理論的に正しい方法でポイントを捕らえて治療。
根管治療(オーストラリア)

日付、時間:2002年12月18日 19:25  氏名:  HT   
所在都道府県: オセアニア   職 業: その他   年 齢: 44歳      性別: female  

根管治療 質問:
 オーストラリア在住10数年になります。歯に深刻な問題を抱えており、先生のアドバ イス(都合がつけば治療も)をいただきたく、メールを差し上げています。

子供の頃から歯があまり丈夫でなく(手入れも悪かったのでしょうが)、しばしば虫 歯を患ってきたのですが、それでもこちらに来るまでは、奥歯の何本かを抜髄した程 度で、ほとんどの歯が生き残っていました。ところがオーストラリアに来てから急激 に虫歯が進行し(空気が乾燥していて口の中が乾きやすいせいではないかと思います)、 数年前に臼歯のほとんど(計14,5本)を抜髄しクラウンをかぶせる治療を受けました (こちらでの治療費の見積り額は日本円にして約200万円、当時定職についていなかっ た私に払えるわけがなく、日本に帰って治療を受けました)。
その後、治療を受けた歯のうち一本に根尖病巣が見つかり、修復不可能と言われ抜歯し ましたが、残りの歯の経過は順調でした。

現在抱えている問題は次のとおりです。約2か月前に左上6番の歯茎が腫れてきて、つ い先日パノラマx線検査を受けました。その結果、以下のような広範な問題を指摘さ れ大きなショックを受けています。
左上6番、右上8番: クラウンの下で歯の侵食がひどく修復困難、抜歯するしかない。
左上7、8番、右上6番: 根尖病巣の形跡あり、専門医による根管治療または抜歯が必要。
右上5番、左上4、5番、左下5番、右下4、5、6番: 不適切な根管治療。今のところ 無症状だが、いつ感染してもおかしくない。根管治療のやり直しが必要。

 今も歯茎が腫れている左上6番の歯を含めて、歯自体は全く無症状ですが極端に体が 疲れやすく、内科医から歯の病巣が影響している可能性が高いので、なるべく早く治 療するように言われました。
金銭的な面もありますが(上の治療を全部こちらでやると最低200万円はかかるでしょう) 、私はこちらの歯科医の倫理観に強い反発を感じており(注1)、できれば治療は日本で、 それもきちんとした根管治療をしてもらえる歯科医院で受けたいと思います(先生のHPや 他のHPを見て正しい根管治療の重要さを痛感しましたから)。とはいっても実際にそのよ うな歯科医院をどうやって探したらよいのか苦慮しながらインターネット検索をしていて、 先生のHPにたどり着いたしだいです。

さて、実際に先生にみていただけると仮定して、例えば次のような日程で治療可能でしょ うか(日本での滞在予定地から姫路まではかなり距離がありますが、新幹線で日帰り通院 可能です)。
(1)来年の早い時期に短期間(7―10日程度)帰国し、診断、修復不可能な歯の抜 歯、(もし可能なら)一部の歯の根管治療。
(2)来年中ごろ、3―4週間程度帰国し、残りの歯の根管治療と修復。

 最後にもう一つ質問です。他のいくつかのHPで、健康保険で綿密な根管治療を行うのは 極めて難しいという指摘がなされていますが、原則として保険内治療という方針でいらっ しゃる先生はどのようにお考えでしょうか。やはり自費治療の方が、完璧な根管治療が期 待できるのでしょうか(私は外観より歯全体の寿命と健康にこだわりたいので、もし必要 なら、補綴物ではなく根管治療に私費を投じたいと思っています)。以上、お忙しいとこ ろ恐れ入りますがご回答いただければ幸いです。

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(注1) 最初にかかった歯科医は、私に定職がなく、高額な治療費の支払いは不可 能であることをことを知っていながら、何度たずねても最後の最後まで治療費の概算 を教えず、数人の専門医の間をたらいまわし(もちろんそのつど診察料がかかりま す)しただけで、ひどく痛んでいる歯の応急処置すらしてくれませんでした。先生の HPの掲示板でも議論されているように、こちらの技術水準自体は高いのかもしれませ んが、経済的に恵まれた一握りの患者だけを相手に殿様商売をしている彼らが、「日 本の歯科医療はひどい」などと批判する傲慢さを私は許せません。よほどの経済力が ない限り、もし何本もの歯がひどい虫歯になったら抜いてほったらかしておくしかな いという状況を、彼らはなんと考えているのでしょうか?(ひとりの歯科医は、「奥 歯はどうせ見えないからそれで問題ない」という暴言を吐きました。)

