日付、時間:2003年2月12日 23:58
氏名: CH
所在都道府県: 千葉
職 業: 主婦
年 齢: 31歳
性別: female
質問:
歯並びと歯質が悪いため、幼少の頃から歯医者に通い続けて、どんどんクラウンが増える
ばかりで、悩みはつきません。
7年程前に、左側の奥顎から耳の下あたりが腫れた感じがして、左下奥から2番目歯の舌側
の歯茎に口内炎のようなものができたため、阪大歯学の研究室にいた知り合いに相談して、
根管治療をしてくれる先生を紹介してもらいました。
レントゲンで左の第1臼歯(6)の歯根に影がみえて、病巣になっているということがわか
ったため、クラウンをとって、数ヶ月間の根管治療のすえ、再度クラウンをかぶせてもらい
ました。治療後は、左側に多少の違和感は残ったものの、左首の腫れや口内炎は無くなり、
先生に感謝しました。
その後、7年前の治療前のようなひどい腫れや口内炎はありませんでしたが、左耳下あたり
は3年前からまた腫れている感じがしています(大阪から千葉に引越する直前から症状がで
て、歯の問題ではないかと疑っていたものの、その時は扁桃腺の腫れもひどかったので、耳
鼻科にかかったところ、慢性副鼻腔炎と診断されて、その後も耳下の腫れは治らず続いてい
ます。左奥顎あたりもなんとなく違和感があるので、歯が原因で副鼻腔炎になっているよう
な気もしています)。
最近、年1回受診している歯科検診で、パノラマ写真を撮たところ、7年程前に大阪で根
管治療をした歯(6)の根のまわりが黒っぽく写っていることがわかり、先生から「抜歯し
てブリッジにしたほうがよいでしょう」といわれてショックを受けました。再度、根管治療
をしてもらえないかどうか質問したところ、「病巣がひどいので、根管治療をしても99%
良くならないでしょう」というお答えで、またまたショックを受けました。
今現在は、左奥上の虫歯(7)(4)2本を優先して治療中で、左奥下の歯の治療はまだ
少し先になりますが、ずっと気がかりです。左奥顎にはずっと違和感が続いているし、もし
かしたら副鼻腔炎の原因にもなっているのではとも気がかりなので、病巣を抱えた歯は早く
抜歯したほうがよいのかもと思ったり、ブリッジにするのも善し悪しかなと不安に思ったり、
本当に再度の根管治療はできないのかしらと思ったり、悩んでいます。
以前通った歯医者は大阪で、今は千葉に住んでいる為、以前の担当医に相談することもでき
ません。
再度、根管治療をするというのは、無理・無駄なのでしょうか?
以前、阪大の知り合いに聞いた話では、きちんと根管治療をしてくれる歯医者は少なく、
技術が無いこともあり安易に抜歯をすすめる歯医者が多いということで、今の先生でよ
いのか不安になります。
主婦なので、時間は自由になるので、大学病院でも、少々遠い病院であっても、治療しても
らえるのなら通って歯を残したいです。
また、今現在は、多少違和感はあるものの、ひどい症状では無いので、しばらくは抜歯しない
で何年か様子をみてみるというのでは、どういう問題があるのでしょうか?
