日付、時間:2002年10月30日 13:25
氏名: 前田
所在都道府県: 福島
職 業: 会社員
年 齢: 24歳
性別: female
質問:
以前より度々質問させて頂いてる者です。今回は前歯の補綴について教えて下さい。
前アドバイス頂いたように『積極的な治療』はしていないのですが右上1((無髄の差し歯)かなり
動揺あり・ポケット12ミリ)への処置だけは行う事にしました。
現状は、単独の差し歯で、横の歯とスーパーボンドで接着しています。それを前4本連結固定にす
るつもりなのですが、その右上1はインプラントにしたいと思っています。要は、インプラントと
差し歯の併用はできるのでしょうか?
そういう事は、どうなんでしょうか?
よい方法なのでしょうか?
担当医はブリッジを考えていたようで、初めは否定的な説明をされてましたがその途中で見解が
変わってきて、普通の人よりは全体的に動揺があるので、連結してもねじれ等が生じやすいのを
『一本インプラントをいれる事でしっかりした柱ができ、動きが少なくなる』かも。(あくまでも、「
かも」ですが・・)という風に変わられました。
河田先生はこのような方法をどう思われますか?
また、行うとしたら、先にインプラントやってしまい、二次オペまで終わった段階で他の3本に
も手を加えるというようになるんでしょうか?
それとも同時進行で、一次オペが終了した段階でブリッジをかけて、二次オペを待つという事はでき
るんでしょうか?
相談していると、なにやら保険の問題等もあるようで・・「いい方法を考えよう」とはっきりした答
えが得られないままになっています。私としては、インプラント代プラス差し歯分の金額と大きな金
額なってくるのでしっかりと検討したいのですが・・。
毎回で本当に申し訳ないですが教えて頂けないでしょうか。宜しくお願いします。
感想:
いつも本当にありがとうございます。
今回、いよいよ(?)とうとう(?)補綴を行う事になり、今までになくお金が掛かってくるのですが、
それを選択するのも自分自身なので十分考えたいのですが、やはり診察時に先生に細かな所までア
レコレ聞く事はなかなかできません。
この場の存在を、本当に頼りにしています。感謝しております。
ないしょ話や裏話が飛び交いそうな相談で、ちょっと緊張感がはしります。
まずは、右上1の原因をつきとめて最大限保存の方向で考えて欲しいとは思いますが、インプラント
となった場合の対処ですね。
希望としては、インプラントとなった1本は保険外の取り扱いとして仕方ないとして、強度のために
連結した周囲の歯の取り扱いをどうするかということだと思います。原則論として、今の優しい日本の
保険制度の下では、インプラントに連結された全ての歯は例え保険と全く同じ手法・材質であっても
全てが保険外扱いとなって贅沢品としての高率の税金を含めた高額の治療を支払う仕組みになっていま
す。
強度のことを無視して周囲との連結をあきらめて単独で補綴を行えば、周囲は保険適応でインプラン
ト部分だけが保険外扱いとなります。こんなお役所の都合に合わせて医療の処置を決定することには
大きな抵抗を感じます。治療方針はあくまでも医学的な必然性に応じて決定すべきですよね。明らか
に医師の裁量権を侵害する、ゆゆしき問題だと思います。
心情論はさておいて、24歳で1番欠損という状況を冷静に分析してみましょう。周囲の歯がさし歯
の適応症だから連結が望ましいという判断かもしれませんが、周囲および咬合を支える臼歯部もしっか
りしているのではないでしょうか。周囲が健全で、1本欠損であれば、周囲の歯を犠牲にしたBridgeを
避けるために1本だけの単独インプラントを推奨いたします。単独よりも複数、単独よりも周囲の歯
との連結が可能な条件であれば有力な選択肢ではありますが、周囲の状況がそれを許さない状況であれ
ば叶わぬ理想論になりますし、それをあえて行うことはマイナスメリットとの比較が必要です。
一方で、強度の異なるインプラントと天然歯との連結を嫌う考え方もあります。私も原則としては
強度の異なるインプラントと天然歯との連結を嫌います。条件次第では連結しなくては成り立たない
場合もありますので、苦渋の選択として選択肢の末席に位置する選択肢です。
ご質問のケースでは、メリット・デメリットを相殺して保険の原則通り保険のさし歯と単独の
インプラントを選択されてはいかがでしょうか。インプラントの可否や長持ちは、連結による影響
よりも、インプラント体に対する順応力とあとあとのメインテナンスの影響の方がはるかに大きな
要因だと思います。