神経は生きていても組織が死んでいる。  
歯 髄 壊 疽

 "歯がしみる"原因には大きく分けて2種類あります。虫歯の進行に伴って歯髄に炎症が生じた 場合と歯周疾患進行に伴う歯髄の炎症です。
「歯がちょっとしみだした」と言う同じ訴えでも、原因が虫歯の場合は歯髄の炎症がひどく抜髄に 至るケースが多いように思われます。ましてや、歯が痛い、熱いものがしみる…といったケース では抜髄を免れることはできないと言っても過言ではありません。
 歯がしみる→神経が生きているのにどうして助けることができないのでしょうか? 専門的な解説で少し分かり難いとは思いますが、病理的な観点から説明します。

図1.歯髄の神経網
(共焦点レーザー顕微鏡)
図2.ヒト歯髄炎の病理組織像。
中央部の歯髄は破壊されている
歯髄には痛覚神経があり、象牙質などの痛みを伝えるAδ線維と歯髄の痛みと言われる C線維が存在します(図1)。歯髄の炎症は神経原性といわれ、痛みが歯髄の神経に伝わ ると、神経ペプチドが歯髄内の毛細血管周囲に分泌され、その結果、毛細血管が拡張し、 狭い硬組織に閉じ込められた歯髄の血流が悪くなるのです。

こうなると歯髄は変性・壊死の傾向を示すのですが、鈍い痛みを伝えるC線維という神経 線推は組織破壊に抵抗して残るために、周りの歯髄が死んでいても痛みを発することにな るのです(図2)。

こうなると、いくら頑張って歯髄を保存しようとしても神経は生きていても組織が死んでいる わけですから、助けることは難しいといわざるを得ないのが現状です。

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