日付、時間:2003年3月25日 11:58
氏名: I.Y
所在都道府県: 愛知
職 業: 会社員
年 齢: 27歳
性別: female
質問:
初めまして。歯槽膿漏についてお伺いしたいのです。
この前、下部の中切歯(1)の歯茎の異常に気付き歯医者に行ったのです。診断されたのが
歯槽膿漏。それも重度らしく、もうすぐ歯が抜けるかもしれないと言われました。とりあえ
ず歯石を除去され、プラークコントロールを指導されました。歯石除去も痛みが酷いため、
一度には全てを行わないとの事でした。
このまま、治療を行っていけば歯が保てるのでしょうか?
不安で仕方がないのです。今の状況から良くなることはあるのでしょうか?
手入れ次第です。
歯石を取っても、ブラッシング指導をしても無駄。「歯槽膿漏は、結局何をしても多少の延
命がやっと」というのが世間一般の認識です。但し、「徹底的に歯石を取って、毎月歯石を
取り続ける」という方法は含まれていません。私の臨床では、ブラッシング指導やその他の
処置をあまり重要視していません。ただひたすら毎月歯石を取り続けることを最優先してい
ます。
その結果、驚くことに歯槽膿漏や虫歯の進行をほぼ完璧にコントロールできることがわか
っています。その事実を一般の方がご存知ないだけでなく、ほとんどの歯科医が知らない
というのが実態です。
すでに骨破壊の著しい前歯を何処まで延命させるかということも大切ですが、今大丈夫と
思っている他の歯こそ大切にして下さい。放置しておくと当然の如く前歯に追随するはずで
すが、これらの歯は生涯コントロールすることが可能なはずです。
当面の歯石除去は行っているようですので、毎月の歯石除去を頼み込んでもしてもらう様
にして下さい。それが為される様であれば歯の保存は十分可能だと思います。
回答:
1枚のレントゲンだけで判断することはできません。特に全体を見るために撮ったパノラ
マタイプですと、前歯部の写りが悪く本当に骨がないのかどうかは分かり難いと思います。
詳細を見るためには、デンタルタイプの小さなレントゲンを撮って診断する必要があります。
その結果、やはり骨が相当量(2/3以上)喪失しているようであれば、多くを期待すること
はできません。私の場合そのようなケースでは、歯の神経を取って外科手術のうえ連結固定
という最後の手段を選択します。でも本当に“真っ黒で何もありませんでした”ということ
であれば、歯はグラグラでノレンのような状態のはずですよ。
歯石除去についての質問ですが、歯肉縁上歯石と歯肉縁下歯石の取り方の違いを知りたい
のです。今回、上部の歯石を取る時は麻酔を使ったのに酷い歯槽膿漏と診断された下部の歯
石を取る時には麻酔は使われなかったのです。縁上歯石を取る時にも麻酔は使うのですか?
回答:
“歯肉縁上歯石と歯肉縁下歯石の取り方の違い”は、簡単に言えば麻酔をしないで除去す
るのが縁上歯石、麻酔をして除去するのが縁下歯石というような規定になっています。現実
の問題として、麻酔をしないでも取れる範囲の歯石を取って、それ以上深い位置にある歯石
を麻酔下で行ないます。
手順としては問題ないのですが、それだけ進行した状態で治療行為を行なえば何らかの障
害が起きても不思議ではありません。基本的にはそれらを乗り越えて健康さを取り戻して、
それを維持することが大切です。
とはいえ、“歯と歯茎の間に白い液体(膿?)が出てきてしまいました”はひょっとした
ら本当にウミかもしれません。“歯茎が少し下がった”というのはそれだけ歯石の量が減って
健康さを取り戻した証拠ですが、まだその下には歯石が残っているのかもしれません。
歯石除去は間違いなく外科的処置ですので、一時的には出血などの障害が生じますが、それ
らを最小限に抑えて速やかに治癒させるのが薬剤の役目ですので、胃の調子と相談しながら、
場合によっては薬剤の種類を代えたり胃薬を併用しながら外科的処置をサポートした方が有効
です。
回答:
かなり歯槽膿漏が進んで骨破壊も著しいようですので、簡単には歯石が取りきれない状況
かもしれません。現実に何回も歯石除去した積りでも、いざ歯茎を切って手術してみると結構
歯石が残存しています。
もう一つの可能性はカンジダ菌の存在です。私は、歯槽膿漏の原因
がカンジダ菌だとは思っていませんが、歯肉の炎症に、何らかの形でカンジダ菌が関与して
