日付、時間:2002年1月23日 19:52
氏名: S
所在都道府県:東京
職 業:主婦
年 齢:40歳
性別: female
質問:
左の下奥歯にブリッジ(20K)をいれて、体調が悪くなり大変心配になっています
(ブリッジはD6Fと歯科医の領収書にありますが、ひょっとしたらD67Gなのでは?とも
思えるのですが、よくわかりません)。 ちなみにブリッジを入れた箇所は15年位、歯がな
いままの状態でした。
ブリッジを外して、新たに別の仮歯になっている(最初の20K装着からは9日目にあたる)
現在、一番強い症状としては、左首筋・左肩甲骨・左腕に痛みとしびれが出ており、また時
折、顎が食事の時のように勝手に動いたりしています。
担当歯科医は今後の治療方法として、新たに作った仮歯(その歯も実は昨夜外れてしまった!)
を装着した状態で、夜の就寝中にチューブを装着する方法をとるとの事でした。
症状が出てからまだ間もなく、体調が悪く寝ていたりしている為、他の歯科医にはまだ誰にも
見てもらっていません。昨夜外れた仮歯も今日がその歯科医の休診日の為、何もしていない状
態です。大変不安なので、何らかのアドバイスが頂けましたら幸いです。
どうか宜しくお願い申し上げます。
ちなみに初めの治療(3ヶ月前)から仮歯期間(2週間位)までは、何ら異変を自覚する
症状はありませんでした。ブリッジに至るまでの経緯としては、最初に左上5が痛く噛め
ない状態になり我慢できずに歯科医に行き始め、治療を進めていくうちに、左下の奥歯が
ない状態をブリッジにするよう薦められ、同意した次第です。
以下、少し長くなりますが<ブリッジ装着からの経緯・症状>
まず装着日当日の夕方より首筋・肩の強い凝りと全体的不快感を感じ始める(慣れないせいな
のだろうという思いもあり、我慢してそのまま過ごす)。上記の症状がより強くなり、左ひざ
の痛みも加わっていた3日後、食事中にブリッジが外れ(その際手に持ったら、かなり重い
ものだと気付く)、症状などを話し、歯科医にてブリッジを調整してもらう。
その夜は就寝時に左右の4が上下がっちり合わさった感じで、「い」の字を発音するよう
な感じが続き、左奥歯に綿をつめると少し楽になったが一睡も出来ない(朝方には時折寒い
時のように歯がガチガチと震える症状が加わる)。
翌日の5日目の午前、出ている症状を説明し、奥歯が低いのでは?とも訴えると「あなたが
希望するなら外してあげてもよい」と言われ、ブリッジを外す。その日が土曜日だったせい
なのかは判らないが、2日後の月曜日に仮歯を入れる説明をされ、外しただけの状態になる。
外した後も左ひざの痛み以外の首筋その他の慢性の凝り(鈍痛)等は相変わらず続く。
翌日夕方より頭の重い感じが強くなり、首筋(後頭部)・背中の痛みが左側であることを自覚
する。
ブリッジを外した2日後の月曜日夕方(最初の装着より7日目)、新たな仮歯を装着する
(この仮歯は最初の仮歯ではなく、新たに型を取って作ったが形状は最初の仮歯とは違い
20kの本ブリッジの形に似ている)。この日に初めて、出ている症状を紙に書かされ、今後
の治療として、夜就寝中にチューブを装着する旨の説明がある。症状は変らず、左側の痛み・
しびれを強く感じ、首を固定していないと辛い状態となる。
無意識のうちに顎が動く(モゴモゴ感)も加わり翌日夕方、右4が強くあたり仮歯の奥が
低い感じがすると訴えると仮歯を修正される。その夜(昨夜)は、多少の頭痛と前より激し
