日付、時間:Tue Jan 23 13:28:56 Japan 2001
氏名: lee
所在都道府県:北海道
職 業:歯科大学生
年 齢:25歳
性別: male
質問:
疼痛を有する歯肉膿瘍に切開排膿処置を行うと疼痛が治まるのは何故ですか?
切開排膿処置を簡単に教えてくださいもう一つ、疼痛の仕組みについて学生の自分でもわかる
ように教えてくれませんか
メールアドレス: lee77@syd.odn.ne.jp
ホームページURL: http://
おそらく日本中の歯医者が勘違いしている疑問だろうと思います。従って私の意見を周囲の歯科
関連の人に聞いても“??”と思われるかも知れませんでその積りで聞いて下さい。
“疼痛=炎症”と考えても差障りがないと思います。“炎症=化膿”は医学的には適切でない表現
です。しかし、歯科領域、とりわけ歯肉膿瘍(歯槽膿漏・根尖病巣)などの炎症は、口腔内の常在菌
による日和見感染だと考えられています。通常、炎症を起こすことの無い常在菌が炎症を起こす原
因の一つに宿主の免疫抵抗力の低下が挙げられます。体調が悪くなると歯茎が腫れるというのは
典型的な例です。
しからば、体調が悪いからといっても全ての歯茎が腫れるわけではなく特定の部分が腫れますね。
その特定の部位には何があるかが問題です。答えは“原因があるから”です。
話を日和見感染に戻します。健全な口腔内には無限の細菌(常在菌)が生息していますが、炎症を
起こすことはありません。その口腔内にインレーを装着してセメントの一部を歯肉内に取り残したと
します。セメントに細菌が大量に混入していたわけでもないのに歯肉は腫れます。これも歯肉膿瘍の
一種ですね。
歯肉の中で一体何が起こったのか。ココが問題です。生体にとってセメントは異物ですので少なから
ずアレルギー反応が起こったはずです。アレルギー反応により低下した組織の免疫抵抗力により、
常在菌が炎症を起こしたものと考えられます。日和見感染と言われる所以です。
大学の講義で、“炎症は生体の防御反応”と習ったはずです。あのイタイイタイの炎症(化膿)が防御
反応って疑問に思いませんか?生体にとって異物であるセメントを生体外に排出するために、自らの
組織を破壊して排出しやすくすると解釈しています。こびりついたセメントはともかく、遊離したセメント
程度なら、組織を破壊して膿瘍が自壊する際に一緒に排出することが可能です。
ニキビは良く熟してから潰しなさいというのも、芯が出れば治るというのも同じ理屈です。ただ、それを
医療として行うのが切開・排膿です。そこで医者として大切なことは、芯は何か。原因は何であるかを
突きとめて、排膿と同時に可能な限り原因となる異物を取り出す心がけです。ニキビも潰しただけで
内圧が下がりますので一時的には痛みが引きますが、芯を残せば再び腫れてくるのと同じ理屈です。
ちなみに歯肉膿瘍の原因として最も多いのが歯石です。根分岐部に貯留した汚れや、補綴物辺縁
の汚れ、それに先ほどのセメントも原因の一つです。根管充填後の根充材なども原因です。そこまで
考えて切開・排膿を行っている歯科医は少ない??
切開は、あくまでも痛みを和らげる緊急避難的処置です。“押してダメなら針でつついて”という素人
的発想と同じです。大切なことは原因を特定して排除することです。歯石・セメント・汚物を除去すれば
炎症は治まります。もっともそれらを除去する際の機械的刺激で粘膜が破れて、ウミもでてしまいます。
内因性発痛物質については分かりません。