いることには間違いないと思っています。特に難治性というか、歯石除去をしても治まらない
、もしくは歯石除去すると一層歯肉が赤く腫れ上がってくるような場合にはカンジダの存在を
疑います。歯石除去により一般細菌が減少した結果、相対的にカンジダ菌が増えて歯肉炎症を
増悪したものと考えられます。この考え方は今の所歯周病学会の認知を
受けていませんが、今週の週末あたり会長と話しあう予定になっています。
何らかの形で抗カビ剤を使えば早期に解消する可能性はありますが、一般の開業医でその
薬を持っている所が稀なのでじっくり耐えるしかないかもしれません。
ご多忙の中、いつも回答いただきありがとうございます。
これからも相談させていただくと思いますが、よろしくおねがいします。
回答:
相当熱心に歯石除去を行なってくれているようです。他を探しても今以上に熱心な先生は少な
いと思いますよ。深い位置に存在する歯石が簡単に取りきれないことは
種々のデータで分かっているはずなのに、一度歯石除去を行なったのち1か月以上経過して
検査の結果必要と思われる部分については再度歯石除去を行なうという面倒な保険規則がありま
す。「まだ歯石が残っているみたいだからすぐに取りましょう」というわけにはいかないという
事情があります。無駄な治療はしないようにしようとか、検査結果に基づいて正しい治療をしま
しょうという趣旨だとは思いますが、一体だれのための規則かと腹立たしく思うこともしばしば
です。
“つなぐ”というのは、ぐらついた歯同士をレジンと言われるプラスティック様の材質や、金
属ワイヤーで連結することです。差し当たって動揺を止めることはできますが、見た目が悪いの
と清掃がし難くなって個人的にはあまりお勧めではありません。
歯槽骨破壊が2/3以上進行してほとんど先の見込みがない場合、私も連結固定を選択しますが
その場合、該当する歯の神経を取ってFOPと呼ばれる歯周外科手術を行なったのち金属冠による
強固な固定を行ないます。ワイヤーやレジン如きではすぐにはずれたり切れたりするのと、
抜髄による歯槽膿漏抑制効果と手術による完璧な歯石除去を狙った
究極の処置です。
上顎の1番は歯石が残っている可能性と、歯髄がすでに死んでいる可能性を疑って処置すべき
状態のように思います。抜髄、もしくはすでに死んだ歯髄の除去(感染根管治療)が必要かも
知れません。
前回の回答で
> 上顎の1番は歯石が残っている可能性と、歯髄がすでに死んでいる可能性を疑って処置すべ
き状態のように思います。抜髄、もしくはすでに死んだ歯髄の除去(感染根管治療)が必要かも
知れません。
連休明けの診察に行って上顎の1番の動揺が治まらないというと縁下歯石を取ってもらいまし
た。その時、先生に言われたのですが「これは何回も出来ないから」と言われたのですが、どう
いう意味でしょうか?
あと治療後に言われていたのですが、歯石を取った部分が痛むかもしれないと言われていたので
すが、モノが前歯で噛めないほど痛いのですがどうしたらいいのでしょうか?
動揺する歯は歯石を取ることで動揺が止まるのでしょうか?
歯磨きは痛みを堪えてかかさずやっていますがツライです。
来週の治療は、『つなぐ』と言われて今は現状維持の下部(1)の歯茎の赤みのある場所をも
う一度見せてと言われました。前から歯石が残ってると言っていて何もしなかった部分の歯石除
去をしてもらえそうです。前に河田先生に熱心に歯石除去をしてくれていると言われた通りの先
生みたいです。今回の上顎の歯石除去も時間をかけてやってくれました。その分痛いですが・・
・。
いつも、お答えいただいてありがとうございます。これからもお世話になると思いますがよろし
くお願いします。
回答:
抜歯と歯肉の関係はあまりないけれども、歯槽膿漏治療を優先させるということだと思います。
どの程度の親知らずかは分かりませんが、日本の常識では全身麻酔で行なう程のものではないけ
れども、ひょうっとしたら、大学病院の病室が空いているくらいの理由かも知れません。まぁ、
余り深く詮索する必要はないでしょう。
「何回も出来ない」というのは保険規則。“前歯で噛めないほど痛い”は歯槽骨破壊が進みす
ぎて歯髄炎症が存在するかカンジダ菌の関与が考えられます。歯石が
無くなって炎症が治まれば歯肉が引き締まってきますので動揺は或る程度治まります。ただし、
破壊された歯槽骨が回復するわけではありませんので限界はあります。