日付、時間:Wed Jul 5 12:14:07 Japan 2000
氏名: YS
所在都道府県:千葉
職 業:主婦
年 齢:35歳
性別: female
質問:
初めて質問させていただきます。以前から歯並びの悪さが気になっていて、矯正をすべ
きかどうか悩んでいました。ところが、今年の8月から主人の仕事の関係で、サンフランシスコ近郊
に転居することになり、どうしたものかと思い、歯科医を訪れました。
その医院の先生は、審美歯科やインプラントの治療も手がけていらっしゃる方で、説明も親切だっ
ので、ここなら安心してお任せできるかな、と言う気持ちになりました。こちらの事情をおはなしした
ところ、アメリカでの矯正を勧められましたが、慣れない土地での治療に不安もあり、審美治療をお
願いすることにしました。
治療方法は、上顎右側第一小臼歯から左側犬歯までの6本をメタルボンドブリッジにするというもの
で、右側の2、3と左側の2を抜歯しました。神経は前歯2本を抜き、両サイドは残していただきました。
経過は、痛みもほとんどなく順調かと思われたのですが、抜歯した後がなかなか盛り上がらず4月の
下旬から1ヶ月半で治療終了という予想を上回り、現在も仮歯のままです。それでも、スケジュールの
都合から、先週、歯の型をとり、来週には歯を入れることになりました。歯茎が完全に回復する迄に
は半年くらいかかるでしょうということですが、八重歯を抜いた部分は、ぽっかり穴のあいた状態で、
このままアメリカに行って大丈夫だろうかと、不安な気持ちでいっぱいです。
ここまで、お読みになってなんて愚かなことを、と思われているかと思いますが、実のところ私自身と
ても後悔しています。健康な歯を抜いたり削ったり、後々起こりうるいろいろな問題も考慮せず、決断
したことは、あまりにも軽率だったと思います。ただ、こうなってしまったのは自分の責任でもあります
ので、前向きに今後のことを考えていきたいと思います。
そこでご相談なのですが、今の状態で渡米するにあたりアドバイスをいただけるとと助かります。
また、神経を抜いた前の2本については、先生からこの先膿がたまることがあるので歯茎の裏側から
治療ができる状態にしておきましたという説明がありましたが、具体的には、どういった状態になり、
どのような治療が行われるのでしょうか?
今後のケア、起こりうるトラブルへの対処方も含めてご説明いただけないでしょうか?お願いします。
メールアドレス: CYI03172@nifty.ne.jp
ホームページURL: http://
“歯茎の裏側から治療ができる状態にしておきました”ということはメタルボンド(さし歯)を作成
するにあたって、土台となる部分に金属ポストなどを使用していないので、もし根尖病巣ができて
根管治療が必要な場合、メタルボンドの裏側に穴を開ければ治療が可能だということでしょう。
近々に起こり得るトラブルとしては、根管治療の不備による根尖病巣くらいだと思いますが、先々
では、歯周疾患進行に伴う歯肉退縮により歯根部分が露出してそこからムシ歯になって歯根破壊
や有髄歯部分では歯髄炎を起こすことは間違いないでしょう。この手のトラブルは10年・20年のうち
には必ず起こり得るものと思われます。20年後ならともかく、5年後に起これば問題ですね。
そうならないようにするには普段の歯磨きは勿論のことですが、定期的に歯石除去を行うことが
最善です。アメリカに行ってそのような処置が行ってもらえるのかどうかは分かりませんが、歯周疾
患のメインテナンスということで相談すれば請け負ってくれるのではないでしょうか。
回答:
“審美的な要求のために行った補綴物”ということで特別注意することはありません。補綴物、特に
今回のように多数歯を連結した補綴物についての注意事項として聞いてください。
まず、加齢と伴に進行してくる歯周疾患により歯槽骨が破壊されます。そうなると歯肉が退縮して、
歯と補綴物との繋ぎ目が見えてきますので審美性を阻害します。続いて、その繋ぎ目付近から二次
カリエスが進行して有髄歯部分では歯髄炎、無髄歯部分では思わぬ大穴ということが起こります。
一方、脱離も深刻な問題です。装着した補綴物が一時に全部脱離した場合はそれ程深刻な問題
にはなりませんが、多数歯連結の場合、必ずといって良い程どこか1箇所ないしは2箇所くらいが
セメントが破壊されて脱離します。その時点で、すぐに気が着いて全てを作り代えれば問題は少ない
のですが、往々にして気づかないままに半年・1年が経過します。最終的に、全てが脱離した時点で
歯医者に行くということになりますが、その時、最初にはずれていた歯は大ムシ歯で全く使い物になら
ない状態になっていることが多いようです。この脱離が20年先ならあきらめもつきますが、3年後に
起こればとんでもない悲劇です。
この脱離は、歯周疾患進行に伴って歯がぐらつき始めると一層起こり易くなります。これらの悲劇を
防ぐためにも、定期的に歯石除去を行って歯周疾患を進行させないことと、僅かな異常を察知して
脱離を見破る検診が必要です。