別個の問題として、親知らずが炎症を起こす可能性を判断。
完全に埋伏した親知らず

日付、時間:2002年5月22日 23:33   氏名:   T.Y  
所在都道府県: 神奈川   職 業: 会社員   年 齢: 27歳      性別: male  

質問:
 初めまして。検索ページで偶然こちらのページを発見し、丁度悩みを抱えていましたので 質問させて頂く次第です。素人ですので、言葉使いに間違えがありましたらお詫び致します。
 つい数日前、左下7番(3ヶ月ほど前に抜髄しクラウンを被せています)やや奥の頬側歯茎が腫れ、 口の開け閉めに多少痛みを覚え、すぐにかかりつけの歯科医に行きました。腫れ自体は治療して頂 いた日の夜にはおさまったのですが、その原因が隣の親知らずのせいではないかとコメントされま した。以前7番の治療時から指摘されていましたが、レントゲンでは8番はほぼ完全埋伏、さらにそ の下に9番?が水平の8番を押し上げるような形で上向きに存在しており、珍しい状態だそうです。 しかし、腫れの治療の際に8番が触知されたようで、このままでは菌が繁殖して悪化するので 口腔外科で2本とも抜歯してもらった方が良いとのことでした。
私としては、8番はともかく、この深い位置にある9番を抜くというのが不安でなりません(調べた 限り、抜歯の際に神経や血管を痛める可能性もあるとのことで・・・)。 この2本の歯を抜くのは時間の問題なのか、抜かずに済む方法があるのか、ご意見を頂けると幸い に存じます。どうぞ宜しくお願いいたします。

感想:
数多くの情報が掲載されており、大変参考になります。これからも拝見させて頂きます。

回答
 ポイントは、“完全に埋伏した親知らず ”が本当に埋伏状態なのか、それとも埋伏したように 見えても一部露出・もしくは露出したも同然の状態なのかということです。本当に完全埋伏であれ ば通常炎症を起こすことは無く、抜歯も不要です。しかし、歯肉に覆われていても骨から露出して いる状態であれば、今の炎症の原因である可能性もありますし、例えそうでないにしても将来炎症 を起こす可能性は十分ありますのでこの際抜歯しておいた方が懸命です。“腫れの治療の際に8番 が触知されたよう”とのことですので状況としては抜歯が必要だと思います。
 その下に控えた過剰歯の処遇も微妙です。あとから抜くとなると大量の骨を削ることになり大変 な手術になりますので一緒に抜けるものであれば抜いておいた方が良いとも言えますし、近くを 走る下顎神経に近いとか非常に困難だとすればそーとしておいても支障はないという判断も成立 します。担当される先生も相当なプレッシャーのかかる状況ですので、最終的には親知らずを抜い たあとの状況をみてその場で判断することになるでしょう。但しその前にあらかじめ神経損傷 などのリスクを話しておかなければ術中の決定が出来ません。担当する方も相当苦しい立場にある ことを理解して欲しいと思います。

 一方で、炎症の原因が本当に親知らずなのかという件には多少疑問が残ります。下顎7番の抜髄 は結構難しい位置ですので、根管治療の不備があっても不思議ではありません。抜髄後3か月で 腫れたとなると、レントゲンでも根管治療の不備が確認できる状態かと推測いたします。レントゲン 的に一応満足な根管治療であれば、将来はともかく今回の腫れの原因ではないと判断することも 可能でしょう。

 しかし、これらの判断は素人では絶対無理ですし、例え専門家が実際に診たとしても判断に苦慮 するケースだと思います。従って別個の問題として、親知らずが炎症を起こす可能性(抜歯の必然 性)を判断して、必然性があるとするならば原因を消去する意味で抜歯すべきだと思います。


返信:2002年5月29日 21:05
去る5/22に、左下親知らずとその下の過剰歯について質問させていただいた者です。その際はすぐ にお返事を頂き、誠にありがとうございました。その後進展がありましたので、ご連絡させて頂き ます。
歯茎の腫れが生じてから一週間たちましたが、舌でさわって多少違和感を感じる程度にまで腫れは 収まりました。それで、かかりつけの歯科医から紹介された歯科大学の口腔外科を本日受診してま いりました。

レントゲンを撮り、実際に問題の部位を診てもらいましたが、以下のような見立てになりました。
・歯茎の腫れはやはり親知らずが原因であろう。
・従って、8番は抜くことを勧める。
・9番は抜きたくないのなら抜かないが、そこが歯周ポケットとなり炎症を起こす可能性は十分にある。
・8、9番を抜くのであれば、局所麻酔では痛みを抑えきれないと思われ、結果的に医師・患者ともに 負担となるので全身麻酔を勧める。
・9番が下顎管を跨いだような形なので、抜く際に力がかかって麻痺が残る可能性が高い(麻痺すると 思っていたほうがよい)。
・麻痺は回復するが、時間には個人差がある。
・抜いた後、一週間くらいは比較的強い腫れや痛みがあるだろう。
以上の説明から、本日の診察の段階では「全身麻酔を行い、8、9番とも抜歯する」という意思を担当医 に伝えました。全身麻酔の場合、2泊3日になるとのことですので、仕事のスケジュールを勘案して、7月 あたりに抜こうと考えています(担当医からは、6月中に腫れる可能性もありますよ、と言われましたの で可能ならばもっと早く抜くつもりです)。

