日付、時間:2002年10月30日 0:37
氏名: MY
所在都道府県: 山口
職 業: 主婦
年 齢: 33歳
性別: female
質問:
河田先生、こんばんわ。たびたび質問しては、迅速かつ丁寧なご回答ありがとうございます。
また、質問があります。
◆根尖病巣による歯槽骨の破壊は回復するというのをHP内で見かけますが「破壊を止められる」
ではなく「回復」するんですか?
◆只今、通院中の医院ですがかれこれ10ヶ月ぐらい経ちます。最初にいくつかの治療をして
もらって全体をブロックに分けてスケーリングをして、他の治療をしています。が前回のスケ
ーリング以来、ぜんぜん歯石を取っていないんですが大丈夫なんでしょうか。また年齢的にも
ルートプレーニングをしたほうが良いかと思うんですが、歯周病と診断されないとやってもら
えないようで・・。せめて治療前に歯石を取ってもらいたいのですが、こちらからお願いすれ
ばいつでも取ってくれるものなんですか?毎回はだめなんですか?
非常に良い質問です。全国の歯医者さんにも知っていただきたい重要な内容を含んでいます。
根尖病巣による歯槽骨の破壊は再生します。
勿論治療が完璧にできた場合であって、全ての症例が回復(=歯槽骨の再生)が行われるとは
限りません。ちなみに全国レベルでも50%程度、河田歯科医院でも90%の成功率だと思って
下さい。
それは、根尖病巣の原因が根管内に貯留した汚物に対する免疫反応が炎症となって歯槽骨を
破壊しているということがキーポイントです。炎症の原因である根管内汚物を完全に除去(排除)
して、そこに二度と汚物が貯留しないように生体親和性の良い材質(炎症を起こさない材質)で
完全封鎖すれば、炎症が消失するだけではなく歯槽骨も再生します。
同じことが鮮明に分かる例としては、抜歯すればそこにあった骨破壊部分や新たにできた抜歯
窩も全て再生します。原因を歯丸ごと除去した結果です。ポイントは、歯を抜かずに如何に原因
だけを効率よく除去するかの一点に尽きます。
一方歯槽膿漏によって破壊された歯槽骨は、現状、絶対(1mm程度を除いて)再生しません。
これは炎症を起こすべき原因が除去されていないという証拠だと思いませんか。プラークや歯石
を除去して、なおかつ歯根表面のセメント質まで取り除いても再生はありません。ということは
セメント質の下、つまり象牙質に何か炎症を起こすべき原因が残っていると考えれば解決の方法
も発見されると予測しています。
歯槽骨再生を離れて歯槽膿漏の原因、つまり炎症を起こすべき原因ですね。象牙質まで全て除去
すれば完璧ですがそれでは歯がなくなってしまいます。せめて象牙質を除去しないで、その原因
だけが排除できる方法が開発されれば解決するはずですが、それがない現状でできることといえば
プラークの除去と歯石の除去です。それを完璧に、また継続的に排除し続けることで更なる破壊を
阻止することが可能です。現状維持ということです。
ところが、今の歯科界の認識は細菌です。炎症の原因は細菌であって、プラークや歯石はその
生息環境を提供しているに過ぎないというものです。従ってプラークコントロールや歯石除去は
有効ではあるがそれ程重要ではないという認識ですから、保険制度では頻繁な歯石除去は担保さ
れていません。それが診療姿勢に現れているのが現状でしょう。
この議論をいくらしても無駄ですが、患者さんの方から申し出られれば断る理由も少ない(歯
が磨り減るとか何とかは言われるかも)ので応じてくれる歯科医も多いと思います。