医療の原点はあくまでも“原因の除去”です。
抜歯前のセレモニー?

日付、時間:2002年3月19日 14:37   氏名:   r.o  
所在都道府県: 東京   職 業: 会社員   年 齢: 28歳      性別: female  

質問:
 はじめてご相談申し上げます。
右上側切歯2に「歯根嚢胞」ができています。その歯は7年前に治療した歯です。おかしいと 感じ始めたのは4年前くらいでその時の医院ではまだ治療はしなくて良いと言いいうことでそ のままに。1年前に痛みを感じ医院を変えて治療を始め1年間「根管治療」を行ない、途中様子 をみる為治療休止期間3ヶ月を2回を経て合計20回ほど通いました。その間一度「根管充填」を した時?に膿が出て溜まってしまった為か激しい歯痛に襲われ右顔が目の下から全体的に腫れ 上がる事がありました。
 「濃が出たから袋は小さくなりますよ」と先生に言われたので安心していたのですが、その 後レントゲンを撮った結果は変わらず袋は鮮明に写り大きさも歯と同じくらいの大きさのまま でした。そして大学病院を紹介して頂き口腔外科で1ヵ月後手術予定です。

 大学病院では嚢胞摘出をして根切(「歯根端切除術」のことでしょうか?)をすると言われま した。嚢胞が大きい為このままにしておくと隣の歯の神経にも影響が出るかもしれない。鼻腔 に近いとも言われました。成功率は70%でその後の経過次第では抜歯しなくてはならないかもと。
 1年間通っても袋の状態が良くならなかったので諦めていたところ、河田先生の「歯根端切除 術は無意味な治療」という言葉を目にして1ヶ月後の「歯根端切除術」をしても大丈夫なのだろ うかと悩み始めています。

 歯科医院では1年間丁寧な治療をして頂けていたとは思うのですが、根管治療が正確に行なわ れていたのかな?と疑問を抱いています。河田先生のHPで紹介されている医院(世田谷が一番近 いです)に変えて(そこの先生の治療方針がそれまでと変わらなければ同じ事なのですが)「根管 治療」をしたほうが良いのか、それとも私の今の嚢胞の状態では手術をするのが一番良い方法な のでしょうか。
 最近また嚢胞ができている部分(小鼻の横)を押すと違和感があり神経に響く感じがして強く 押す事ができません。歯茎(かなり上部)を触るとぷっくり膨れているのが良く分かります。今 は痛みはありませんがまた激痛が起こるのではないかと毎日不安です。そろそろ年齢的にも子 作りを考えていて歯の治療を早く終わらせてしまいたいのが本音です。
 私は東京都在住なのですが歯根端切除術をせずに治療して治る可能性があるならば河田先生 の医院のある姫路まで行く事も考えております。掲示板の切除予後の状態も読みました。取り 返しのつかない手術・治療が行なわれ後悔する事だけは避けたいのです。
お忙しいとは存じますが何卒アドバイス宜しくお願い致します。

感想:
 歯科治療は患者は先生を信頼してお任せするしかなく、最終的な決断は自らが出来るとは いえ知識がない素人にとってそれは大変なことであり精神的な負担を感じてしまいます。 河田先生のような歯根端切除・根管治療に対する考えをお持ちの医師がもっと増えてくれる と嬉しいのですが。。。手術前にこの河田先生のHPを知ることが出来て本当に良かったです。

回答  医療の原点はあくまでも“原因の除去”です。炎症(疾患)を起こす原因が何であるかを 特定して、それを完璧に取り除くことができれば、あとは生体の治癒能力で回復します。 勿論言葉では簡単ですが、原因と特定や除去方法をめぐって日夜努力を積み重ねてもなお完璧 には程遠い段階であることも事実です。

 しかし歯根嚢胞の原因が根管及び歯根に貯留した汚物であるにも関わらず、歯根端切除術に 関してはどうも原因の追求を見失って抜歯を納得させるためのセレモニーになっているように 思わざるを得ません。
 根管治療をしてもダメ。大学病院で手術をしてもダメ。「最善を尽くしたけれどもどうにも ならないのであきらめて下さい」という筋書きが見え隠れしています。基本はあくまでも的確 な根管治療であって、それが可能であれば手術は必要ありません。

 と、ホームページの随所で申し上げており、遠くから何人もの方が治療に来られていますが、 私にも不安があります。私の発言には、根管治療が不完全であることが前提になっております。 現実に多くの方を治癒に導いた実績もありますが、中には首を傾げたくなるほど完璧な根管充 填をなさっている症例もあります。それでも遠くから来られた限りはと思い根管治療を行いま すが結果は思わしくありません。その理由は、根管治療の問題ではなく歯根破折が原因だった ことを後になって知りました。私としてはそれで納得できたのですが、遠くからわざわざ来院 されて結果が歯根破折で結局抜歯となったご本人の気持ちを察すると胸がつかえる思いで一杯 です。

