発生初期段階のムシ歯(エナメル質う蝕)は、プラーク内の細菌が食物中の糖を有機酸に発酵さ
せることにより起こるといわれています。
この有機酸が、エナメル質のハイドロキシアパタイト小柱の隙間に浸透し、アパタイト結晶を溶解
(脱灰)させたのがエナメル質う蝕です。
この段階では、う蝕を改善させることは可能で、カルシウムやリン酸イオンはエナメル質表層下
のう蝕部分に浸透し再石灰化によって喪失したアパタイトを元に戻すことができます。しかし、フッ
素イオンの存在下では、リン酸カルシウムの溶解性は低く、カルシウムやリン酸イオンを含有する
溶液を臨床的にしようすることは未だに成功していません。
そこでう蝕予防作用がある食品群として最も認められている牛乳、特に牛乳タンパクカゼインの
応用による新しい再石灰化テクノロジーがメルボルン大学生物学/分子生物学教授であるエリック
C・レイノルズ博士によって発表されました。
この新しい再石灰化テクノロジーは、リン酸カルシウムの非結晶状態を利用しています。
牛乳タンパク質から抽出されたカゼインホスホペプチド(CPP)は、非結晶性リン酸カルシウム
(ACP)を溶液中で著しく安定化させる特徴を有しており、カルシウムやリン酸イオンを過飽和
状態に保持しているといわれています。
日本歯科新聞 (2000.3発行)より抜粋