原因歯にまつわる異物性を何らかの方法で排除することが根本的な解決法。
歯性上顎洞炎の疑い

日付、時間:Tue Jun 6 15:22:58 Japan 2000    氏名: K.T.   
所在都道府県:埼玉   職 業:会社員   年 齢:37歳      性別: male  

質問:
10年前に地元歯科医院にて上顎の左側第1大臼歯(6)の神経を抜いていただき、 その歯全体に金属がかぶせてあります。
今年の1月頃に、この歯に鈍い痛みがあり、それから1〜2週間で鼻から喉に血の固まり (切れない繊維質の細い紐状のものも何回か一緒に出てきました-->神経でしょうか?)が降り てくるようになりました。このとき、発熱も伴いました。ほどなくして、左側の頬に重い痛みが現れ、 耳鼻科に行きました。
レントゲンにより左側だけの副鼻腔炎が診断され、耳鼻科の先生は腫瘍の疑いがある とのことでCTスキャン検査を行いました。その結果、腫瘍は認められず、抗生物質(セフェム系) を飲み始めていたからでしょうか、血の固まりは出なくなり、膿が喉に降りてくるようになっていま した。
その頃、左側第1大臼歯(6)の上外側の歯茎がぷっくり丸く腫れまして、歯性上顎洞炎 の疑いはないか、耳鼻科の先生にお話しましたが、副鼻腔炎が原因で一時的に歯が痛くなった のでしょうと取り合っていただけませんでした。その後、副鼻腔炎の長期療法として抗生物質(マ クロライド系:ルリッド)の服用を続け、副鼻腔炎は良くなってきたものの、ここ最近、歯茎の痛み、 腫れがひどいので、歯科に行きました。その結果、左側第1大臼歯(6)の上外側の骨の内側 (歯牙側)が溶けはじめており(針を1cm程度刺して診断されたそうです)、歯の根の部分も レントゲンでの写りが薄いので、かぶせてある金属をはずしてみないとわからないが、抜か なければならない公算が強いかもしれないとのことでした。
副鼻腔炎の件を歯科の先生にお話すると、レントゲン所見から上顎洞に歯の根が出ているので、 抜歯後、上顎洞穿孔になるかも知れないとのことでした。先生のHPを拝見させていただくと、抜 歯せずに根管治療によって保存可能なのではないかという気がして参ります。レントゲンを見て いただかないと本メイルだけでは御判断しかねると思いますが、私のようなケースでも抜歯せず に根管治療を選択するほうがベターなのでしょうか。
抜歯して上顎洞穿孔になった場合のことを考えると、副鼻腔炎があるので穴から上顎洞の膿が 出てこないか、手術が必要にならないかなど心配です。また、先生の医院をおたずねして根管治 療していただく場合、最低でも何日おきに、何回位お伺いする必要がありますでしょうか。
長々と勝手な質問を並べ立て、誠に恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。

ご意見・ご感想:
はじめまして。先生のHPを拝見し、患者第一の御身を呈しての真剣なご活 動の一旦に触れ、陰ながらご尊敬いたしております。特に患者さんの質問に答えるコーナーの 充実ぶりにはただただ脱帽です。

メールアドレス: kazutati@livedoor.com   ホームページURL: http://

回答  結論としては、歯性の副鼻腔炎のようですね。原因歯にまつわる異物性を何らかの方法で 排除することが根本的な解決法だと思います。

 その中には、抜歯も一つの…というよりも間違いのない選択肢です。ただし、結果としては、大切な 歯を確実に1本失います。“歯を失わないで同様の結果を得る”ための最善策が根管治療ですが、 確実性は減少します。中間的な選択としては ヘミセクションも考えられ ますが、実際の歯を診て触って、しかもその結果をみて始めて分かることも多いと思います。

 最悪抜歯を選択した場合の上顎洞穿孔については、いよいよなら 上顎洞閉鎖術という簡単な処置で対応できますので心配は無用かと存じます。できることであれば 根管治療で対応するのが最も望ましいことは言うまでもありません。抜歯を決断する前に、最低でも 数軒の歯科医院で相談すべきことだと思います。  私の治療方針ですと、確率90%で1回の来院で対応が可能だと思います(プレッシャーは感じます (^^ゞ )。

診断:
 成る程レントゲン的には、根管治療に問題がなく太い金属ポストが入っていますので、“ちょっと 試しに治療…”とは言い難い症例でした。実際金属ポストをはずして根管治療を確認しましたが、 根管治療には問題がありませんでした。

 問題の|6遠心頬側根は、頬側部分の骨がほぼ根尖付近まで破壊されており、遠心側 では根尖より深く上顎洞に通じる骨破壊が認められました。結局、遠心頬側根をヘミセクションしま したが、歯根破折もしくは亀裂があったものと思われます。

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