日付、時間: 2002年9月18日 12:48
氏名: S・Y
所在都道府県: 神奈川
職 業: 主婦
年 齢: 46歳
性別: female
質問:
初めてお便りいたします。
20年前に上前歯5本を連結する形で、保険外で差し歯にしました(4321|1)。
神経は抜いてあります。
5年ほど前に、右@番の差し歯が欠けてしまい、補修をしてもらいました。その際に「連結してい
る差し歯を1本のみ切り取って、作り替えをしたらどうか」といわれましたが、年数はたっていて
も、差し歯の状態や、噛むという使い心地が大変に良く、連結を切る事による強度への不安もあり、
お断りしました。その後 何の不自由もなく使用していました。
今回、以前補修してもらった差し歯の部分が、取れてしまったので再度同じ医院に行きましたと
ころ、「年数もたっており、作り替えた方が良い。連結を切り離しても、強度に支障はない。保険
で十分でしょう」とのことで 作り替えに入りました。
・ | 初日(7/30)は、前の差し歯を切断し、土台の金属をはずし、型どりをして仮歯をいれました。 |
・ | 2回目の診療(8/14)で、仮歯をはずし、新しい土台を入れ、土台を入れた状態で型取りをし 再度、仮歯を入れました(この時の仮歯外しも大変でした。幼少時よりの歯科通いで冠などを外す 器具は何度も経験していますが、元の歯が心配になる程の 器具の使い方でした)。 |
・ | 3回目の診療(8/28)で仮歯を外す際に、また新卒の歯科助手さんにガンガンとやられてたの ですが、仮歯が外れた際に 何か問題が生じたようで歯科助手の方が慌てて先輩に報告に行き、治 療中の先生がすぐにきて「どの器具ではずしたのか」 などと確認をしていました。仮歯と共に金属 の土台も外れたようです。その日は、 本歯が入ってお終いと思っていたところ、歯に土台の金属を はめるところからの治療となり、時間がかかりました。そして金属を差し込む前に 歯の中を器具で カリカリと削りとっていた時に、今までに無い歯に響く感じが生じていました。 |
・ | ここからがご相談なのですが、3回目の治療に入るまで、2回の仮歯の段階では歯裏の 凸凹に違和感はあったものの、噛むということに 何の差し支えも不安もありませんでした。です が、本歯を入れた当日から下の歯が、新しい差し歯に当たると響き、怖くて前歯で固いものを噛む ことができませんでした(差し歯も本来の左@に比べ1mm程長いものでした)。 |
・ | 9/4)に新しい差し歯が、グラグラと動くことに気づき、予約外で受診。診断では、歯が炎症 を起こしているからであり、この程度の動揺では歯の当たりの調節で大丈夫とのことで、右@の差 し歯を削って調節をしました。しかし、調節後も前歯に触れると鈍く響くようになり、思うように 白米さえも奥歯で噛めなくなってしまいました。 |
・ | (9/6)の受診時に、先生より「差し歯を外して、仮歯の状態に戻して、左上奥歯2本の治療を したい」とのお話があり、仮歯に戻し現在前歯を使用しないことで安静を保つようにしておりま す。また、先生からは、元の歯に1.5mmほどの軽いひびが入っているので、それが根本まで入っ てしまったら、抜くほかないとも言われました。 |
・ | (9/13)日に左上奥歯2本の銀のブリッヂを作り替え、今日現在左奥歯で食事はできるように はなりました。問題の前歯は動揺はおさまりつつあるようです。自発痛はありませんが、接触痛は あります。 |
・ | 9/10に歯の具合を心配して電話があり、その際に「確かに黒い筋となっている1.5mm程のヒビは 以前から入っていたものでしょうが、2度の仮歯までは問題はなかったので2度目に仮歯を外す時 にヒビが根本まで入ったのではと考えています」 と伝えますと、「すいません」と仰って下さい ました。以前から、説明も良くして下さいますし、誠意あるお人柄の先生です。 |
現在の私の歯の残存状況を、(抜歯や完全埋状歯を上顎切開で抜いたりして番号があっている
か分かりませんが、見た目でお知らせします)
上顎・・・76(bridge)5銀冠C〜|@差し歯2B〜D(bridge)(右)となってます。
下顎・・・6銀冠5白冠4詰321|123欠欠欠(義歯)7銀冠(右)
また、3年前に他の医院で右Cを縦に破折した為抜歯し、同時に下顎左Dを作りかえたのですが、
左Dの白冠が低すぎた為、低位咬合となっております。河田先生。どうぞよろしくお願いいたしま
す。長文となりましたことお許し下さい。
感想:
Q&Aは膨大でまだ全部見終わっておりません。診療日記で仮歯は強く接着しないものだと知り
ました。残念です。また、リスクを伴うものだとも知りました。抜歯となった際にはブリッヂの件
でまたご相談しても良いでしょうか?