感想:
とても勉強になります。是非こんな病院にかかりたいです。
阪大のお知り合いの方がおっしゃる通りです。早い話が一度神経をとった歯はほとんど使い物
にならない(運が良ければ使えることもある)というのが現状の歯科事情です。そのことを日本
中が知って対処すべきですね。毎月汚れをとって、細かな異常を見つけた段階で対処していけば
神経をとらなくてはいけないような事態はほとんど皆無です。
そのことは、今健全だと思っているあなたの歯についても言えることです。神経をとってしま
った歯の対処に労力を費やす一方で、同じ過ちを繰り返さないためのケアを忘れないで下さい。
さて、その根尖病巣が大きくなった歯ですが、大きさに関係なく完璧な再度の根管治療ができ
る状態であれば治癒の可能性はあるはずです。まずその状態をみて根管治療をしてみようかとい
う先生ならそれなりの技術と経験があると思います。確率的には大学病院の保存科(根管治療
専門科の名称は大学によって異なります)が高いと思いますが、これも担当する歯科医に大きく
左右されます。
噂や、インターネットでの検索も有効だと思いますが、最終的には実際行ってみないと分から
ないでしょうね。少なくとも抜歯を勧める先生に無理やりお願いしてもムダでしょう。
そのまま放置したら…私の医院でもあります。一度治療してそれ以上の根管ができないことが
分かっている歯については、絶対に治癒することはないし、今後も腫れるけれどもその都度薬か
何かでごまかしながら使えるところまで使いましょうと。
最大のポイントは、周囲の歯に悪影響を及ぼさない範囲ということですから、メインテナンス
を継続されていて常に監視下にある患者さんに限ってそのような選択をしています。
幼少の頃から虫歯が多く、毎年の歯科検診ごとにクラウンが増えていき、今年の健診では、
左下6以外に合計7本も要治療を指摘されました。今は左上の2本を同時に治療中で、多分ど
ちらもクラウンになるようで、その他にも今回クラウンになる歯があるかもしれず、治療でう
ってもらった麻酔で隣のクラウンの歯茎の腫れもあり、これももしかしたら根尖病巣かもと不
安に思ったり、最近はショックと不安で毎日憂鬱で暗い気分が続いています。
朝昼晩、自分なりに気をつかって歯磨きやフロスを続けてきたつもりですが、私の歯は年々
悪化していくのに対して、夜寝る前に1回しか歯磨きをしない主人や、ランチ後に簡単な歯磨
きしかしない損保パートの同僚達には、ほとんど虫歯が無い!(何故?)という不公平を羨ま
しく思い、自分の歯のこれからの運命を比較して考えて、さらに悲嘆にくれるこの頃です。
ひどく落ち込んでいますが、ネット検索でみつけた先生のHPは、本当に勉強になることが
多いく、何度も何度も拝見させていただいています。私と同じくらいの年齢で同じように悩ん
でいる方々のQAを読んで、先生の懇切丁寧なご回答が大変参考になることはもちろんのこと、
同じように悩んでいる方々がいるということも励みになり、その方々が今後に向けて前向きに
頑張っていこうというのも伺えて、少しは勇気づけられます。
歯医者さんに通うと、次々と要治療箇所がみつかり、治療そのものも怖く辛いので、挫けそ
うになりますが、少しでも歯の寿命を延ばす為にも、私も落ち込み感に負けずに、頑張ってい
かなくてはと思います。
<1.根管治療のリスク>
7年前に阪大歯学に在学していた知り合いに根管治療という言葉を初めて教えてもらい、根
管治療をしてくれる歯科医はとても少ないということで、治療してくれる先生を紹介してもら
い治療を受けましたが、根管治療について、河田先生のHPで記載されている「歯根破折や穿
孔のリスク」があるということは、あまりわかっていませんでした(もしかしたら最初に説明
があったのかもしれませんが、7年前のことなので..)
運悪くそういう状態になってから抜歯することになるのと、最初から根管治療をしないで抜
歯するのとでは、どういう違いがあるのでしょうか? 素人考えでは、前者の抜歯のほうが、
リスクが高くなりそうな気がしますが、どうなのでしょう?
<2.根管治療の治療期間>
知り合いに教えてもらった記憶によると、根の状態がひどければ、根管治療は気長に数ヶ月
から1年、あるいはそれ以上かかり、ひどくなければ、数回で終わるということでした。実際、
7年前の治療は、数ヶ月かかりましたが、事前にきいていたよりは短い期間で終わったと思っ
ていました。
今、通院している根管治療をしてくれなさそうな歯科にも「根管治療について」という貼り
紙があり、「平均数回かかります」と記載されています。再度の根管治療をしてくれなさそう
なので、私としては、今の歯科は、ひどくないもののみを手がけていて、ひどいものは、要求
される技術に対して割にに合わない仕事なので、わざわざやりたくないし、技術と実績もない
のかしら?と勝手に思っていました。
河田先生の病院では、独特の方法(?)のため、1,2回で終わるということですが、ひど
くても1,2回で終わるということなのでしょうか? どういう違いがあるのでしょうか?
<3.根管治療は治療後どれくらいもつか>
以前の数ヶ月かけてよくなり、大阪にいた4年前までのレントゲンでは問題なかったはずで
したが、それからさらに3年たって、自覚症状はほとんど無いものの、今回パノラマレントゲ
ンで問題を指摘されたわけですが、これは7年前の根管治療が、あまり丁寧でなかったという
ことにも考えられるのでしょうか?
それとも、根管治療の成果は、その根の状態によりけりで、まあとりあえず7年延命できただ
けでもよかったと考えたものでしょうか?