い顎の動き(ガチガチ)があり、明け方就寝中に仮歯が外れた。
以上つたない説明ですが、何らかのアドバイスが頂けると大変心強いので宜しくお願い致します。
ほんのわずかな咬み合わせの狂いが生体に対して如何に影響をおよぼす(こともある)と
いう実例を示す状況ですね。長年の“歯無し”状態で狂った咬み合わせとはいえ、長い月日
のなかで徐々に慣れ親しんだ咬み合わせが治療により変化したために過剰な症状を呈してい
るようですね。
最終的に生体が納得のいく位置や高さに落ち着いた段階で症状は消失するはずですが、おそ
らく体質的にその“納得のいく位置や高さ”の許容範囲が狭く、反応も過剰気味だと思います。
元々“納得のいく位置や高さ”の補綴物を作ることは不可能です。それよりもその過剰な反応
にいちいち対応してあれこれいじりまわすとかえって泥沼にはまりこむ危険性があります。
最終補綴物だからこんな症状は耐えがたいという部分もあるのでしょう。仮歯だとその辺の
気持ちに微妙な違いがあって、しばらく我慢しているとそのうち症状が治まるケースも多い様
に思います。仮歯だから簡単に気に入らないかみ合わせ部分が削れるという側面もあります。
あまり症状の変化に過剰反応しないで、適当と思われる仮歯・もしくは本補綴物に馴染む
ための期間を設けた方が良いのではないでしょうか。
意識しておりませんでしたが、確かに仮歯と最終補綴物とに対する気持ちに微妙な違いがあった
のかも知れません。部分入れ歯を装着しなくなって15年も放置しておいた自分の愚かさも
改めて自覚いたしております。
このように対応して下さるHPをお作りになっている先生に感謝いたします。
本当にありがとうございました。
型を取る前に入れる仮歯というものは、そもそも噛めれば良い程度の意味合いのもので、
その形状については最終補綴物とはあまり関係がないものなのでしょうか?
そして仮歯の期間としてはどの位が適切なのでしょうか?
又この状態ではもう少し先になると思いますが、出来れば左上5は最終的に金属ではなく、
歯に近い色のものを入れたいと思っています。その際の選択肢としては保険適応のものでは
硬質レジンとなり、その他はメタルボンド、セラミックとなるのでしょうか?
そしてその下にはブリッジが入ることになります。そのブリッジは新たに作り直すとのこと
なので、もう少し軽いものにしたいと思いますが、奥歯ということは、やはり金属が一番です
よね。先生のHPで色々と勉強させて頂いて、保険の金属でも充分だったみたいですが、土台
?が自由診療になっている今となっては選択肢はもうないのでしょうか?(作った20Kブリッ
ジは中空のものではなかったので、中空にするともう少し軽くなるというような話がでてき
ましたが…)
☆ 左上5の材質とその下のブリッジD6F(D67G?)の材質との関係についても、先生
のご意見が頂けると幸いです。
多々の質問でご迷惑かと思いますが、何卒どうぞ宜しくお願い申し上げます。
そもそも左上5を挺出治療にしてもらいながら、下は健康な両脇の歯を削るブリッジに安易
に同意してしまったことも愚かしいのですが…診療室で治療を受けながら即断する心理状態に
は、平常心でいられないものがあるんですネ。
中年にもなってしまうと日頃は経験知の中で過ごしていることが多いせいか、今までに体験し
たことのない症状が出て少なからずパニックになっていたようです。こちらのHPのおかげで
大変心強く助かりました。ありがとうございます!
