インレー形成後の知覚過敏解消!…操作性、安定感、伴に優れたアイテム…
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インレー形成後の悩みを解消するレジン系仮封材
プラストシール

・筆積み法レジン系仮封材


デンタルダイヤモンド 第21巻12号・1996年9月号,150-152 
河 田 克 之
●姫路市・開業


はじめに

“知覚過敏”は臨床医にとって最も身近な疾患であると同時に、ときとして患者との信頼関係を も失うほどの厄介な疾患である。

それが歯科医の行為によって引き起こされたものであれば、患者の不審は一層強いものとなる。 特に、インレー形成後の仮封材脱離や知覚過敏は、我々歯科医にとっては治療上やむを得ない結果 と考えられるが、患者にとっては心配で時としては深刻な悩みにもなる。

 封鎖性の強い材料を使用すればの脱離は防げるが、除去時に麻酔を必要とするケースも しばしばである。 ストッピングを使用すれば、たとえセット時までの脱離を免れても知覚過敏は必至である。

できるだけ患者の信頼を失う医療行為は避けたいと願う歯科医にとって耳よりの材料が登場した。 それが、“プラストシール”である(図1)。

インレー形成時の仮封材として使用できる以外に、根管治療時の二重仮封は勿論、 フルクラウン形成歯の簡便な暫間被覆材としても有効である。

図1.プラストシール(日本歯科薬品)

使用感

 

「探針で一塊除去!」除去時の感触が何ともいえない快感。「しみましたか?」との問いに、 「いいえ、大丈夫でした。」と答える患者さんの言葉に、思わずニヤリと微笑んでしまいそうである。

特徴

  1. 硬化後も適度の弾力性を有し咬合調整が容易で、術後の咬合痛が少ない。

  2. プラークの付着が少なく、辺縁歯肉の炎症がない。

  3. 前歯の唇面にも応用可能な色調でありながら、除去時には周囲の歯牙との判別可能な微妙な 色調(図2〜4)。

  4. レジン系の仮封材でありながら、親和性と辺縁封鎖性に優れ歯髄に対する為害作用は認められない。

  5. 次回来院時までの残存率が高く(ほぼ100%)、仮封中の知覚過敏を訴えることは稀で、除去 時の疼痛も少ない(図5)。

  6. 探針の挿入が容易で、一塊として除去が可能(図6)。

  7. 修復物試適時のわずかな窩洞修正では、麻酔は不要(図7)。

図2.根管治療終了時 図3.プラストシール充填 図4.充填後1週間。色調が変化し周
囲の歯牙との判別が可能
図5.仮封後1週間経過。知覚過敏、
脱落等の不快症状は認められない
図6.探針で一塊除去。探針
挿入が容易な硬さ
図7.修復物の装着。歯冠修復
時の麻酔は不要

 
使用方法

 基本的には、筆積法で窩洞充填を行うが(図6〜11)、症例によってはペースト状に混和して 充填した方が便利な場合もある。上顎臼歯部のようにペーストが流れやすい症例では、 粉末を多めに付着させ、ペースト玉完成後約5秒経過してから填入する。仮封材を窩洞に填入後、 完全硬化前(2分40秒以内)に充填器またはインスツルメントにて余剰分を除去し、 患者さんにタッピングしてもらい咬合調整を行う。咬合調整に際しては、着色するので 咬合紙は使用しない。

 なお、レジン系のベース材,ライナー材およびボンディング材とは接着する可能性があるので、 アルコールで表層の未重合層を除去した後に充填操作を行うか、ワセリン等の塗布が 必要なケースもある。

また、根管治療時の仮封に際して、フェノール系の根管貼薬剤 (FC,FG,チモール,クレオソート,ユージノール等)を適用した時には、ストッピング等で 仮封した後にプラストシールを充填(二重仮封)する。

図8.筆に液を浸潤 図9.筆先に粉末を付着。
粉末を多少多めに
図10.ペースト玉の完成。
5秒経過後填入
図11.窩洞に填入。指先で軽く圧接、
余剰分は探針等で除去

応用例

 U級窩洞はもちろん、頬舌におよぶ広範囲な窩洞にも応用が可能で(図12,13)、フルクラウン 形成歯の暫間被覆にも使用できる。根面形成後の仮封に際しては、確実な封鎖性と親和性により 歯肉増殖が抑制される。また、前歯の唇面におよぶ窩洞や、崩壊の著しい歯牙の暫間的な審美性 回復にも威力を発揮する(図14,15)。

図12.窩洞形成後 図13.プラストシール充填 図14.ストッピングによる充填。
前歯部では審美的に問題
図15.プラストシール充填。
審美的問題は解決
おわりに

 患者さんが歯科医を選ぶ時代になった現在、より良質の歯科医療を提供することが生き残る ための責務である。患者さんのニーズに応えるべく、自らの技術の向上を計ると同時に、 より適切な材料を選び提供することも大切な仕事である。

このような状況のもと、 プラストシールは患者さんとの信頼関係を構築していくうえで重要な役割を果たすアイテムである。