全身麻酔・局所麻酔双方にメリットやリスクは存在します。
全身麻酔の可否

日付、時間:Wed Apr 11 22:33:49 Japan 2001    氏名: すみれ   
所在都道府県:東京   職 業:学生   年 齢:22歳      性別: female  

質問:
 こんばんわ、医学部5年のすみれと申します。先生の丁寧な回答を拝見してぜひ お聞きしたいと思い、書かせていただきました。よろしくお願いします。
 アメリカに住む友人が「智歯を全身麻酔で抜いた」というのを聞いて、そのリスクは具体的に どのくらいとされているのだろうと思ったのですが、何かevidenceとなる論文など、ご存知でい らっしゃいますでしょうか?
まだまだ医学も十分明るくなく、まして歯のことは素人なので、抜歯の際の麻酔量が例えば同じ 時間麻酔をする外科手術と比較してどうか、といったことを教えていただけたら本当にありがた いです。
 友人は「痛みを感じる間もなく終わり、腫れも少なくてよかった」と言っていたので、これから 日本でも増える治療法になるのでしょうか。

ご意見・ご感想:
 一人一人の患者さんのそれぞれの不安や悩みに向き合っていらっしゃる 先生のご姿勢に嬉しくなり、また自分もこうありたい!と思いました。

回答  ご存知のように全身麻酔にも局所麻酔にもそれなりのメリットとデメリットがあります。 全身麻酔の効果としては、
@ 鎮静
A 意識喪失
B 筋弛緩
があり手術中に恐怖を与えることなく処置することが出来ます。一方、局所麻酔の場合には鎮静 効果しかありませんので一度に多くの恐怖を与えるような治療(多数歯抜歯)に限界があります。

 アメリカでは全身麻酔、日本では局所麻酔が主流ですが、個人的には局所麻酔が可能な抜歯 を大げさに全身麻酔で行うことには疑問を感じます。日本でも全身麻酔の設備が整った大学病院 等では、症例に応じて(障害児の治療や特殊要因)全身麻酔での処置を行っていますが今後の 普及見通しはあまり期待できないと思います。
 といいますのが、全身麻酔の場合には呼吸や循環器を管理するためにそれなりの設備や人材 を必要とします。抜歯以外に全身麻酔を必要とする処置があって、設備がある場合には問題あり ませんが、わざわざ抜歯のために設備を整える医院が増えるとは思えません。医療制度の違い というか、アメリカの場合歯科分野でも分業化が進み抜歯及び手術を必要とする疾患はその手の 専門病院という体制ですと設備投資もできますが、日本のように何での開業医が行うことが主体 の国ではコスト面でも不採算です。

 全身麻酔・局所麻酔双方にメリットやリスクは存在しますが、決定的な決め手がない現状では 体制変化まで巻き込む選択ですから議論さえ浮上してこないように思います。

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