生体の自然治癒能力で、“死腔”の自然閉鎖。
不十分な根管充填

日付、時間:Mon Jun 7 17:12:54 Japan 1999    氏名: K.N.   
所在都道府県:東京   職 業:会社員   年 齢:34歳      性別: female  

咬 耗
咬耗
咬耗
質問:
5年ほど前に、審美的な理由から上の前歯8本をさし歯にしました。現在問題が2つあります。

  1. レントゲンを見ると、神経を取ったところに薬がちゃんと入っていない。(今のところ、薬が入って いないところに膿、炎症はありません。)
  2. さし歯とこすれる下の歯が擦り減って、象牙質が出てきてひりひりするような痛みがあり、 食事の時に特に痛む。左の前から4本目と5本目がひどく、前の真ん中の2本、そして右の 前から4本目も擦り減っています。
そこで相談なんですが、薬がきちんと入ってないことを鑑みて、歯並びを変えるために思い 切って8本やり直した方がよいのでしょうか? それとも、何か他に方法はありますか?とても困っています。どうぞ宜しくお願いいたします。

回答  通常歯の神経を取ったあとに行う根管充填は、ガッタパーチャーとシーラー(根管充填材)を 使って綿密に封鎖します。しかし、歴史的に一部の先生は根管充填材のみで封鎖される術式を 指示されています。根管充填材は通常レントゲン不透過性のものを使いますが、一部の商品は レントゲン透過性です。従って、封鎖に問題がなくても、レントゲンで見ると“薬がちゃんと入って いない”ように見えることもあります。
 また、仮に根管充填が適切でなかった場合でも生体の自然治癒能力で、“死腔”の自然 閉鎖を行って病原性を食い止めるケースもあります。ご質問のようなケースで根尖病巣や炎症 などの臨床症状のない場合には、あえて治療やりなおす必要はありません。もし将来臨床症状が 現れるようになった場合、それから治療しても十分間に合います。

 さし歯はおそらくセラミックでしょうから、噛み合う対合歯の歯質より硬く表面のエナメル質を 磨耗させる可能性はあります。エナメル質より軟らかい象牙質が露出すれば、象牙質部分の 磨耗が極端に早く進行しますので“くぼみ”はますます深くなってしまいます。とりあえずの対処 療法として、磨り減った象牙質部分にプラスティック状の詰め物(深さに応じてレジンやボンディング材) をすることにより咬耗の進行抑制と症状緩和を図ることができます。

未だ、装着後5年ということですので、二次カリエスや極端な歯肉炎を起こしている状態で なければあえて8本やり直す必要がないように思います。

返信:
丁寧に説明していただいてありがとうございました。
私の場合、根管充填がレントゲンで見ると切れ切れになっているので、きっと適切に処置されてい ないんだと思います。とりあえず、臨床症状がない場合やりなおす必要がないということなので、 自分の自然治癒力を信じ、体調に気をつけてしっかりメンテナンスを続けていきたいと思います。 (毎日頑張って、ふつうの歯ブラシ、ペンタイプの歯ブラシ、フロスを使って手入れをしています。 ステンレスの歯垢取りもたまにしています) また、摩耗してしまった歯については先生のアドバイスのように対処療法でなんとか痛みを取り除 いてもらうようにしたいと思います。

とにかく、先生のお話を伺ってほっとしました。このところ頭の中が歯のことでいっぱいで、 思いつめる余り、脳みそに歯がはえるんじゃないかと思ったくらいです。(ちょっと大袈裟かしら?) 本当にどうもありがとうございました。
ところで、次回上の前歯をやり直すときのために教えていただきたいんですが、 わたしのさし歯は、表はセラミックで裏側は銀色のものが使用されています。 友人で裏がゴールドでできているさし歯をしている人がいるのですが、
質問1.柔軟性のあるゴールドの方が歯にとっていいのでしょうか?
ちなみにその友人はその歯を入れるときに金額的には、1本30万円と言われたそうです。 (もちろん値切ったということですが、、、)通常、ふつうのさし歯なら12万円くらいが相場だと思う のですが、
質問2.もしゴールドにするとしたら相場としてはおいくらくらいするものでしょうか? ゴールドにする利点は?
最後に、大学病院にお世話になる場合のアドバイスがありましたらお願いします。 お忙しいこととは思いますがどうぞ宜しくお願いいたします。

回答:
生体親和金属を使って、より付加価値を高めたメタルボンドです。金属代が若干 高いのと技工操作に少し気を使うようです。

長所として、メタルボンド特有の歯肉変色が少ないのと金属アレルギーが起こり 難いことが挙げられます。合金を構成する金属の種類は通常の銀色の金属とほと んど同じで、金の含有量が多少多いので色彩が金色に見えます。金の含有量が多 い分、若干軟らかいとはいっても対合歯の磨り減りを防ぐ程の違いはないと思い ます。また仮にそれ程軟らかくて金属が磨り減るようですと、穴が開いたり、咬 合低位による顎関節症の方が心配になります。事実上軟らかさに大きな違いはな いように思います。
金属アレルギーの問題にしても、口腔内の全てを変えないと効果が現れませんの で現在特別お困りでなければメリットはないようです。 30万円?滅茶苦茶に高いですね。私の医院では、通常のメタルボンドが7万円で すから4倍以上ですね。そんなに違いはないはずですが。

 大学病院は、学生教育を行う場であることを理解していただくことが重要です 。 当然治療レベルは、平均的な開業医より高いことは申し上げるまでもありません 。 「治療や診断に時間がかかる。手続きが厄介なこともある。」ということをあらかじめ ご承知おきください。

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