医者は患者を選べませんが、患者は医者を選ぶ権利があります。
医者を選ぶ権利

日付、時間:2003年3月18日 23:19 氏名:  YK  
所在都道府県:  東京  職 業:  その他  年 齢: 45歳      性別:  female 

医者を選ぶ権利 質問:
 先月、生活歯でブリッチの支台歯右上5番に激痛が来て、大学病院の歯科麻酔科を紹介 されたことをご相談したものです。
 それから、薬物療法を受けていましたが治ることはなく、先週同じ右でこの歯の真下の 歯に痛みと腫れが出てきました(この歯は昨年治療しました。神経はありません)。 現在も大学病院麻酔科に行っているのですが、今回痛み出した歯の根にはまだ小さいです が丸い陰が出来ているのですが、麻酔科の先生はおかしな理由をつけて治療をしてくれま せん。その理由は、根を開けてみて痛みが止まらなくなるかも知れないからと言う ことですが、そんなことは今まで一度もありませんでした。
現在はボルタレンを毎日痛みがなくても飲むようにといわれていますが、私は納得できま せん痛み止めは対処療法ですよね。根本的な治療法ではないですよね?
保存科でちゃんと治療を受けたいのですが、こういう場合無理でしょうか?
陰が出ているのに、根の治療を拒む麻酔科の先生のお考えが解りません。 よろしくお願いいたします。

感想:
前回の質問の時本当に親身になってご回答いただきありがとうございました。

回答
 “根を開けてみて痛みが止まらなくなるかも知れないから”って、悲しいことに大学病院の 根管治療でもそういうレベルだっていうことです。従って右上5番も保存科で治療しても確実 に治るとは言い切れませんが、少なくとも的外れな麻酔科の治療よりも治癒確率は高いと思い ます。
 “丸い陰が出来ている”ということですので下の歯は間違いなく根尖病巣でしょう。ご推察 の通り、痛み止めは対処療法ですのでそんなことをしている治療にはもう見切りをつけるべき です。強引に訴えるか、勝手に保存科に行かれてみてはいかがでしょうか。医者は患者を選べ ませんが、患者は医者を選ぶ権利がありますので。


返信:2003年3月19日 22:34
 河田先生こんばんは。早速お返事ありがとうございました。先生のホームページを良く拝見 していて、感じる事ですが、治療しても痛みが止まらない人のご相談は沢山あるようですが、 治療しないで痛みが止まらないと言う当たり前の事を先生にご質問している私に対して、河田 先生はいつも真剣に対応していただき本当にありがたく思っています。
 通院していた医院の先生や、大學病院麻酔科の先生のお話を聞いていると、なんだが自分が 特別な体質で歯の治療をすると痛みが止まらなくなる人のように思えてくるから怖いです。

 大學の麻酔科の先生は、私の訴えに2転3転診断が変わり、最後にこのまま放っておいて、抜 歯になりたくないと申し上げると、もし根の開けて痛みが止まらなくなったらどうするのですか? と切り返してきます。
 どうして、根拠も無くそんな事を言われるのか理解できません。麻酔科の先生は根の治療の 専門家に相談して見ると言われたのですが相談しては下さいませんでした(科が違うからです か?)。

 このまま、薬だけ続くようなら通院を止めて、他を当ります。ボルタレンは治療薬ではない ですよね。何もしなければ、悪くはなっても、良くはなりませんよね。 河田先生のメールにはいつも励まされます。

回答:
 例えば風邪のように自然治癒が期待できる疾患ですと、ボルタレンのような消炎鎮痛剤を服用 して症状を抑えている間に治癒する疾患もあります。診断が的確であれば治療結果も良好になり ます。逆に治療結果が思わしくない場合には、診断を疑います。医者は診断の間違いを他人、特 に同業者に知られることを嫌いますので、他の先生に相談することに多少ためらいがあるのでは ないでしょうか。


返信:2003年3月20日 8:11
医者を選ぶ権利  河田先生こんにちは。先月に引き続き大変親身なご助言ありがとうございます。
 先生方のご診断が違った時の対応って難しいのですね。現在私は紹介と言う形を取っている ため、麻酔科で一番上の先生に診察を受けています。
 昨日のメールに書きませんでしたが、今回の根尖病巣になった歯及び、2月にご相談しまし た、激痛が起きた生活歯に対して、一応病名がついています。ころころ変わる病名で、最近は カウザルギーと付けられています。
 ネットで調べましたら、信じられないような事が書かれていてなんでこんな病名に?と言う 思いで一杯です。顎やリンパが腫れる少し前に、耳の後ろが腫れて痛みが出たので耳鼻科に行 って、抗生剤と痛み止めを頂きました。耳の腫れ等はその薬で治ったのですが、その事を診察 の時に申し上げましたら、麻酔科の先生は「それで決まり」と言われ関連痛とか、先のカウザ ルギーになってしまったのです。

 私には、どうしてもっと現実的に診察をして頂けないのかと言う思いと、大學の痛みの専門 の先生には余計な事をお話してはいけないと言う教訓を学びました。麻酔科の先生はどうして も、非歯原性の痛みじゃないと困るようです。大学に行った私が甘かったのですね。
 いつも河田先生には、先生方の本音を語っていただきまして、怖いですが、とても良く理解 できます。 先生のような方が身近にいてくださると、安心して治療が受けられますのに、現 実は厳しいですね。これからは、警戒して先生方とはお話したいと思います。
 何回もお手数をおかけいたしまして、申しわけありませんでした。本当にありがとうござい ました。

カウザルギー
 アメリカの市民戦争で四肢に銃創を負った兵士の“激しい痛み”をDr.Mitchellはカウザル ギーと表現しました。ギリシャ語で焼け付くような痛みという意味ですが1つの疾患名として 定着しています。
 カウザルギーは受傷後数時間で始まりますが、受傷後数週間程経てカウザルギー程ではない 中等度の自発痛で痛覚が過敏になり、浮腫・充血・発汗などの症状が出現し、長い経過を経て 皮膚の萎縮や骨の変化を伴う病態があります。反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)といわ れてきましたが最近ではCRPS、局所性に分布する(regional)多様な臨床症状(complex)を伴 う痛み(pain)症候群という意味の命名に一括されるようになりました。これらの中には交感 神経が関与している痛みがあり交感神経遮断術が有効な場合があります。

NEXT