“お任せ治療”ではなく、治療を受ける前にそれなりの知識を得た上で臨む。
歯冠研磨後

日付、時間:Tue Nov 7 22:29:55 Japan 2000    氏名: H   
所在都道府県:神奈川   職 業:主婦   年 齢:40歳      性別: female  

質問:
はじめまして。歯のヒビについて、お聞きします。
 私は、ここ6年ほど、半年から1年の間隔で、歯石とりと定期検診をかねて歯科医の診察を受 け、要治療の歯はそのたびに治療をすませてきました。今回も、そういうことで近所の歯科医院 に通っています。転居したので、初めての医院です(転居が多くここが8軒め、担当歯科医として は12人目)。
全歯のレントゲン(パノラマ)をとり、診察の結果、

  1. 歯のクリーニングをする
  2. 特に要治療の歯はないが、不適切な歯磨きで左右1本ずつ上の臼歯の根が露出してきてい るので、歯磨き指導をして様子を見たのち、積極的治療としてそこを埋めるということになりました。
下前歯の歯石の除去、歯磨き指導、全歯の歯石除去の順に進み(2人の歯科衛生士(たぶん)が 担当。全体的に丁寧で満足)、昨日「歯を磨く」ということで、ペースト状のものを歯に塗られ、機械 でゴシゴシというかゴリゴリと歯の前面、裏面、かみ合わせ面を全て磨かれたのです。これは、第3 の歯科衛生士(たぶん)が担当で、前の2人に比べると幾分荒い感じでした。磨いている最中も、 機械を滑らして他の歯にぶつけたりしてました。*「歯科衛生士(たぶん)」というのは、やってい る内容からして歯科衛生士だと思うのですが、誰が衛生士で誰が助手なのか私にはわからない ため、こう書きました。
 帰宅後鏡でみると、上左犬歯から右犬歯までの8本と、下の左犬歯から右犬歯までの数本に、1 本から数本ずつヒビ状の線が入っているのに気づきました。奥歯の方は見えにくく、また、こわくて 見られません。Q&Aを読み、交通事故等で顔面や顎を打した際ににヒビが入る場合が多いこと、 高齢になると歯がもろくなり、気が付かないうちにヒビが入っている可能性もあること、石灰化程度 が高い歯は硬い反面もろさもあり、ヒビが入りやすいことは理解しましたが、「歯科医院で歯を磨く」 だけで、40才の私がこんなことになったのが信じ難く、これからどうしたらよいのか、不安でいっぱ いです。
 途中で口をすすいだとき、詰め物のアマルガムの細かい破片が結構でてきたので、かなり強く磨 かれたように感じます。過去、4回ほど、複数の歯科医院で歯を磨かれた経験がありますが、(歯科 医師2回、歯科衛生士(たぶん)2回)、どれも全歯ではなく前歯の表面(特に歯と歯の境目付近)中 心で、昨日のに比べると、強力な歯磨き程度にしか感じられませんでした。
 実は、14、5年前、上前歯の虫歯治療の際に、その前歯の下方に斜め横にヒビが入り、歯科医に 訴えたものの、「ヒビなど見えない」と相手にされなかった経験があります。それは今も残り、そのご く一部に薄茶色の色素が沈着しています。その後かかった歯科医たちに、「ヒビがある」とか「要治 療」と言われたことはないのですが(特に私の方から聞いてはいません)、素人の私や夫がみるか ぎり「斜め横線状のヒビ」にしかみえません。昨日できたヒビ状のものは、ほとんどが縦で、光の加 減や角度によって見えにくく、歯から10センチくらいに近づかないとわかりません。夫にも「ヒビかど うかはわからないけど、筋がいっぱいある」ように見えるそうです。歯には結構気をつけていて、普段 から頻繁に鏡でチェックしており、今回は歯科医院に通院中ということもあり、いつにも増して鏡をの ぞきこんでいるので、このヒビ状のものが、昨日の「磨き処置後」に目に見えるようになったのは確実 です。
こういう状況ですが、これは「ヒビ」でしょうか?それとも、何かほかのものでしょうか?
それと、ヒビには見えないのですが、上の中切歯と、側切歯各1本ずつに、硬いものでこすったような 跡が少し残っています。ボールペンで書くと下の紙にへこみ跡がつきますよね。そんな感じです。気に しなくて良いものならいいのですが、要治療、もしくは、今後虫歯等になっていく可能性があるのなら、 いろいろ考えなければなりません。通院中の歯科医には連絡して、明日診てもらうことになっていま すが、(カルテによれば通常の研磨処理で、私の言ってることがイメージできないそう。ヒビは前から あったのではないかとのこと・・・1本や2本じゃないんですが)先生のご意見・今後へのアドバイス等 いただければありがたいです。

