆積み法で十分であるが、症例が 大きくなればラバーカップで混和し、スパチュラー等で填入する方がより簡便である(図6)。

支台歯にワセリン等を塗布する必要はないが、臨在歯のアンダーカットには最大の注意が 必要で硬化前には必ず2〜3度着脱する必要がある。変形の問題があるので硬化はできるだけ 口腔内装着の状態で行うのが望ましいが、かなり高温の発熱があるので注水する等の 工夫も必要である(図8)。

また、支台歯が直接シートに当たったり気泡が混入したときには、レジン硬化後若干の修正が 必要である(図10)。

図2.術前。1」先天欠如 図3.通法により支台形成する 図4.支台形成後、ジョイントキャップ
を使用部位でカット
図5.咬合関係を確かめながら試適する。
歯頚部はレジンのはみ出しを考慮
して少し長めにカット
図6.レジン填入 図7.即重レジンを歯頚部より少し多めに
填入し、支台歯に圧接する。患者に
軽く咬合させ咬合関係を調整する
図8.レジンが硬化するまでに2〜3度
着脱し、支台歯との適合を調整する。
シートはレジンが完全硬化してから剥離
図9.支台歯が直接シートに当たったり
気泡が混入することもある
図10.気泡等の修正 図11.マージン等の修正 図12.口腔内装着

応用例

 従来困難とされていた臼歯部のTEKは勿論(図13、14)、義歯を装着した症例にも応用が 可能である(図15〜17)。

工夫次第で、インプラント植立後の暫間固定や多数歯欠損の義歯修理(追補)、 旧義歯を利用した挙上床(図18、19)等幅広い応用が考えられる。

図13.臼歯部使用例 図14.口腔内装着
図15.上顎;多数歯欠損、
    下顎;義歯使用例
図16.義歯一体型のTEK(下顎) 図17.口腔内装着。下顎装着と同時に挙上
図18.旧義歯を使用した挙上例 図19.口腔内装着

おわりに

 歯科医院が急増し患者が医師を選ぶ時代になった現在、いかに効率良く患者のニーズに応え得るか。 そして、より高度な技術を提供し患者を開拓できるか。

それらが試されている今、 ジョイントキャップが優しく我々を手助けしてくれるアイテムの1つになり得ることを確信している。