 さて、実際に姫路まで来られるかどうかはご自身の判断に任せるとして、治るか治らないか は1回の来院で結果が出ます。追加処置としての根尖部掻爬術(歯根 端切除術との違いは十分ご理解ください)が必要かどうかはともかく、思惑の結果が出な ければ歯根破折などの原因が存在していると判断されますので歯根端切除術を行っても無駄と いうことが分かります。


返信:2002年3月20日 16:06
 3/19に歯根嚢胞について質問させて頂いた者です。先生、お返事ありがとうございます。
1ヵ月後の歯根端切除術はやめることにしました。
「歯根破折」の可能性もあると言う事ですが、それが起こる原因は何ですか?
歯科医院や大学病院では「歯根破折」という説明は受けていないと思います。それはレントゲ ンを見れば分かるものなのでしょうか?分かるものであれば医院に聞いてみたいと思います。
歯根破折の可能性もあるという事も思慮して主人と良く相談しこれからの治療方針を決めたい と思います。

河田先生に治療をお願いする場合1回の通院で結果が出ると言う事ですが嚢胞摘出・根尖部掻爬 術が必要になった場合は最低3日の通院と考えておいて宜しいでしょうか。 先生のような方がいらっしゃるととても心強いです。ありがとうございます。

回答:
 「歯根破折」は打撲のような外傷は無論のことですが、日々の咬合による金属疲労的な破折 が考えられます。抜髄後7年ということですので可能性としては一応考えられます。その診断 についてですが、レントゲンや通常の診査で分かるくらいならとっくに診断がついているはず です。もし破折していたとしてもおそらくレントゲンでは確認できない状態だと思います。  偉そうなことを申し上げている私も、その積もりで診て・触ってそれでも分からないことが 多いことをご理解ください。型を採ってから判明したり、手術中や抜歯して始めて判明するこ ともあります。それくらい微妙な亀裂であると同時に、世の中ではそれすら気付かないことが ほとんどであるのが実態だと認識しています。

 通院の件ですが、基本はあくまでも1回です。もし嚢胞摘出・根尖部掻爬が必要となれば、 手術の予約はそのままにして大学で手術されてはいかがでしょうか。歯根端切除術とほぼ同様 の術式(少し簡単)であると同時に、その件に関する技術の差はほとんどないものと認識して おります。問題は、根管治療と原因に対する認識が大きく異なることです。


返信:2002年11月1日 13:33
河田先生へ
2002年3月19日に「抜歯前のセレモニー?」をご相談した r.o と申します。
 ご相談した後、手術を中止し次の処置の決心がつかず数ヶ月経ってしまいました。最近、数年 前に治療した奥歯のかぶせ物が欠けてきた為職場近くの歯医者に行き、治療した際ご相談した右 上側切歯2番の嚢胞の処置を早くしたほうが良いとやはり言われました。
「歯根端切除術」は避けたいと話しましたら一度開けて調べてみて「根尖部掻爬術」で済むよう ならそうしましょう。しかし無理なようなら「歯根端切除術」をと言われました。

 いろいろと考えました結果、姫路に行き河田先生に治療をお願いしたいと思います。嚢胞摘出 ・根尖部掻爬もお願いします。
しかし現在治療中の奥歯は造影剤を含まない接着剤をかぶせた段階で、痛みが出た場合神経を抜 かなくてはならない状態だと言われています。治療後1週間経って痛みはありません。その他の あやしい歯の治療を済ませてから嚢胞の手術を受けたほうが良いのでしょうか?
 11/6に次の予約が入っており、先生に相談して問題がないようであれば、出来れば11月の金曜 日に予約を入れさせて頂きたいと思っております。日にちの確認はお電話ですれば宜しいでしょ うか。
 あと、術後腫れや痛みは人によって違うと思いますが、だいたいどのくらい続くものでしょう か。宜しくお願い致します。

回答:
 治療の順番は関係ないでしょう。
回復の目安は処置が上手くいった場合、3日・1週間・10日です。つまり、3日ほどは腫れますし 痛み止めが必要な痛み、糸を抜くまでの1週間はうっとうしい違和感、10日を過ぎればかなり快適 という推移です。これはあくまでも一つの目安です。
 予約は平日の日中、受付のいるときに電話で相談して下さい。


初診時パノラマ
2|術前
2|根充材除去
2|術後
一見根管充填は完璧
根尖部付近の根充は腐敗
再根充の後根尖部掻爬
診断:
 レントゲン的には一見根管治療および根管充填が完璧であるように見えます。しかし、根尖部に 明らかな根尖病巣が認められますので、根管充填の不備を疑うべきです。実際根管治療を行って、 根管内の篩い根充材を除去してみると、根尖部付近の根充材は黒く腐敗していました。
 この古い根充剤をリーマで機械的に拡大して除去した段階で、根尖部から大量の排膿がありました のでこのまま即日充填を行うには無理がありました。そこで、根尖部の掻爬を行い、止血した段階で 根管充填を行い、再び漏れ出した根充材を綺麗に清掃したのち縫合することにしました。

