日付、時間:2001年12月11日 15:12
氏名:MT
所在都道府県:兵庫
職 業:会社員
年 齢:32歳
性別: female
質問:
恐らく歯周病のすすんだ状態だと思うのですが、自覚症状としては歯の根元から、慢性的
に膿が出ており(味や臭いがある)、口の中が不快で、口臭もいつも気になっています。
高校生の頃から歯茎が痩せてきて、食事をすると食べ物が挟まるようになりました。上下左右
とも小臼歯から大臼歯の辺りです。その頃から、治療を受けようと今まで歯科には本当にあち
こちかかりましたが、大抵はレントゲンをとるだけで、特に歯周病の所見はないとのことで、
積極的な治療を一度も受けられないまま現在に至っています。
自分では、歯茎が悪いのはわかっていても治療が受けられないので、これ以上悪くならない
よう、せめてブラッシングだけはと自分なりに出来るだけきれいにするように心がけてきまし
た。先日も、今度こそはきちんと治療を受けたいとある歯科にかかり、歯周病の治療を依頼し
ました。レントゲンをとって、歯周ポケットを測る検査を受けました。一箇所のみ4mmのポ
ケットがあるとのことで、そこのところの歯石をとってもらい、全体のクリーニングを受けて
治療は終了となってしまいました。
担当の先生は、膿が出ているという私の訴えに対し、化膿しているような所見はありません
とのコメントでした。でも、歯茎の痩せてきているところから膿がでているのは間違いありま
せん。
何とか河田先生に治療をお願いできないでしょうか。本当に困っています。何処へ行けば治療
をしてもらえるのかわからず、インターネットで検索していて先生のホームページを見つけ、
思い切ってメールをさせていただきました。ただ、私の場合、詳しいことはわかりませんが、
レントゲンや歯周ポケットの検査の結果が悪くないようで、そのことが病気を複雑化させてい
るように思います。何か特殊な歯病周にかかっているのでしょうか?
とにかくこのままでは不安で、一日も早く治療を受けたい一心です。よろしくお願いします。
感想:
メールという方法で相談ができたり、また先生の治療方針を知ることが出来て、患者にとっては
本当に有難いです。先生は診療の傍ら本当にお忙しいとは思いますが、これからもいろいろなこ
とを教えて下さい。
若年性歯周疾患の範疇でしょうね。本人や歯科医もそのことに気付きながら、徹底的な歯石
除去や継続的な歯石除去を行わず、ただひたすらブラッシング
を行い症状を悪化させている例は結構多いように思います。
「歯周疾患の原因は歯石ではない」という(私から見れば)誤った考え方が歯科界を支配して
いるがための悲劇のように思えてなりません。
膿が出ている限り、炎症の元である歯石が存在しているはずです。現在の歯槽骨破壊程度に
もよりますが、今からでも徹底した歯石除去を行って、毎月歯石を取り続ける習慣を身に付け
れば相当数の歯をコントロールすることは可能だと思います。
多少の早い遅いはありますが、万人が最終的に歯周疾患末期に向かって突き進んでいる現状
ですので「歯周病がない」ということの方が不思議です。特殊な疾患を疑う前に皆が罹患して
いる疾患を疑いコントロールすべきでしょうね。とは言っても実際に診てみないと確信的なこ
とは申し上げられません。比較的お近くのようですので、まずは一度来院してください。
пF0792-88-4682(受付)
返信:2001年12月18日 3:51
お忙しい中、早速お返事をいただきまして有難うございました。
河田先生には、私の病状がわかっていただけたようでうれしいです。仕事の都合があるので、
時間を作って診ていただきにうかがいます。たぶん、年が明けてからになると思いますが.