ご意見・ご感想:
私の回りは、歯に無関心なわりに歯が丈夫という幸運な人たちばかりで、「歯 医者なんてどこでも同じ」と考えているようです。実際、歯が丈夫で、いつ行っても歯石を取るくらい で済む人たちにとっては、どこでもよいのかもしれません。しかし、子供のころから虫歯が何本もあっ た私のような者は、歯科医を選ぶのはとても重要なことだと痛感しています。
 転居が多いため、今までに8軒の歯科医院に通い(1軒はアメリカ)、それぞれの医院で歯石除去 や虫歯治療を受けてきましたが、そのレベルは様々でした。歯科医御本人だけでなく、歯科衛生士 のレベルも様々でした。その中には、素人目にも「あまりうまくないなあ・・・」と思う歯科医もいらして、 転院したほうがいいかなあ・・・とも考えたのですが、痛みや腫れ等の深刻な症状はなく、「別の歯科 医院に行ってここより下手だったら最悪」と考えて2年半ほど通院しました。
結局そこで治療したところは、転居して次にかかった歯科医により大部分がやり直しに。その内容は、

  1. 古い治療済み虫歯をやりなおしたクラウンと歯の間に隙間があり、そこから食べ物のカスが中に 入っていて新たな虫歯に。
  2. 歯根露出をカバーしたプラスティック(?)部分が歯肉にかぶさり炎症を起こしていた。
  3. 古い治療した虫歯(かみ合わせ面と、歯茎との境目に虫食い)をクラウンにやり直した際、歯茎と の境目の虫食いの処置が不適切で虫歯が神経まで達し、根管治療をするはめに。
  4. 第2小臼歯の側面が虫歯ということで治療したが、その際、隣の第1小臼歯まで削っており、 結果第1小臼歯はそこから虫歯に。この他にも、こまごましたのが多数ありです。
たまたま転居して別な歯科医にかかったため、痛み等を自覚する前に(歯肉の炎症は、なにかネバ ネバするとは思っていました)治療できましたが、あのまま同じ歯科医にかかっていたら、とんでもな いことに(これだけでも充分とんでもないことですが)なったことでしょう。こういうこともあるので、上手 な歯医者を選ぶこと、少しでもおかしいと思ったら他の歯科医に診てもらうことは、とても大切だと思 います。
 2年ちょっと滞在したアメリカでは、歯科の分業がはっきりしていて、診察して虫歯等の判断をした り、歯のクリーニングをしたりする歯科医、虫歯治療の歯科医、根管治療の歯科医等に分かれてい ます。私が通った歯科医院では、一般医と虫歯治療医がご夫婦で、いわば「身内同士」だったもの の、一般医が「虫歯」と診た歯を、虫歯治療医がレントゲンを取り、過去の治療記録をチェックして、 「歯と歯の境面で、通常では治療できない位置のため虫歯に見えるが、これは隣の歯を削った際に いっしょに治療したもので虫歯ではない」と、私と一般医に説明し、一般医もカルテとレントゲン写真、 私の歯を見比べて「虫歯ではない」と納得していました。また、根管治療は別の専門医でしたが、最 後にレントゲンをとり確認後、私に内容を説明。別の日、虫歯治療医の出番で、添付された根管治 療後のレントゲンをきちんと確認後、「きれいにできてる」と言って治療に入りました。このように、ダ ブルチェックというか、セカンドオピニオンというか、そういうしくみになっているので、異国での治療は 不安もあったのですが、ある意味日本よりも安心でした。
 また、帰国の際、日本の歯科医の紹介を受けたのですが、その時、「紹介されたからといっても、 1回行って気に入らなかったら、遠慮せず変えていいんだよ。日本人は、紹介されたら我慢して行 きつづけようとするけど、そんなことをする必要はまったくないです」と言われたのが印象的でした。 しかしながら、日本では、治療中に複数の歯科医に診てもらうこと(含む転院)が、心情的(歯科医 に対する遠慮。当然のように次の予約を取られて断りにくい)にも、制度的(原則的に1人の歯科医 が診断・治療を行う)にも、しにくいように思います。加えて健保組合の冊子などには、むやみに病院 のはしごをするのは健保組合の財政悪化に繋がるなんぞと書いてあり、よほどのことがないかぎり、 転院をためらうのではないでしょうか。
 こういう状況の中、直接診てはいただけなくとも、歯科医としてのご意見・アドバイスがいただける このサイトはとても貴重です。転院するにしても、かかっている歯科医にもう1度相談するにしても、 決断する参考になります。質問数の多さ、サイトのカウンターの驚くような数字が、すべてを物語って いると思います。お忙しいでしょうが、ずっとこのサイトを続けていただきたいです。