麻痺の点が気がかりですが、次第に回復するとのことですのでここは前向きに考えて治療に望もうと思っ ております。ご連絡は以上ですが、河田先生のホームページを拝見し、さらにご意見を頂けたことで、 歯の治療について「医師任せではなく、自分で考える」ことができるようになりました。
お忙しいことは重々承知しておりますが、今回ご連絡した内容につきまして先生のご意見を頂けると 幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

回答:
 当初の炎症が親知らずのせいかどうかは別にして、親知らずの抜歯には全く異論はございません。 過剰歯の抜歯に備えて全身麻酔で行うことも万全の備えかなと思います。問題は過剰歯の処遇です。
 過剰歯抜歯に際して、神経麻痺に最大限の配慮は為されるであろうと推測いたします。本当に 危ないと思ったら抜歯を中断するくらいの配慮もあると思います。それでも麻痺の可能性は否定でき ませんので、術前の説明としては当然の慎重さが伺われます。

 過剰歯はおそらく残したままでも何ら悪影響を及ぼさないとは思います。しかし、過剰歯を残した 場合、元々の炎症が治まらなければ原因は過剰歯の存在に疑いが集中してしまいます。そうなってか ら改めて過剰歯を抜くよりはついでに抜歯しておいた方が得策だと思います。
 手術の時期については、「腫れれば抗生物質等で抑えれば終い」程度の認識ですが、そこまで危険 にさらす処置を決断する程、抜髄した歯の根管治療に自信があるのかなぁと感心いたします。手術の 前に根管治療の状態を確かめる必要があるのではないでしょうか。


返信:2002年7月30日 19:56
 河田先生 02/5/22に左下親知らずと、その下にある過剰歯のことで質問させて頂いたT.Y.です。 その際は色々なご助言を頂き、ありがとうございました。

その後ですが、口腔外科の先生に「左下7番の抜髄は歯茎の炎症の原因ではないだろう」との回答を 得て、7/5に全身麻酔にて8,9番の抜歯を行いました。心配していた麻痺は起こらず、一週間後の抜糸 の際も「順調に回復している」とのことで、口腔外科から近くの歯医者さんへ再びバトンタッチとな りました。ところが、抜糸からまた一週間ほど経過した時点で、何となく歯茎が腫れた感じがし始め、 患部周辺から違和感のある液体が出ていることに気付きました。そして7/23に6番頬側歯茎に小さ な穴が開き、膿のようなものが出始めましたのであわてて歯医者に行きました。
 6,7番のレントゲンを撮ったのですが、「特に怪しい影は見られない」とのことで、その日はとりあ えず消毒と薬液の注入をされました(ちなみに左下5-7番は数ヶ月前に抜髄しています)。それから2 日後、6,7頬側歯茎が少し腫れ、膿は穴ではなく腫れの周辺から出ているように変化したと感じた時点 でまた歯医者さんへ行くと、「炎症の原因は抜歯した所や縫合部で細菌が繁殖したせいだろう」 とのことで、消毒と薬液注入でしばらく様子を見ることになりました。

また別の問題として、抜歯後から6番あたりの歯が冷たいものがしみる感覚があり、それと炎症の原 因が5-7番の抜髄のせいなのか抜歯のせいなのかわからず不安を感じています(レントゲンからは抜髄 の影響である可能性は低そうでしたが)。
抜歯後の炎症で、歯茎に穴が空くほど膿が出てくることはあるのでしょうか?
また、口の中は朝と寝る前に歯磨き、毎食後イソジンでうがいをしていますが、この程度では清掃が 不足なのでしょうか?
お忙しい中、質問ばかりで申し訳ありませんが、ご意見を頂けると幸いです。どうか宜しくお願いいた します。

感想:
いつも質問に対してすぐにお返事を下さり、大変助かっております。

回答:
 まずは、親知らず及び過剰歯が神経の損傷なしに無事抜歯されたことを心よりお慶びもうしあげます。 常に炎症の原因と疑われる“厄介者”が無事消去されたことは、最大の収穫と位置付けできる成果だと 思います。

 最初の時点に振り返ってもう一度推察してみると、最も疑われる7番の抜髄自体には複数の歯科医 が認めるように問題がない・もしくは少ないものと考えられます。その事実に基づいて、“それでも 存在する炎症”の原因として白羽の矢がたったのは智歯および過剰歯だったような経緯ですが、どう もそれも白だったみたいですね。“炎症の原因は抜歯した所や縫合部で細菌が繁殖したせいだろう” は全く成立しない疑いです。そこまで慎重に抜歯して、麻痺も起こさない手術に落ち度があると疑う ことは手術された医師に失礼な濡れ衣だと思います。
 “6番頬側歯茎に小さな穴が開き”ということですので、6番の状況を最も疑うべきだと思います。 “特に怪しい影は見られない”が最も盲点になっているように思います。6番の問診…というか… 既往歴をもっと見直す必要を感じます。過去に深い虫歯治療の経験はありませんか? 過去に冷たい モノや熱いモノがしみた経験はありませんか? 打撲や強い外傷を経験した記憶はありませんか?

 そういった経歴を手繰れば、レントゲンに写らない歯髄壊疽が見えてくることもあるように思いま すがいかがでしょうか?
ちなみに、清掃不足の懸念は全く論外です。

 

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