患者さんの口腔内の状況や全身的な背景を総覧的に把握たうえで、治療や通院回数などの要望を加
味し、専門的な知識を踏まえて最適な治療方法を提示するのが歯科治療のプロとしての役割だと思い
ます。その際最大の障害となるのが、保険療養規則で縛られた社会保険システムであることは多くの
歯科医や患者さんの痛感するところです。
患者さんの要望やわがままに応えるためには、幅広い知識と技術が要求されます。日夜研修に励め
ば、療養規則に定められた治療方法を越えることは必定と心得ています。そこには大きな矛盾を感じ
ていますが、最優先すべきは患者さんの健康獲得です。
「できることであれば保険の範囲で治療したい」という患者さんの要望を全く無視した治療計画は、
術者側価値観の押し付けにすぎないのではないでしょうか。保険療養規則の範囲で最大限の融通を効
かすとか、障害となる療養規則に対しては改善を働きかける姿勢をもっと前面に打ち出してこそ、真
の“オーダーメイドの治療”が確立されると思います。
デンタル ダイヤモンド 2003年1月号掲載 2003. vol128. no.387 51