日付、時間:2002年3月13日 18:23
氏名: M.S
所在都道府県: 東京
職 業: 主婦
年 齢: 35歳
性別: female
質問:
上の前歯4本の裏側の虫歯を治療したのですが、以来風や常温の水でさえしみるようになっ
てしまいました。治療前は冷たい水もしみなかったのに毎日憂鬱です。先生に聞くと、しみる
こと自体は治るかもしれないし、そのままかもしれない、もし気になるのなら神経を抜くとい
われました。
今まで虫歯だったものの、何の問題もなかっただけに、神経を抜くなんて考えられません。
専門家の我々でも心情的には同じ感覚ですが、歯痛発生のメカニズムや実態を知れば当然の
成り行きだと理解できます。今日の診療でも「痛みがないのに治療するの?」という質問があ
りましたし、日常常に患者さんから受ける質問の一つです。
わずかな痛みがあったら御仕舞い(抜髄)という歯科治療の実態を常識として認識していた
だくことを広く世間に知って頂きたいものです。“ちょっと胃が痛むので検診したらガンの末
期”だったというのと同じく、けなげな歯の神経は完全にムシ歯に犯されているにも関わらず
最後の最後まで痛みや不平を言わないけなげな組織なのです。ちょっと痛み出したは断末魔
の痛みに変わる本の数週間前の兆候なのです。数十年かけて成長したムシ歯の成長からみれば
最後の数週間前まで絶えぬいたことがいかにけなげであるかは理解していただけると思います。
さて、治療前に痛みがなかったからというご意見はごもっともですが、それが、痛みを発す
るどれくらい前かは不明です。その猶予が1年以上ある状態であったならばその治療により
数年以上の延命効果が期待できたはずです。
反対に猶予が数ヶ月以内であったならば、治療による刺激が最後のトドメとなって痛みを
誘発することになります。その猶予期間を事前に知ることができたならばこのようなトラブ
ルはなくなると思いますが、残念なことに現状の医療レベルでは不可能です。治療する側と
しては、ムシ歯を発見した時に猶予が1年以上あることを願って歯髄保護のための治療を選
択せざるを得ない状況です。運悪く猶予が1年以内であって、治療後の痛みを誘発した場合、
我々は「残念だけど抜髄時期を数ヶ月早めてしまっただけ」という認識です。
担当医のおっしゃる通り、一時的な歯髄炎症で回復の見込みもわずかにありますのでもう
しばらく経過を見る必要があります。それでも回復しないとか、不快感が耐えられない場合
には抜髄を受け入れざるを得ないと思います。
大切なことは、今そのは歯が抜髄になるか否かより、同じ過ちを繰り返さないようにもっと
早めの治療を心がけることではないでしょうか。この手の認識不足からくる誤解は歯科治療
の大きな障害となっています。国家を挙げて正しい知識普及が徹底されることを心から願って
おります。