感想:
 広範にわたる有益な情報を満載したすばらしいHPに感心いたしました。

回答
 もしあなたが私の医院に通院されるということになれば、オーストラリアからの通院は2人目 になります。その一人目は今ごろ飛行機の中で眠っていることでしょう。奇遇なことに最近オー ストラリアの知人が急激に増えて、その付き合いもあって今度の正月はオーストラリアに3日間 だけ遊びに行くことになっています。
 乾燥云々は直接は関係ないでしょう。慣れない気候に体力を消耗して、表すべき症状が急激に 噴出しただけだと解釈します。余談かもしれませんが、私の知っているオーストラリア人は全て 日本人より数段健康な歯を持ち合わせていらっしゃいます。「オーストラリア人は歯がいいね」 といったら、「アメリカ人には負けます」といって笑っていらっしゃいました。歯科検診をアメ リカ人は、年に2回、オーストラリア人はそれよりも少ない1回くらい、痛くなるまで歯医者に 行かない日本人に比べて、その行動パターンがそのまま歯の健康に反映しているような気がしま す。
 毎月の検診(メインテナンス)を推奨している私の言い分とすれば、10代の健康な時から始め れば、アメリカ流に年2回でも結構保てるけれども、すでに悪くなってからメインテナンスを 始める日本人にはやはり毎月が必要かなぁってとりあえずの結論をだして話を締めくくっておき ました。
 オーストラリアの歯科事情は、実際に行って確かめてきます。貴重な情報提供ありがとう ございました。

 さてさて、本論に入ります。
私の見解では、世界中の根管治療に対する理論的な部分に誤った認識があります。誤った認識 であっても、手間隙かけて丁寧に治療すれば結果的には私が意図するポイントをクリアするこ とができます。そのためには、根管治療先進国(私の勝手な言い方)並みの高額治療費もやむ を得ないかも知れません。保険制度が充実?した日本で決められた根管治療の費用は私も異常 に軽く扱われていると思います。手を抜くいい訳にはならないとは言うものの、社会主義的な 価値観の下では、世界歴史が証明した通りの結果が現れているのが日本の根管治療の実態でし ょう。
 同じ手を抜くにしても、正しい理論に基づいて簡略化したならば根管治療先進国と同じ程度 の結果が得られるでしょうね。原則として保険内治療という方針でも、丁寧に治療されている 先生も少なからずいらっしゃいますので、全てが悪いとはいいきれません。反対に保険外で 根管治療されている先生は、それだけ世間の厳しい目に耐えられるだけの技術と自信があるか らこその選択ですので確率的には数段有利なケースが多いと思います。
 抜歯は原因除去という観点からすれば、理論的には正しい方法ですので誰が行っても良好な 結果が得られます。同様に、歯を残したまま理論的に正しい方法でポイントを捕らえて治療す れば良好な結果が得られます。

 実際の通院の可否ですが、結論から申し上げると、ご希望の治療の多くが可能な範囲だと 思います。なにせ数が多そうですので、一発必中はプレッシャーですが、9割方ご希望通りと いうことであれば可能性は高いと思います。もっとも親知らずはあまり治療の対象にならな い(できない)ケースが多いことをあらかじめ承知してくださいね。


返信:2002年12月19日 13:46
 河田先生
懇切丁寧なご回答を早々にいただき、ありがとうございました。帰国の計画をもう少 し煮詰めてから、次回以降の質問受付日に、より具体的な質問をさせていただきたい と思います。とりあえず御礼まで。

初診時パノラマ
|6根管治療不備と二次カリエス


診断:
 親知らずを含めて神経を取った歯が18本、抜去歯1本と大量の歯が治療済みでした。オーストラ リアでの治療見積もりが200万円と聞いてかなり身構えて診させていただきました。幸いにも根管 治療の不備による根尖病巣が少ないのと、重篤な歯というのが少なくて安心しました。今後のメイ ンテナンス次第で相当長く保ちそうな歯がほとんどです。

 右上の親知らずは、オーストラリアでも診断された通り抜歯になりましたが、左上の6番は多少 無理すれば使えそうな状態でしたので、根管治療をしてクラウンで回復します。6|78には 小さな根尖病巣がありますが、症状の全くない今、無用な治療を行うべきではないと判断します。 根尖病巣の大きさに関係なく、根管治療の完成度が予後を左右しますので、症状がない時点では 無用な刺激は避けるべきだと思います。

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