日付、時間：Tue Mar 13 20:30:16 Japan 2001 　　 氏名： ときこ　　　
所在都道府県：兵庫　　 職　業：主婦 　 年　齢：４２歳　　　 　 性別：　female　　

質問：
15歳の息子の親知らずの抜歯のことで相談をさせていただきます。12歳から叢生の ため矯正治療を始め、3年間近く装置をつけていました。今は保定装置をつけています。
　99･12･25に右下の完全に埋まった親知らずを抜きました。外部から抜歯の為に口腔外科の先 生が来られていて、その先生から、思っていたよりも歯の位置が深かったので、傷も深く凄く腫れ るだろうといわれました。翌日になっても唇の周辺の麻痺が続き、矯正の先生に相談をすると、抜 歯の時に神経を傷つけているかもしれないと言われました。様子を見ながら矯正の方も勧めてい こうと言うことで、1ヶ月、3ヶ月、半年と徐々に麻痺の範囲は小さくはなっていますが、それ以後は あまり変化が見られず、1年以上たつ今でも、下唇の周辺に違和感が残っています。
　春休みに、反対側の左下の親知らずの抜歯を勧められていますが、この歯も同様に神経に非 常に近接しています。今の息子の状態で、また、同じ様な事が起こらないだろうかと考えると不安 でたまりません。本人が受ける精神的苦痛は、計り知れないものがあります。矯正の為に親知ら ずの抜歯は必要と分かっていても、今、本当に抜かなければいけないのでしょうか？
何年後か、息子の状態が良くなってからでは遅いのでしょうか？
その事を先生に伝えると、もともと顎が小さいので親知らずの生えるスペースがないのでそのまま にしておくと今以上に抜くのが大変になるので、遅くても夏までには抜いた方が良いといわれました。 どうしても決心がつきません。是非とも、河田先生に診察をして頂きたいと思っています。３月１５日 （木）に伺いたいと思いますので　宜しくお願いいたします。

ご意見・ご感想：
ホームページを拝見させていただいて、皆さんからのたくさんの質問にも、丁 寧に分かりやすく説明されているので大変心強く思いました。頑張ってください。

メールアドレス： smile-madoka＠ｈ2.ｄｉｏｎ.ｎｅ.ｊｐ　　 ホームページURL： http://

　口腔外科医の立場からすれば、抜歯が必要な親知らずに関して時期はそれ程苦になりません。 あまりにも歯冠崩壊が著しいとか、炎症が激しいということにはこだわりがありますのでそのような 状況が予想される場合には早めの抜歯をお勧めいたします。
　しかしご質問のようなケースは、年齢的におそらく歯根部分が成長すると抜歯しにくいという懸念 から発した抜歯時期選定だと思います。実際に歯根形成されると抜歯しにくいという懸念は存在 しますが、反対にそれだけ萠出して抜歯しやすいという事実も存在します。成長や将来の状態を 絶対の自信をもって予測することは不可能ですが、最終的に抜けない親知らずはありませんので 必要な時期に抜歯されても良いように思います。

　また、口腔外からの抜歯に関して、口腔外からしか抜けない親知らずって抜歯の必要があるのか については素朴に疑問を抱きます。

診断：
　前回の抜歯は、口腔外からではなかったみたいですね。

さて、問題の左側下顎智歯抜歯についてですが、結論から申し上げますと抜歯は当分見送るべき だと思います。「根未完成歯ですので、歯根が成長すれば抜歯がより困難になる」という判断のよう ですが、骨深く埋伏した根未完成歯を抜くためには歯の最大豊隆部（一番横巾の広い位置）よりも さらに深く周囲骨を削除しないと抜歯できません。そうなった場合、現在の下顎神経との位置関係か らは相当近接した部分までの骨を大量に削除しないといけません。
　近接している上に大量の骨削除、更に根未完成歯ゆえに大量の有機質（神経）の結合を切断する ことは非常に危険です。

　一方、このまま智歯の成長を待った場合、少なくとも最大豊隆部が歯槽骨上ギリギリまでくらいは 萠出してきますので例え歯根が完成されて歯が大きくなったとしても抜歯時の神経損傷リスクは 小さくなることが見込まれます。