私たちにできるもっとも有力な手段は、アレルゲンを排除することではないでしょうか。
「抗かび剤は歯周病に有効」報道に関する日本歯周病学会の見解

歯槽膿漏
歯周疾患
 以下の見解は、日本歯周病学 会のホームページに掲載された内容をそのまま記載しています。
私自身も、カンジダ菌が歯槽膿漏の原因だとは思っていませんが、カンジダ菌が何らかの形で 歯肉炎症状に関与しているのでアムホテリシンBを始めとした抗菌剤を利用する価値があると 考えています。その意味では、門前払いにも似た日本歯周病学会の対応には大きな疑問をもっ ています。河田


 朝日新聞は平成13年11月20日の 夕刊第1面トップに「歯磨きより、抗かび剤が有効」という記事を掲載した。 この内容は、平成11年6月8日付の社会面に掲載された「歯周病、抗かび剤が効く?」という囲み記事を継続する ものである。朝日新聞の社会的影響力とこの記事の大きさ、トップ記事としての扱いにより、この内容が広く社会では 正しい、新しい歯周治療法であると多くの読者に誤解を与え、臨床歯科医のみならず多くの患者からも問い合わせが きている。

  平成11年の記事について、その内容が現在の正統な歯周病の治療法、予防法と大きく異なり、著しい誤解を招く 恐れがあったので、本学会では"正しい歯周治療の普及を目指して- 抗真菌剤の利用を批判する-"と題した総説を 日本歯周病学会誌に発表した(参考文献1)。また、現在では本学会のホームページ www.perio.jpでも読めるようになって おり、学会としての見解を広く明らかにしている。抗真菌剤が通常の歯周治療に利用できるとする科学的根拠はなく、 仮にその根拠があり充分検証された薬剤であっても、その使用に際しては副作用は勿論のこと薬効を期待する場での 薬物効能の特徴も考慮し、投薬方法が適切でなければならない。さらに、現在我が国で行われる歯周治療のガイドライン に従ったブラッシングにより歯肉縁上プラークを除去し、歯肉縁下プラークに生息する歯周病原性細菌を様々な処置に より除去して、歯周組織を修復、再生させるという治療法は世界で行われている研究結果を集積した科学的根拠に 基づいて確立された治療手段であり、確実に歯周病の治療成績の向上をもたらしているものである。現代の医療は 科学的根拠に基づいた方法で検討された成績をもとに選択された手段でおこなわれなければならない (Evidence-Based Medicine)。カンジダ菌が、特殊な例を除いて、歯周病の発病や進行に関わっていないことは、 数々の報告から明らかで ある(参考文献2、3)。  

  平成13年11月の新聞記事は再度、社会的影響力を無視できない状況を作り上げた。 新聞記事で紹介された山本氏が 調べたように、口腔内にカンジダ菌が見い出されることは事実である。とりわけ抗生剤の長期服用例や、義歯を装着した 患者の場合多く検出され、口腔カンジダ症という口内炎の原因となっている場合がある。しかし、カンジダ菌は歯周炎の 原因菌ではないし、歯周ポケット内にもほとんど見られない(参考文献 1)。抗真菌剤による含嗽の臨床効果も、 カンジダ菌陽性患者にリステリン洗口液にアムホテリシンBを1滴入れ、 1日1回うがいをすると歯周病の症状が 改善するとされているが、リステリンは殺菌性洗口剤であり、プラーク抑制、歯肉炎の改善と抗かび作用が認められた 市販薬である。その上、山本氏は、急性症状のある患者には経口抗生物質を投与しており、これも歯周炎の改善に効果が あったと考えられる。歯周病の改善が抗かび剤であることを明らかにするためには、正しく選択された対照例をいれた 治験が行われ、その効果が明らかにされる必要がある。一方、抗かび剤のアムホテリシンBは著しく毒性の強い抗菌薬と され、副作用として腎障害を招くことが報告され、この薬剤の長期使用による全身的影響についても充分な配慮、 検討が必要である。個人が自分で考え、健康増進のための家庭療法的なものであれば、許されるであろうが、このような 考えを医療として普及しようとすれば、基礎より科学的根拠に基づき、安全性・有効性が証明され、社会的に承認された 方法でなければならない。単に科学的根拠に基づいて行われていないという理由だけで新たな試みを切り捨てては ならないが、患者への適用は、学会等の学術的な場で充分な学術的討議の後、行われるべきである。朝日新聞で 紹介された山本氏の論文(参考文献 4)はデンタルダイヤモンド誌に掲載されたものであるが、同誌は一般商業歯科雑誌で あって専門誌ではなく、しかも寄稿として扱われているものである。山本氏本人が文中で述べているように内容は 直感の域を出ておらず、この寄稿に歯周病に関する学術的な裏付けのある知見は認められない。
 
  現在、日本のみならず世界で行われている歯肉縁上プラークを除き、歯肉縁下のグラム陰性菌を中心とした 歯周病原性細菌を様々な処置により除去する歯周治療は科学的根拠に基づいて確立され、実績を伴った治療法であり、 歯科医師が修得し、実施すべき治療手法である。この方法に時間、手間がかかるとして、学術的な根拠が認められない上、 安全性の確認されていない抗かび剤(アムホテリシンB)の連続的投与を患者に行うべきではないと考えるものである。

日本歯周病学会
理事長 石川  烈
(東京医科歯科大学大学院歯周病学分野 教授)

【参考文献】
1)日本歯周病学会:正しい歯周治療の普及をめざして
 ―抗真菌剤の利用を批判する―  
 日歯周誌42(1): S1-S6, 2000
2)梅本俊夫他:Candidaの歯周病への関与についての文献的および臨床的見解、2 
 歯界展望96 :315-326, 2000
3)村山洋二:歯周病の病因細菌と抗菌薬の評価について
 抗真菌薬の考察を支点に     
 ザ・クインテッセンス18(8):1601-1613,1999
4)山本共夫:口腔内カンジダ属の検討、あなたの歯はつるつるですか?  
 デンタルダイアモンド2001(11):165-171,2001

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