退化は急には進まない!!
咀嚼能力の低下

日付、時間:Wed Apr 14 14:16:35 Japan 1999    アクセスポイント:cache-b.ipc-ed.kochi-u.ac.jp
氏名: 金地真史    所在都道府県: 高知   職 業: 学生   年 齢: 19歳     
   性別: male  

質問:
初めまして。私は大学の二回生です。英会話のサークルに入っているのですが、 五月にスピーチをすることになりまして、そのトピックとして「咀嚼」についてスピーチしたいと 思っております。つきましては、咀嚼に関してのいくつかの質問に答えていただきたいのですが・・・・・

  1. 食生活の変化(欧米化)が日本人の咀嚼能力の低下の原因の一つのようですが、欧米人の 咀嚼能力はどうなのでしょうか?
  2. 咀嚼能力の低下は、歯槽膿漏、顎関節症、歯周病などの病気の増加にもつながるので しょうか?また、現在これらの病気の患者数は増加しているのでしょうか? そういった資料はありますか?
  3. よく噛まないことが肥満に関係しているようですが、現在の日本の若者には背が 高く細い人が少なくないです。どうしてなのでしょうか?
  4. 咀嚼力の低下は私達の身体にどのような影響をもたらすのでしょうか?
  5. 歯槽膿漏、顎関節症、歯周病などは英語で何というのでしょうか?
以上、私が咀嚼に関して調べて出てきた疑問です。もしお手数でなければ、どの質問でも 構いませんので、メールでお答え頂ければ幸いです♪それでは失礼します。

ご意見・ご感想:
質問コーナーが充実していてよいと思います。

メールアドレス: m-k@ma4.seikyou.ne.jp   ホームページURL: http://

回答  一部のテレビなどでセンセーショナルに報道されていますが、 上記の見解に対して、 私の意見は全て否定的な意見ですので参考になるか・・・・・。
 戦後の食生活変化はご指摘の通り、欧米化と言っても間違いないと思いますが、咀嚼能力の 低下は調理技術や生産技術の発達に伴って食材が軟らかくなったために起こったものと考え られます。咀嚼能力の低下は、かつてのように硬いものを噛もうとすると差が現れるでしょうが、 軟らかいものだけで事足りる現代社会では咀嚼不足による消化器系等への影響は少ないと 思います。また、仮に硬いものしか手に入らない時代になったとすれば再びそれに対応した 骨格になることも可能で、決して不可逆的な退化とは思えません。

 歯槽膿漏や顎関節症に対する影響については、多少なりとも影響はあるでしょうが、マスコミ で報じられている程の影響はないと思っています。といいますのが、歯槽膿漏にしても、顎関節症 にしても真の原因が異なった次元にあるからです。例えが悪いかもしれませんが、かつては結核の 原因に不養生やストレスなどが考えられていたようです。ところが、結核菌とそれに対抗する薬が 発見されてからは問題視されることが少なくなりました。また近年では、胃潰瘍も同様にピロリ菌と 治療方法が見つかってからは、不養生やストレスの占める割合がグット減ってしまいましたね。
また歯槽膿漏の増加に関しては、数値的には上昇しているものと思われます。その主たる原因は、 歯周疾患が積み重ねの疾患だからです。歯の萌出直後から歯槽骨の破壊が始まり、いわゆる “歯槽膿漏(歯周疾患末期)”としての症状を呈するのが50歳を過ぎたころからです。歯周疾患に 対する有効な治療が行われないまま、人の寿命が確実に伸びています。その結果、歯槽膿漏で 抜歯に至る歯の数が増えたのではないかと思っております。

 “よく噛まないことが肥満に関係”していることは事実のようです。満腹中枢が麻痺していくらでも 食べてしまうことが原因のようです。一部では、食物を噛むことが出来ないような重傷児がいる 反面、多くの若者は噛まなくても十分消化するような食品を口にしている現状では社会現象として 肥満が現れるには至っていないのではないでしょうか?

 “歯槽膿漏の原因は歯石と変質した歯質”“顎関節症の原因は咬合と顎の形態異常や位置異常” 私の持論ですが、これが95%。残りの5%に咀嚼を含めた体質異常が関与しています。 これを同じレベルで評価することは本質を見誤る結果となります。咀嚼能力を含めた種々の要素を 決して否定するものではありませんが(むしろ肯定)、本当の原因を解明する上で障害となる余計な 発想であると苦々しく思っています。

 尚、英語に関しましては、歯学和英電子辞書 がお勧めです。とっても便利ですよ。

返信: 丁寧なご返答を送っていただき、有難うございました。私の咀嚼に関する見解が、 専門家である先生の見解とはかなり違っていたのは残念でしたが、もう少し別の 観点から咀嚼の利点を考えてみたいと思っています。また、歯学和英電子辞書は 大変役に立っています。
ところで、また質問で申し訳ないのですが、縄文時代や弥生時代の人々の歯には 歯周病などの病気はほとんど見つからないと聞いたのですが、これは古代人が硬 い食物をよく噛んで食べていたからでしょうか?また現代の軟らかい食事でも、 よく噛むことは、年をとってからの歯槽膿漏などの予防に少しは関係するのでしょ うか?
今回咀嚼について調べ、まだ19歳なのに将来にかなり不安を感じてしまいまし た(^_^;)/~~~~~~~~ 現代の軟らかい食事を若い頃から食べつづけると、現代人は将来どうなってしま うのでしょうか?考え過ぎでしょうか・・・・・ とにかく、これからはよく噛んで食べようと思っています。 どうも有難うございました。

回答:  縄文時代や弥生時代は、重度の歯周疾患に至る前に死亡したことも大きな原因だと思います。 また、硬いもの…とりわけ繊維質を摂取すれば歯垢の沈着を防ぐこともできたことと、間食をする 習慣がなかった(きっとそんな余裕はなかった?)ことが大きな要素ではないでしょうか。 食生活の改善も重要ですが、個人の力では限界もあります。さしずめ、歯石を毎月取るような 習慣を身につけて口腔の健康を維持することをお勧めします。

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