患者さんの理解とか要望というものが不可欠。
抜髄後の補綴

日付、時間:2002年7月9日 4:39     氏名:  s.s   
所在都道府県: 兵庫   職 業: 主婦   年 齢: 32歳      性別: female  

質問:
 毎回、質問させていただき、申し訳ございません。重複している質問になるかと思うのですが、 もう一度教えて下さい。
 現在治療中の歯右4ですが、最初に虫歯を削って、「型をとります」と言われてました。そして、 本日で根の治療が終了しました。そちらの方は現在痛みもありません。
終了後に「もう歯が薄くなっているので、このままだと折れてしまいます。土台を入れてかぶせま すので」と言われて、次の方の所に、治療に行かれてしまいました。一瞬、「えっ!差し歯?」っ て思い、暗い気分になったのですが、とりあえずその場は帰ってきました。その医院には主人も通 っていて、今は二人の子どもを連れて、主人と順番に診てもらっています。先に終わった私に、主 人が先生から、「今度歯を選ぶって聞いたよ」と言うので、これはやはり差し歯の事だと確信しま した。
 差し歯にするかしないかは、健康な歯の残存量にもよるのだと思いますが、初めに型を取ると言 われたことがありますので、まだ、中にレジンの詰め物でなんとかいけるのではないかと考えてい ます。先生のHPを拝見しておりますと、リスクはあるかもしれませんが、使えるところまで、使 った方がいいという気持ちが、ますますしてまいりました。
 この場合、先生に差し歯か、かぶせるか選択を聞かれた訳でもないのですが、自分の方から差し 歯より詰め物の方がいいと言って良いのでしょうか。それと、技術レベルに差はでるものでしょう か?

回答
 虫歯でもないのに強度な知覚過敏のために抜髄した歯のように、実質欠損が少ない場合にはレジ ン充填というケースもあります。虫歯があって、抜髄に至ったということはそれなりに実質欠損 が大きく、最低でも金属インレーか被せるという選択になります。
 インレーでの回復が可能な場合には「レジン充填でも」という発想も考えられなくはないと思い ますが、強度面での配慮からか基本的には保険での適応にはなっていないはずです。歯の大きな 大臼歯と異なり、残存歯質の極端な不足が予想される小臼歯で、あえて破折リスクの高いインレー やレジン充填を選択する場合、患者さんの理解とか要望というものが不可欠だと思います。 審美的にはレジン充填やインレーの方が優位であることは誰もが認めるところです。プロの選択 としては、破折リスクが高く経済的保証の少ない方法を極力排除する傾向があります。

 それらのことを十分ご理解の上、要望として提案されることは問題ないでしょう。それでもなお かつ、残存歯質が少なく無理と言われたらその意見に従うべきだと思います。


返信:2002年7月9日 12:00
いつも早いご回答をありがとうございます。
定期検診に行っておきながら、虫歯に中が、なっていたとは恥ずかしいかぎりです。私の場合、 レジン充填は無理なのかもしれませんね。インレーにした場合、もし破折したとしたら、破折 の仕方にもよるのでしょうが、それから、差し歯という選択は無理なのでしょうか?

河田先生は、私のような患者の場合、どちらを選択(リスクはあるけれど、インレー。安全を 見て差し歯)されているのでしょうか。
先生によって、基準が違うとは思うのです、たとえばもう一つ違う医院でも聞いてみるという のもよいのでしょうか。
それと初歩的な質問ですが、差し歯とクラウンは一緒でしょうか?
今までの自分の行いが悪いとは言え、歯科に行くたびに憂鬱になってまいりました。 これからのメンテナンス頑張らないといけませんね。 河田歯科医院が近ければ。と思う毎日です。

聞き忘れたことですが、保険がきかない方法だったとしても、できるだけ今の歯を残す方法と あるのでしょうか?
私の今の考えでは、
1 銀歯
2 保険のきかない白い歯
3 銀か何かをながしこんでもらう。
4 保険はきかないけれど、強度な物を流し込んでもらう。
5 土台もつくって強度なものにするが表面の残っている歯は最大限に使う。
4,5は実際にあるかどうかはわかりません。私の勝手な想像です。差し歯にするにあたっても、 できるだけ今の歯を残すということはできますか?
現在、前から見たところ歯は全面残ってます。回りだけが残っていて、中が空洞という感じに見 えます。

回答:
 無理してインレー修復をした場合、数か月で破折するものから10年くらい大丈夫なものまであ って予測は不可能です。破折した場合も99%は何らかの方法でクラウン装着できますので“賭け” としては比較的有利な賭けになります。それと非常に脱離し易いこと。そのことに対する認識が 患者さんに十分あれば、選択肢としてもっと活用したいと思っています。現実は患者さんの十分 な認識がありませんでクラウンに流れています。
 ドクターからの提案と患者さんからの提案では責任の所在が大きく違います。まずは一度相談 して、その時の説明を聞いてから次を考えて下さい。

 “さし歯”は歴史的な経緯から有名な言葉ですが、現実の歯科治療にはほとんど存在しません。 クラウンを装着するにあたって、残存歯質の量と強度によって、土台に様々な維持装置を用います。 その際、かつてのさし歯に似た形態からそうでないものまでありますが、何らかの形でさし歯に近 い形態の維持装置を多用しています。単純に言えば、神経をとった失活歯に被せるのがさし歯、生活 歯に被せるのがクラウンと考えても良さそうですが被せるものは同じ、中身の違いです。

 1つの方法で歯を長持ちさせることはあまり考えない方が良いと思います。所詮似たりよったり。 何事も起こらないことを願うより、何かあったらすぐに対応できる体制こそが全てに勝る治療方法 だと確信しております。
 今日の診療でもそのことを痛感しています。同じ様な年齢、同じ様な破壊程度、治療した人は 同じ。それでも5年しか保たない、15年何とか保った、15年ではビクともしないとメインテナンス 次第で大きく結果が分かれてしまいます。

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