以前の先生には感謝しているし、多分「後者」が正しいのかなと思っていますが、治療後ど
れくらいもつものなのか、参考までにお伺いしたいです。
<4.白いクラウンの選択>
現在、別途治療中である左上の(4)は、10代の頃に虫歯になり、有髄で銀色の小さな詰
め物を入れていたもので、最近(5)との境が一部欠けた為、10日に詰め物を外して、神経
を落ち着かせる薬を入れてもらっています。外から見た以上に深く進行していたようで、治療
後にレントゲンをとりました。
次回17日にレントゲンの結果を教えて頂きますが、私の今までの経験では、10代の頃に
詰め物をした歯を20代半ばから再度治療して、次々とクラウンになってきたので、4)も
(7)もクラウンになるものと覚悟しています。(7)はともかく、(4)はよく見える位置
のため、保険の範囲の銀色にはしたくないと思っています。
白いクラウンは、今までに経験が無い為、セラミック(約8万)かプラスチック(約4万)
かの選択に迷います。セラミックは硬いため、噛み合わせる自分の健全歯まで削れるリスク
があるということですが、プラスチックのほうは、あまり情報を見かけないのですが、銀歯よ
りもやわい歯なのでしょうか?
どちらにしても、そのクラウン(というか歯根)が何年くらいもつかも、わからないため、
どちらのお値段も高いので、どちらにするか迷います。ほかにもメリット/デメリットがあれ
ば、教えて下さい。また、クラウンがどれくらいもつかということに、自分の根の元々の素質
や状態も大いに関係するのですよね?
長々とあれこれ質問して、すみません。ご多忙でいらっしゃるでしょうし、ご回答も大変だと
思いますが、教えて頂ければ嬉しいです。
回答:
<1.根管治療のリスク>
まず第一に、抜髄や根管治療には限界があり、できるだけ抜髄なんかしなくても良いように
ケア(毎月の歯石除去と検診)と早期治療を心がける…というよりもケアをしなくてはいけな
いんだという国民的教育が必要です。その上で、抜髄や根管治療が必要となったケースについ
てという前提で、「歯根破折や穿孔のリスク」があるということを理解して根管治療を行って
延命を計るのがベストな選択です。
延命が計れるケースが80%、多少効果があるもの10%、徒労に終わるもの10%。徒労に終わ
った10%については、当然のことながら最初から抜歯した方が楽であると同時に、結果的には
誤った選択だったといえますが、なにしろやってみなければ分からない。
<2.根管治療の治療期間>
炎症がどうして起こるのか、どうすれば炎症をなくすことができるのか。という根本的な考え
が異なりますので治療の仕方が違います。
一般に、細菌が多数生息しているから炎症が起こると思われていますので、痛みがなくなるま
で何回でも薬を取り替えて治癒を待ちます。私の場合、汚物(異物)があるから炎症(=痛み)
が起こると考えていますので、基本的には、根管内の汚物をできるだけ完璧に取り去りさえすれ
ば炎症は消失すると考えています。従って納得のできる清掃は一日だけで十分です。
細菌を全て取り去ることはできないけれども、トゲさえ抜いてやればあとは生体の治癒能力で
自然と治る。治らないのは、まだトゲが残っているはずという考え方です。
<3.根管治療は治療後どれくらいもつか>
“4年前までのレントゲンでは問題なかったはず”というのがちょっと曲者です。つまり、
根管治療や根管充填は完璧だった、でもその後歯根破折して急激に悪くなったと推測できるから
です。破折していても今の段階ではレントゲンで確認できないという状況が想定できます。
神経をとった歯はもろくなりますので、歯根破折は何時か起こり得るアクシデントです。最初
に神経をとった、もしくは神経が死んだ時点から7年以上経過しているので仕方の無い出来事で
す。根管治療に不備があったとしても7年は一応合格ラインですし、その場合は再度の治療が
可能です。
私事ですが、歯根破折や根管治療の不備を含めて10%程度のものは10年以内に再発します。
20年もするとさすがに、症状こそないけど小さな根尖病巣ができているものを含めると50%
程度になってしまいます。もっと上をめざしたいけど、今の機械や材料ではそれ以上が難しい…。
<4.白いクラウンの選択>
セラミックはかみ合わせ部分もセラミックですので、硬すぎると指摘されていますがそれで
何らかの障害が起こるということは非常に考え難い。硬質レジン前装冠は、かみ合わせ部分が
通常金属ですので、基本的には保険の銀歯と同じです。白いレジン部分が壊れたり磨耗したり
変色しやすい反面、少なくとも初期の段階では審美的に優れているということです。
どの材質を使ったにしても、根管治療や歯槽膿漏に対する備えは同じですので機能的には
保険の銀歯で十分です。あとは審美に対してどれだけ投資できるかだけの違いです。