...。どうぞよろしくお願い致します。
診断:
想像していた以上に健全な状態でしたので安心しました。退縮した歯肉を元に戻すことは
出来ませんが、定期的な歯石除去を習慣にしていただければ人並みどころか十分生涯の健全
を確保することが可能な状態です。
何も特別な処置は必要ありません。ただひたすら歯石除去とムシ歯の早期治療さえ実践すれ
ば維持が可能なレベルです。
回答:
目的は、炎症の原因である歯石の除去です。大きく分けて、麻酔を使わないスケーリング・
麻酔を使ったスケーリング・歯茎を切ってめくってスケーリング(手術)。名称はともかく目
的は全て歯石の除去です。手法の違いは、歯石の付着状態と深さ(取りにくさ)によります。
歯肉に対する傷はその手法によって順次大きくなります。歯石が付着している限り炎症を繰
り返し歯槽骨の破壊が進みます。その破壊を食い止めるためには歯肉の一時的な傷はやむを得
ないものという認識です(手術に比べれば楽)。
歯肉が下がったというのは、それだけ腫れぼったかった歯肉の炎症が消失して引き締まった
ということです。一旦歯石を取ってしまえば、炎症のない歯肉状態で軽い歯石除去を継続すれ
ば健康が保てるという筋書きです。痛みは人によって感じ方も異なりますが、歯肉状態の悪さ
に比例します。「痛みがないように」を優先すれば、目的である歯石除去が不十分になり歯周
疾患組織の健康は維持できません。治療を継続するかどうかは、理性でその必然性と有効性を
どれだけ理解できるかにかかっていると思います。例えば、胆石でも盲腸でも、手術すれば痛
いに決まっています。でも手術しなければ命さえ危ない。それでも手術するかしないかは患者
さんの理解度に委ねられるのと同じ様なモノです。程度は随分違いますが…。
返信:
河田先生、お忙しい中早速お返事を頂き有難うございました。先生のご説明はよくわかりま
した。ただ歯肉が下がってしまったのは腫れていたのが引き締まったのもいくらかあるかもし
れませんが、歯石除去の時に削れたり、ちぎれたりしたのでは?と心配なのです。というのも
歯と歯の間の隙間が大きくなるほど歯磨きはやりにくくなり、食事をすれば食べ物が挟まると
いう不快さを日頃感じているからです。”退縮した歯肉はもう元には戻らない”と聞いていま
すし...。あとは、自分がこの現実を受け入れて、治療にのぞめるかどうかだと思いますが、
しばらく時間を下さい。よく考えてみます。
先生には、誠実に説明をして頂けたこと、感謝しております。
回答:
歯石は比較的少ない方だったと思います。勿論ゼロではありません。
随分歯肉の傷を気にされているようですが、傷は必ず治ります。歯肉に傷をつけるのが目的では
ありません。歯石を可及的に取り去ることが最大の目的です。その際、傷を恐れて歯石除去を遠
慮するか、傷を恐れず目的の歯石を取るかの選択です。傷は一時的なもので必ず治癒します。盲
腸の手術でも傷は小さい程良いことは誰が考えても同じですが、小さくしたあまり肝心の病巣を
取り残したのではかえってマイナスです。
何をどう説明して納得していただけるか分かりません。歯石除去の重要性と効果の分からない
人に歯石除去をすれば不評を買います。しかも採算が合いません、しかも面倒。そんな理由もあ
ってほとんどの歯医者が歯石を取らないのが現状で、その結果が“歯の寿命は50〜60年”という
現状を打破する最善の方法が歯石除去です。その効果と実績を理性で理解していただく以外打開
の道はないのではないでしょうか。
回答:
申し訳ありませんが、歯肉退縮に関する質疑をじっくり読んで下さい。
歯槽骨が破壊されているにも関わらず、歯槽骨および歯肉に炎症が存在すれば歯肉は腫れあがっ
て見かけの歯肉位置は正常に見えます。炎症の原因である歯石を除去すれば歯肉の腫れが治まっ
て引き締まった健全な歯肉になります。その結果、破壊された歯槽骨にぴったり寄り添うように
なります。見た目が醜いという表現はともかく、今の現状が本当の姿なのです。その状態を直視
してそれ以上進行しないように心がければ現状を維持することができますが、偽りの美しさを求
めたならば歯槽骨の破壊は静かに進行します。
平均よりもやや良好という状態ですので、“腫れあがった”という表現は言い過ぎだとは思い
ますが引き締まった健全な歯周組織を美しいと思うか、腫れあがったふくよかな歯肉を美しいと
思うかは価値観の相違ですので何に重点を置くかは個人の自由です。
私は、生涯自分の歯があって何でも噛める健康な食生活が美しいと思っています。
話が治療の件に戻りますが、歯石除去後、4番と5番の歯と歯の間の歯肉が歯からはがれて宙
ぶらりんになっていて、歯間ブラシを通すと歯肉がブラシについて中へ入ったり、外側へ出てき
たりしていました。ここは、歯石除去後、傷がひどく歯磨きの度に出血が続いていたところです。
元のように歯肉は歯にくっついて治るのでしょうか。この件は気にかかりながらも先生に相談し
ていませんでした。しばらく経過を見ようと思っていたので...。正直歯石除去でこんなにも
いろいろ弊害が現れるとは思っていませんでした。
お忙しいところ申し訳ありませんが、お返事をいただけたら有難いです。
回答:
何度も同じことを申し上げておりますが理解が得られないのは残念です。メールのやり取りは
疲れました。希望・疑問は直接医院に来て聞いてください。何も無理やり押さえつけてまで治療し
ませんので一度来てください。
傷の深さは関係ありません。徹底的に歯石を取るためには歯肉を切って・めくって歯石を取り
ます(フラップオペ)。それでも歯肉は完全に治ります。その違いは炎症の原因である歯石の取
れ方の違いです。今回治りが悪いという場所は、元々悪かったという所ですのでそれだけ深く歯
石が付着していたと推測されます。それだけに傷が深くなるのもやむを得ないところです。それ
でも歯石が完全にとれていたならば歯肉の傷も順調に回復したでしょうが、残念なことに取り残
しがあったために回復が極端に悪いということのようです。
根本的な解決を望むならば、更なる追加処置を行うか手術をしてでも確実に歯石を取り去るか
という選択になります。或いは、手術にもそれなりのデメリットがありますので程ほどのところ
であきらめてメインテナンスに移行するというのも選択肢です。
いずれにしてもその1箇所に固執するよりも、他の健全な歯が同様の道を歩むのを阻止するこ
との方が大切です。一番大切なのは継続したメインテナンスです。