健康な歯は全ての国民にとって切実な願いでありながら、有効な手段がとられていないというか、
有効な手段が知られていないのが現実です。長年の夢が叶い、
2002年4月の保険規則改正により歯のメインテナンスが大幅に改善されました。これが正し
く運用されれば夢のような成果が得られることを確信しています。しかし、患者さんのみならず歯科
医自身もそのメインテナンスの効果と重要性を認識していないために恩恵を享受する道のりは険しい
ことが予想されます。
メインテナンスの基本は、ただ単に毎月歯医者に通って歯石除去(スケーリング)を行うことで
す。「黙って座って、毎月歯石を取って帰って!」と時には乱暴な言い方を診療室で言うこともあ
りますが、その効果は絶大です。
歯石やプラークを排除することにより歯周疾患(歯槽骨の崩壊)を最小限に食い止める一方で、
衛生士が綿密な診査を行います。学校検診や企業検診のように劣悪な条件での検診と違い、明るい
照明の下で汚れを排除しながら、全ての歯に触れながら時間をかけて(約15分程度)診査します。
歯肉状態や知覚過敏の程度は勿論のこと、汚れに埋もれた小さなムシ歯やインレー・クラウン
の周辺や内部まで診査して二次カリエスや脱離の有無をチェックします。時には患者さんの方から
「今は何ともないけど、2週間前にココが腫れていました」という訴えもあります。そのような
情報はとても重要です。レントゲンを撮ってみると、歯石やクラウンの脱離がみつかります。完全
に脱離するまで放置していたとすれば、歯牙崩壊が著しく使い物にならなくなる歯も発見が早けれ
ば何事もなかったかのように修理することも可能です。
その結果、20年経っても歯牙喪失や歯槽骨破壊が全く認められないことは無論のこと、抜髄した
り新たなクラウン(銀歯)を装着することなく過ごすことも可能です。
「日本人は銀歯ばっかりで、獅子舞の歯みたい」と先進国から酷評されていますが、20年後に
は見違えるような効果が現れることを予感いたします。テレビの宣伝にあるようなキシリトールの
効果よりも、実は検診制度に健康の秘訣が隠されていたことを通観しています。