先生のHPに出会えて良かったです。私の歯は取り返しがつかなくとも、子どもの歯が同じ道を辿
らないよう、歯周疾患とムシ歯のコントロールを行っていこうと思いました。
神経をとって20年も経過すると、歯は相当もろくなっています。神経をとった歯の平均寿命に関する
詳しいデータを知りませんが、おそらく30年以内だと思います。その意味から、割れるべくして割れた
といえるかも知れません。破折した位置がどの程度なのかによって対処も異なりますが、少なくとも
永久的に機能させることは不可能だろうと想像いたします。
最終的には、問題の歯を抜歯になると思います。そして残ったさし歯を一旦全部はずしてブリッジ
ということになるでしょう。しかしその前に、提案の通り、樹脂を流し込んで“使える所まで使う”と
いう選択は評価できます。確かに根尖までヒビが拡大すれば抜歯しか選択の余地はありません。しかし、
負担を減らすという目的で、小臼歯部分の咬合調整を行う予定みたいですが“割れるものは割れる”と
いうか、姑息的な対処を行っても結果にはそれ程影響しないと思います。それよりも無用な咬合調整が
あとあと尾を引く可能性も生じてしまいますので余り深く追求しない方が良いのではないでしょうか。
子供さんのことは無論のことですが、まだまだ臼歯部は健在なようですので、これからの手入れが
将来を大きく左右します。ダメな歯に固執しすぎて、生涯使える可能性のある歯をおろそかにしない
でくださいね。
もし、上右@番が抜歯となった場合、上左@番の差し歯の連結を離してその差し歯と上右A番を
削ってブリッジにするという話が以前にありました。(正直差し歯を造り替えるのか、そのまま削
って被せるのか記憶は曖昧ですが)上左Aと@の連結を切ること、差し歯はいくらでも削れるとの
説明は確かにありました。
河田先生のHPを拝見すると、「差し歯には咬合圧その他を計算した設計が最重要」とあります。
身をもって深く頷く次第です。また先生からは前回「残ったさし歯を一旦全部はずしてブリッジと
いうことになる。」とお答えを頂いています。上記の方法では前歯2本を失う結果になるのでは不
安を抱いています。今現在、左上奥歯を作り直しましたが前歯は仮歯のままで、右下の義歯の作成
に入っています。上右@の動揺は収まりつつありますが、10日程前から、上左@も咬合圧によって
若干動くようになってきました。差し歯等について学ばせていただくと、差し歯の設計力というか
力量に、お人柄は良くても疑問が出てまいりました。私は転院した方がよろしいでしょうか?
明日の受診日に今後前歯がどうなるか今一度尋ねた上で来週の火・水に再度ご相談するかもしれ
ませんが、転院を検討すべきかどうか河田先生のご判断をお聞かせ下さい。お願いいたします。
回答:
今回の破折?は起こるべきして起こった不幸な結果だと認識しています。20年も前に抜髄した前歯
はできるだけ連結して負担緩和するべきだと思いますが、連結には1本でも脱離や二次カリエスが生
じた場合の対処の問題があります。
問題の歯に関する咬合圧に関しては、咬合圧以前に破折という欠陥がありますので当初から無理を
承知の設計です。「できる限りの最善を尽くした」という善意の範疇ですので、そのことに懐疑の目
は禁物です。お伺いした範囲では転院を考える時期ではないと判断いたします。