免疫システムは「自己」と「非自己」を区別し、非自己として認識した物質に対して反応しま
す。体内の非自己の血液あるいは組織の存在によって、免疫反応は誘発され、輸血に対する反応
や移植拒絶反応を起こします。
まったく同じ組織抗原をもっている人は(一卵性双生児以外には)いません。したがって、臓
器や組織移植ではほとんどの場合、免疫反応を引き起こし(拒絶反応)、その結果移植片の破壊
をもたらす。「組織適合」は、臓器または組織が移植を受ける人の組織とできるだけよく似るよ
うにするものです。このようなことがおこなわれるのは、抗原の違いが大きければ大きいほど、
急速で重篤な拒絶反応が起こるためです。
少数の例外もあります。角膜には血液供給がなく、リンパ球や抗体が角膜に到達して拒絶反応
を起こすことはできないので、角膜移植で拒絶反応が起こることはまれです。一卵性双生児はま
ったく同じ組織抗原を持っているので、一卵性双生児間での移植ではまったく拒絶反応を引き起
こしません。
“拒絶反応”は臓器移植の際よく使われる言葉で、非自己の細胞を除去する反応です。これは、
一般の抗原に対する免疫応答と同じで、主役は細胞性免疫です。キラーT細胞(活性は
CD4+T細胞よりCD8+T細胞が大きい)による細胞傷害に加えて、T細胞の産生する細胞傷害因子
やリンフォカインにより活性化されたマクロファージやNK細胞による細胞傷害が関与していると
いわれています。
この拒絶反応を抑制するために、放射線照射や免疫抑制剤(副腎皮質ホルモン・代謝拮抗剤・
抗生物質)が利用されています。歯科領域のインプラントや歯石に対する拒絶反応にも応用できる
安全で優しい方法や薬剤開発が進むことを望んでいますが、この分野の進歩はまだまだ先といった
感じです。