メールアドレス: chestnuthill@yahoo.co.jp   ホームページURL: http://

回答  残存歯質の量と切削方法・方向によっては(下顎前歯部の抜髄等)、エナメル質部分にひびが入っ たりハセツしたりするケースもあります。ただし、ご質問のケースですと健全な象牙質が裏側に存在 しますのでヒビが入るということは非常に考え難い状況です。
 40歳にもなると或る程度のヒビはあるのが普通です。ヒビだと縦方向だけですが、横や斜め方向 にも亀裂?があるようだと研磨の傷という可能性が高くなります。
 歯を研磨したということですので、「荒めの傷が表面についた」のではないでしょうか。普通歯牙研磨 にあたってはペースト(歯磨剤みたいなもの)を塗って固めの歯ブラシ程度のブラシうやラバーカップと 呼ばれるゴムのブラシで磨きます。普通だと目立つような傷がつくことも、ましてやヒビが入るような ことは考えられません。

 対応の悪さが余計な不信の元になっているように思いますが、個人の性格の問題ですから改善は 難しいでしょうね。院長の対応が悪ければ転院も考えやすいけれども、スタッフの一人がとなると不愉 快さがあっても態度で示すのも難しいことだと思います。

 健保組合の冊子はあくまでも日本全国治療の質が均一という前提に立っています。社会主義的な システムにはそれなりの良さもありますが、様々なところで問題を抱えています。システムの変更は そう簡単にないでしょうから、自己防御的にシステムを利用した対処をせざるを得ないでしょうね。そ れと、“お任せ治療”ではなく、治療を受ける前にそれなりの知識を得た上で臨むことも必要だと思い ます。


返信:Thu Nov 9 21:22:34 Japan 2000
  こんにちは。11/7に、「歯のヒビ」について質問したHです。お忙しい中、早速のご回答ありが とうございました。歯科医に診てもらったところ、「たしかにヒビだが、研磨でこのようなヒビができる ことは考えられない」と、先生同様の説明(ヒビは若くても自然にできることがある。通常の研磨で ヒビが入るようなことは考えられない)を受けました。  研磨の後に見えるようになったというのは、研磨によって歯がきれいになって(確かに一段白くな った感じです)、見えなかったヒビが見えるようになった可能性はあるとのことでした。ブラシやラバ ーカップも見せてくれ(治療中は目を閉じていて見ていませんでした)、触ってみるとラバーカップは ソフトで、どうしてこれで「グリグリとこすられた」と感じたのか???見てわかったのですが、同様 のもので他で研磨を受けたことがあるのです(グリグリと感じたことはありません)。ペーストは荒い のと細かいのの2種使ったそうで、荒いペーストを使った時に、担当スタッフが力を入れすぎたとい うことでしょうか。
 こういうことで、担当したスタッフには「もう少し丁寧に、軽く!」と言いたいですが、歯科医は説明 も丁寧で時間をかけてくれ、それなりに納得した(先生のご回答を読み、より一層)ので、このまま 通院しようと思います。今後どうしたらいいのかたずねたら、「特にヒビに対する治療はなく、普通に 丁寧に歯磨きしていればあまり心配ない」とのことで、これはいいのですが、今後の研磨について、 「研磨の振動でヒビが大きくなることもあるかもしれないが、それでも、定期的な研磨を勧める。不 安なら細かいペーストだけ使ってもいい」と言われたのですが、ヒビの本数が多く、そのヒビが大き くなる可能性ありなら、正直言ってこわいのです。話を聞いてくれ、説明も丁寧な歯科医だというこ とがわかったので、もう少し聞いてみようと思いますが、先生はどうお考えですか?

回答:
 色々な質問を受け付けていて感じることの一つに、“双方の理解不足”があります。 ドクター側の技術や対応の悪さばかりが強調されている側面が多いなかで、患者さんのためになる 治療を行っても、それが素直に受け取られないで完全に誤解と思われるケースがあります。結局は、 患者さんの理解不足とドクターの説明不足、話せば分かるという残念なケースです。
 そのような事実が多い中で、それだけ丁寧に説明が為されたことについては非常に嬉しい話と喜ん でおります。

 日本の治療レベルを問われることにもなりますが、歯面研磨って全くお金にならないのにそれを あえておやりになる診療姿勢は評価に値します。“ヒビ”の正体が何であったか、私には判断できま せんが、診療の方向や姿勢には美しいものを感じます。

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