術後経過:2002年11月20日 16:59
 先日は根管治療・充填・掻爬の治療、そして疑問にも丁寧なアドバイスを頂きとても感謝しており ます。また衛生士さんの技術・応対は、手術の不安と緊張を解いて下さり安心感を与えて下さいまし た。どうもありがとうございました。

 麻酔をしての根管治療は今までの治療とは全く違う感覚でした。手術後5日経ち痛みはなくなりま したが右顔の腫れと違和感があり大きな口を開けたり、患部を皮膚の上から押さえる事はまだ無理 な状態です。たまに血と膿が出ている感じがあり、膿がまた溜まっているのではないかと心配です。
 手術1週間後にご紹介して頂いた小山歯科医院さんに抜糸の予約を入れました。
抜糸は傷口がまだくっついていないような場合はもう少し先に延ばしたほうが良いのでしょうか。
また、腫れている=膿が溜まっている可能性はありますか。

回答:
 “手術後5日経ち痛みはなくなりました”ということですので大丈夫でしょう。あれだけ大きな骨 破壊と膿の貯留があったわけですから少々の違和感は予想の範囲内です。それだけ大きな骨のくぼみ ですので、相当量の血液が貯留したはずですので、固まりきらなかった血液が多少漏れてくることも 予想の範囲内です。
 腫れの大きさは全く気にすることはありません。問題は術後の痛みだけです。もし炎症を起こすべき 原因を残したまま手術を終えていたならば、今ごろとんでもない痛みが起こっています。その痛みが ない(わずか)ということは炎症を起こすべき原因がほぼ除去できたものと考えられます。従って、 今の腫れ=出血の多さと考えられます。

 この報告を聞いて私も一安心しております。抜糸は傷口の状態とは関係なく予定通り行って下さい。 数週間後の良い結果報告をお待ちしております。


返信:2003年6月11日 17:14
 河田先生へ 2002年3月19日「抜歯前のセレモニー?」をご相談し2002年11月15日に根管治療・掻爬・充填の 治療をして頂いたr.oです。
半年経ちました。1週間後の抜糸時は糸が歯肉に食い込んでしまっていた為縫合部分が1週間ほ ど痛み、3週間は患部の腫れと口を大きく動かすと引き攣りましたが痛みは無く1ヶ月後には気 にならない状態になりました。現在の状況は縫合した部分の肉がすこし攣る違和感がある程度 で濃胞部分も縫合部分も腫れや痛みは全くありません。最近のレントゲンを撮っていないので 病巣がどうなっているかは分かりませんが、骨が再生されるまで5・6年かかるとの事なのでそ れまで再発しない事を祈るばかりです。変色についてはまだ大丈夫な様子です。
 今後の治療として、痛みが起きたり歯が欠けた時などはどのような処置をしたら良いでしょ うか。宜しくお願い致します。

 他の怪しい歯の治療も終えました。あとは左下の親知らずの抜歯を時期を見て行おうと思っ ています。右下親知らずでかなり辛い目にあっているのであまり気が進まないのが本音です。 これからは定期的なスケーリングを心がけたいと思いクリーニングをきちんとしてくれる病院 を探しているところです。なかなか見つかりません。

回答:
 骨の完全再生には1年以上かかりますが、もうそろそろレントゲンで比較してみれば判る時期 です。今後痛みがあれば根管治療のやり直しということになりますが、6か月経って大丈夫と いうことは治癒の方向に向かっているものと判断します。  歯が欠けたとき…それは欠けかたとその時の根尖病巣の状態によりますので今は何とも言えま せん。そのままレジンを詰め直すか、さし歯にするかだとは思いますが。それよりも、定期的な スケーリング、小山先生ところはダメですか?


返信:2004年4月7日 12:51
 2002年3月19日INDEX「抜歯前のセレモニー?」のr.oです。
昨年2003年10月に左下親知らずを抜歯した際、術後約1年経った右上側切歯のレントゲン撮影を したところ、あの大きな病巣が綺麗に消えていました。
\(^0^)/河田先生をはじめ衛生士の皆さん、本当に感謝しております。ありがとうございまし た。
その治療の時、表の詰め物部分が変色していて差歯にする話も出ましたが、詰め替える処置を して頂きました。そして裏側の詰め物が仮の物?だったようで詰め直しました。現在は痛みも なく変色も気にならない状態です。弱くなっている前歯に負担を掛けないよう日頃から気を 付けて過ごすようにしています。

この先、この歯の進行が気になりますが、差歯にするタイミングはどのような状況になった 時だと知識として頭に入れておけば良いでしょうか。宜しくお願い致します。今週末私の両 親が姫路に旅行に行きます。私は歯の治療で観光どころではなくとんぼ返りでしたが、今度 はゆっくり観光をしに行きたいと思っています。

回答:
 経過が良いようなので安心しました。大学病院の歯根端切除騒ぎは何だったんだろうって 感じですね。さし歯にするタイミングって、必然に迫られた時です。つまり、詰めるだけでは 回復不可能な歯冠部分の破折とかむし歯。それと、変色が余りにも醜くなったとき。

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