日付、時間:2002年3月26日 15:12
氏名: T.A
所在都道府県: 愛知
職 業: 医師
年 齢: 44歳
性別: male
質問:
はじめまして、44才の消化器内科医です。
3年前、歯髄炎の診断でで勤務先の口腔外科で右上額の第一大臼歯の根管治療をしましたが、
最近歯肉の腫脹と痛みで再診し、かなり重い歯周病との事で一ヵ月前に外科的治療をしまし
た。
その際上顎洞に直径2、3ミリの穿孔がおきてしまいました。歯そのものは動揺もなく抜歯
せず様子を見ていますが、このまま塞がらないようなら抜歯の後有茎弁移植にて穿孔部を塞
ぐ必要があると言われました。
穿孔自体は仕方ないと思っていますが、抜歯せずに自然治癒しないのでしょうか。また、
抜歯したとしても縫合するだけではダメなのでしょうか。組織修復材を使うとか色々方法が
あるように思いますが。歯科の事は何となく突っ込んで聞きづらいので宜しくお願いします。
不勉強で用語に間違えがあるかも知れません。
感想:
非常に勉強になるホ-ムペ-ジだと思いますが、全く知識のない人にはやや難しい表現も
あります。また先生ほどのレベルの歯科医が周辺にいるとは限らないので(いてもわから
ない)かえって現在の治療に不安を持つ事も多いのではと思います。
個人的には今後も勝手に応援させていただきます。
一般の方からすれば、医科も歯科も同じように見えるかもしれませんが、歴史的な経緯も
あって双方に不可侵条約みたいなものが存在するような気がします。ムシ歯の治療に限って
は生体の治癒能力の範囲外であるために医学の常識とは異なりますが、それ以降の根管治療
や歯周疾患に関しては医学の知識がそのまま通用する分野だと認識しております。従って、
私の申し上げる回答に対して医学常識から外れることがあればご指摘いただきたいと思いま
す。
年齢的に歯周疾患がある程度進行しているであろうことは想定されます。その件に関しま
しては是非徹底した歯石除去と、疾患コントロールとしての歯石除去を継続していただきた
いと思います。しかし、余程特殊な事情が無い限り歯周疾患の外科的手術をする程の状況は
考えられませんし、3年前の治療経歴からしても原因は根管治療の不備にあったものと推測
されます。従って再度の根管治療だけが治癒に導く最も適切な処置であったと言えます。
解剖学的な位置関係から外科処置により穿孔があっても仕方のないことですが、その処置
によって本当に原因が除去できたのであれば穿孔部分は速やかに回復するはずです。術後の
予後が思わしくないということは、すなわち本当の原因が除去されていないことを意味しま
す。私の推測では根管内に貯留した汚物こそが原因という立場ですから、外科的処置によっ
て原因が排除されなかったことは当然の成り行きと診ます。
さて今後の処置については、外科処置による歯根先端部分の破壊に懸念はありますが、今
からでも根管治療による根管内汚物の除去と死腔閉鎖(根管充填)だけが唯一の蘇生手段だ
と確信いたします。それなくして自然治癒は(わずかな例外を除いて)見込めません。
いよいよ抜歯になった場合の話ですが、炎症の原因が歯及び根管内の汚物であった限り
、抜歯すれば原因が確実に排除されるわけですから生体の治癒能力によってほぼ確実に穿孔
部分を含めて閉鎖・治癒するはずです。人工骨移植とか造骨材などの使用はかえって異物と
なり回復を阻害する可能性があると考えます。
有茎弁移植は通常の抜歯後に閉鎖しなかった時の対処でしょ。抜歯と同時の歯肉移植(有茎
弁移植)を行うとすれば、お医者さんに対する過度な気遣いからだと思います。抜髄してダ
メ、外科処置(おそらく歯根端切除術)もダメ、抜歯してもダメ
なら立場がないですもんね。
“骨と骨に囲まれた場所”は基本的に必ず骨で満たされます。例外は、骨と骨の間隙が余
りにも広い場合です。そのような場合に閉鎖のための再手術や骨移植も有用ですが、お伺い
した状況ではまず不要と思われます。
自分が行った根管治療に不備があったために炎症を起こしたとは言い難いので歯周疾患。
再度根管治療をしても技術的に回復させる見込みがないので外科的処置。そこまでしても
ダメだから抜歯。という図式……言い過ぎましたか _(^^;)ゞイヤー
医科と歯科との一番の相違は、ヤブ医者が診ても自然治癒力により治る病気は治るし、
名医が診ても治らない病気は治らない事が多いのに対し、ヤブ歯科医が間違った治療をし
て自然に良くなる事は少ない、という事ではないでしょうか。
ヤブ医者の端くれとしては、治る病気を悪くさせるさせる事だけは避けたいとは思って
いますが。
市内に高校の同級生の歯科医が4人います(たぶん全てヤブ)ので先生のホ-ムペ-ジ
で勉強するよう連絡します。
また御相談させていただく事があるかも知れませんが宜しくお願い致します。あり
がとうございました。