回答:
上顎を矯正しましたか。不定愁訴の原因はブリッジではなく、ブリッジを入れたことにより
生じた不安定な上顎との咬合ではないでしょうか。
“天然歯は極力削りたく”というのは患者さんと歯科医の共通の願いであり、ムシ歯以外の歯
を削ることに抵抗があります。確かに何の問題(疾患)もないのに天然歯を削ることは慎むべ
きことですが、歯牙挺出や早期接触はムシ歯ではありませんが立派な疾患だと認識しています。
削りたくない気持ちが強いために矯正的手法で挺出歯を圧下(あっか)することは一見優しい
治療にみえますが、今回のような落とし穴が潜んでいる可能性もあります。つまり圧下される
歯の固定源となる臨在歯は反作用により少なからず挺出します。それにより生じる早期接触部
分は人為的に削合しなければ歯軋りによって自らが対処するようになる可能性が十分考えられ
ます。結果として今回のような症状が現れたのではないでしょうか。
最も、通常はここまでヒドイ症状が現れることはないと思います。天然歯を削らないという
気持ちが余りにも強いために、また削ることを回避するために行った処置の対処として歯を削
る(咬合調整)を行うことにはかなり抵抗があるでしょう。
医療は常に有効性と副作用を天秤にかけて処置を行います。デメリットゼロの処置なんて
考えられません。その中で、職業として唯一人に傷をつけても合法的な立場といえます。
傷つける(メスを入れるとか歯を削る)ことによるデメリットが、得られるであろう有効性
を大きく上回っていれば治療として成立します。結果論ですが、単純に挺出した部分を可能な
限り削って、下顎ブリッジを作成しておけば今回のようなトラブルがなかったかも知れません。
さてさて、質問の本題に移りましょう。
圧下の固定ワイヤーは、対合歯にしっかりした本ブリッジが装着された時点で一応の役目は
終わります。かみ合わせがしっかりすることで後戻りを防ぐことができます。ある意味では
永久的なリテーナーが装着されたことにより、後戻りは起きなくなると想定されるからです。
補綴物は、常に調整も不必要な理想的な最終形態を備えたものが理想とされていますが、
現実の問題として絶対不可能と申し上げても過言ではないでしょう。常に現実の問題を直視
して、試行錯誤と妥協、そして生体の順応力を借りて最終的な補綴物に仕上がっていくものと
理解しております。仮歯にしても同じ、いやそれ以上に不完全なものです。モノが噛めると
いうのは3の次で、審美性の確保と、挺出や歯牙移動を防ぐ咬合関係の確保だけが目的です。
それさえ満足していれば十分で、それ以上の要求は理想ではありますが現実・絶対不可能と
申し上げても過言ではないでしょう。
抜歯後の治癒を待つというような事情がない限り、仮歯の期間は極力少ない方が理想です。
仮歯である程度様子をみて最終補綴物装着後の状態を予測するという考えもありますが、最終
補綴物など存在しないという考え(実態?)を加味すれば、一刻も早く最終補綴物を装着して
調整を行い、どうしても調整範囲を越える補綴物であったならば補綴物そのものを作り替える
方が実践的ではないでしょうか。
色調の問題ですが、ブリッジの支台が小臼歯ですので前歯部では保険適応の硬質レジンも
他のセラミック同様保険外扱いで値段の差はほとんどありません。常識的にはメタルボンド
がお勧めです。但し機能的には保険適応の金属ブリッジと差がないというよりも、硬くて磨
耗がないぶ分、金属よりも対合歯だけが磨り減るというデメリットや適合力の悪さがクローズ
アップされるかも知れません。
中空とは、金属の使用量を減らして経費削減を計る以外にほとんどメリットは見当たりませ
ん。手にとって意外と重かったことが印象的だったようですが、その辺の1gの違いが生体
に及ぼす影響はほとんどないものと思われます。
問題を起こした本質は、生体にとって(結果として)不都合な咬合関係ですので、簡単な
ことではありませんが、生体にとって許容範囲の中で都合の良い咬合関係を見つけ出すこと
だと思います。
回答:
10年以上前に咬合治療から手を引いた私が申し上げるのも何ですが、あまりひっちゃきになら
ないでしばらく咬合の安定を待たれてはいかがでしょうか。顎咬合学会の名簿がどの程度のもの
か知りません。とんでもまく神業に近い先生も混じっているはずですが、年齢に関係なく駆け出
しの先生も同居しています。勿論、今の症状を扱っていますので引き受けてはくれますが、頼ま
れた以上何か処置をしなくては格好が付かないという心理が働きます。
“いじればいじる程泥沼”という実態もあります。また一方でムシ歯と違い生体による自然回
復の見込みもありますので現時点では早急な解決を求めないのも選択肢だと思います。
返信:2002年1月30日 10:05
何度もご返信頂き、大変感謝いたしております。的確なアドバイスありがとうございます。
私もあれこれ、いじられるのが一番悪い方向へいくのではないかとは体感しており、実は昨日
出来てきたスプリントを装着してからかなり良くなってきた体調がまた同じ症状を発症して確
信しました。素人的には、とにかく耐えうる同じ状態の期間を長くおくことで生体がどうにか
折り合い点を見つけてくれるのではないかと思っています。
ただ今のブリッジの仮歯も実は高さがかなり低い感じで左右の均等感が感じられない不快感が
目下の悩みだったこともあり転医したいと思った次第ですが、その辺りはもう少し慎重に考え
たいと思います。ご助言本当にありがとうございました!