全体の歯を保たす努力が個々の歯を助ける。
根尖病巣が不安

日付、時間:2002年1月1日 16:30   氏名:R.T  
所在都道府県:兵庫   職 業:その他   年 齢:28歳      性別: female  

質問:
 右上2番の神経は10年前に抜いています。そのとき1/3程欠けた為樹脂で補充してあ ります。もしその下に病巣が出来ていた場合、中だけクリーニングをして歯を削らずに差 し歯にしなくても大丈夫でしょうか?
(かみ合わせなどで2番の歯はまったく当たりません)前歯なので差し歯にしたくありません。
 それから神経を抜いていない歯に病巣が出来ている場合神経をぬいて治療するしか方法は ないのでしょうか?
膿みが出ている場合自分の目でみれるのでしょうか?
そのような場合きつい口臭がでることが多いのですか?
先生のページを拝見してると怖くなってしまいまして。。よろしくおねがいします。

もうひとつ質問です。(1月1日)
 上2番(神経なし)もし病巣があって治療した場合できるだけ将来的にいい治療法は何 でしょうか。
 これは見た目なども含めてです。歯茎が黒ずんだり、その歯だけ厚みがあったりという のがいやです。もし何十年後かに上2番の歯が最悪のことになった場合どのような形で外 見上普通の歯のように見える治療法があるのですか?

回答  何時・如何なる場合もというわけには行きませんが、上顎前歯部は比較的根管治療が行い 易いので再治療は可能でしょう。ただ、その時の残存歯の状態によって最終的な修復形態を 決定しますので“差し歯にしたくありません”という希望は最大限尊重するとしても約束で きるものではありません。
 また10数年を経過したのちの話ですので変色や亀裂などもあると思われますので、かたく なにさし歯を拒否することが必ずしも得策ではないように思います。10代で抜髄した歯の 何十年後を心配するよりは、今何もないと思っている歯を同じ運命をたどらないようメイン テナンスに目覚めることの方が重要です(普通にしてれば60歳でほとんどの歯を失います)。

 さて、ほとんどの歯を生涯保存できる状態を確保した上で、問題歯の処遇を考えてみまし ょう。臼歯部の咬合支持が十分で周囲の歯もしっかりしていれば、無髄歯ですので十分な 切削が可能ですのでジャケットタイプのセラミッククラウン(オールセラミック)での補綴 が一番要望に近いものだと思います。通常の医療レベルを超えた厳しい注文ですので、希望 通りの治療を行ってくれるドクターを探すのが困難なことと多少高めの費用を覚悟されて おいた方がいいでしょうね。

 “神経を抜いていない歯に病巣が出来ている場合”というのは通常は考えにくいことです が種々の条件の違いはあっても実際にあり得るケースです。その場合の治療は根管治療です。 抜髄を極力避けたい気持ちはわかりますが、すでに神経が死んで腐った状態ですので根管の 清掃→根管充填は避けることは不可能です。
 排膿と口臭は強い因果関係があります。根尖部の病巣がある程度進行した状態では排膿も 確認されるようになるでしょう。

 


返信:2002年1月2日 14:56
1月1日に質問させていただき早速の回答ありがとうございました。もうひとつ質問させて ください。
上2番に病巣があった場合治療は困難ですか?またリスクは何でしょうか?
 先生のお話からしますと治療した歯(神経を抜いた歯を含め)でも 5年ほどすると2次 カリエスなっていることがあるとおっしゃっていますがその場合、そのたびに再治療をして いくといずれ治療済みの歯はけずられて治療毎に無くなっていくのではないのか心配なのです が。また2次カリエスを防ぐ方法はあるのでしょうか。

 それからクリーニングを毎月でもするのが良いとおっしゃていますが歯茎や骨が後退しない のですか?
あまりにもクリーニングをすると細菌に対する免疫がなくなって細菌がたまりやすくなったり しないのでしょうか?
知人は28さいで初めて歯医者に行ったそうなのですがなんと歯石はたまっていたにもかかわ らず1本も虫歯はなかったそうです。私のほうが熱心?にお手入れをしているのになぜなのか うらやましい限りです。

回答:
 上顎2番は一番?根管治療を行い易い歯です。とは言っても、根管治療を行えば必ず治癒する ものではありません。特にリスクというものは存在しませんが、何よりも根管治療の技術を知る 方法(情報)がないので、より技術の高い歯科医を探すことが困難なことが一番厄介なことだと 思います。
 勿論カリエスや根管治療のたびに残存歯質は少なくなっていきますのでいつまでもレジン充填 での回復ができるとは限りません。二次カリエスを有効に防ぐ方法はありませんが、日々のブラ ッシングと定期的な除石やプラーク除去を行い、その中でなるべく早めに異常を見つけ出して 治療することが大切です。

 それと歯肉の退縮に関してですが、これは歯槽骨が破壊された結果歯肉がやせたように見える だけです。根本的な予防策は歯槽骨破壊を最小限に食い止めることです。その歯槽骨破壊は歯石 やプラークなどの異物の存在により引き起こされる炎症ですからスケーリングこそが最善の方法 です。鉄の鍋もタワシで磨けばそのうち磨り減って穴が開くでしょう。それを恐れて磨かなかっ たら、汚れがこびりついて早期にさび付いて穴があくのと同じです。
 歯石は歯槽骨破壊の原因であってムシ歯とは直接因果関係はないと思います。また、皮肉なこ とに“お手入れ(ブラッシング)”が占める割合は案外低く、生活習慣や体質・歯質が大きく影 響しています。しかもその体質や歯質を改善することは不可能に近いことですので“お手入れ” 以上のお手入れ…つまりスケーリングや検診が有効だという結論です。

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