治療後も、必ず月に一度は歯石除去を行なうよう心がけてください。
重度の歯周病です

日付、時間:2003年6月17日 0:42 氏名: ASA   
所在都道府県:   静岡  職 業:  主婦  年 齢: 55歳      性別: female 

重度の歯周病です 質問:
現在55歳ですが、1年半ほど前に下左2が動揺していたため歯科医へ行ったところ「重度の 歯周病です」と、初めて宣告されてしまいました(大変ショックでした、もっと早く教えてよ !って思いました)。
それまでは虫歯もほとんどなく、別の歯科医へ1〜2年に一度くらい受診に行っていましたが、 「歯周病」という言葉すら言われたことがありませんでした。何年も前から歯茎が下がりはじ めていたのですが、それも「歯の磨きすぎです」とか「歯磨きのしかたに気をつけて」と言わ れていました。ただ、歯茎はときどき痛くなったりしていましたので、市販薬を使っていまし たが、出血したり膿が出たりという症状はほとんどありませんでした。

 歯周病と診断した歯科医では、麻酔をしてスケーリングをし、ブラッシング指導を受けまし たがそれ以上の治療はすすめれれませんでした。電動歯ブラシ、歯間ブラシ、口腔洗浄剤など により、歯茎の状態はとてもよくなったのですが、最近になって動揺する歯が他にも多いこと に気付き、人に紹介されて転医しました。
 現在通院中の先生は歯周病治療に積極的で、はじめの1ヶ月ほどは検査をつづけ、その結果 として治療方針を挙げました。検査の結果は、歯茎の状態は良いが3〜5ミリくらいは退縮し ており、ポケットも奥歯では6ミリをこえているところもある、かなり骨も減っており特に上 左右7の歯槽骨は歯根のまわりの骨がほとんどありませんでした。また、上左2・下左右2の 3本は前へ倒れるような形になってきています。

 この先生の方針としては、「矯正をして、その後外科的手術」という案を出されましたが、 矯正にかかる時間と費用が大変大きい点で、また、動いている歯は矯正しても動揺はおさまら ないのではと、考えて「気がすすまない」ことを告げました。次の方針として、「一体型(連 結?)のブリッジ」が提案されました。14本をすべて連結するというもので、一本一本にかか る力を分散させる目的だそうです。私の場合、わずかに動揺している歯が多いので、その方法 が良いと考え、現在までに上右7抜歯、上左2抜歯、上左3〜右2の5本ブリッジ(仮歯)を行 いました。
 しかし、この5本ブリッジにする際に(上右1は差し歯になっていたので)1本抜き、3本抜髄 し削ったわけで、正直もったいないように感じてしまいました。このまま、方針どうりに治療を 進めてしまってよいものかどうか、迷いはじめています。歯石除去しながらも、どうしても抜け てしまう歯についてブリッジにする(それで最終的に14本一体のブリッジになる)、という方法 では遅いのでしょうか?

 また、この先生は「外科的手術(たぶんフラップのこと)は、矯正なりブリッジなりで歯列 を整えてからでないと、成果が出ない」と言われますが、素人考えでは、先に病巣を取ったほ うが良いように思うのですが(もちろんフラップ手術も本当は怖いので、他に気持ちに負荷が 少ないような方法があればうれしいのですが)、この点について河田先生のご意見をお聴きし たいと思います。
また、縁下歯石がどのくらい存在するものかは、実際に開いて目視するしかないのでしょうか?
上左2を抜歯した際、その歯には歯石はほとんどついていませんでしたが、歯茎は退縮してい ました。縁下歯石は歯槽骨は吸収されているような箇所にあるのでしょうか?
 長文になって申し訳ありませんでした。私たち患者は、自分の治療方法の先までが見えてこな いものですから、不安ばかりがつのります。どうぞよろしくお願い致します。

感想:
河田先生のHPにたどりつき、すばらしい歯医者さんがいらっしゃることに救いを感じました。 昨今親切でない医師が多々あるなか、患者でもない面識もない苦悩者に懇切丁寧なアドバイスを してくださっていらっしゃることに、尊敬いたします。

回答  “歯周病という言葉すら言われたことがありませんでした”という大半の歯科医の頭には、 50歳を過ぎれば重度の歯周病は当たり前、それが歯の寿命という考えがあるように思います。 有効な手立てを何も講じないでそうあきらめている歯科医の態度は当然変えるべきだと思い ますが、国民として普通にしていたら50歳を過ぎれば重度の歯周病は当たり前という事実を 基本的な知識としてもっていただきたいものです。お伺いした状況から、55歳としては平均 的な進行状況のように見受けられます。

 あなたの望んでいらっしゃる治療方針は、同様の立場に置かれた患者さんが同じように願う 対応です。そして私の行なう治療方針にも近いと思います。しかし、歯周病学会や厚生省が推 進する治療方針といえば、担当医の意図する処置方針と類似しています。矯正や早期?の手術、 さらに戦略的抜歯は私にとっても非常に違和感のある治療方針ですが、それなりに根拠と実績 があるものと思われます。しかも大半の歯科医が有効な手立てもなくあきらめた状態ですので、 そのような治療をしてくれる歯科医自体が希少な存在です。おそらく転医しようと思っても、 路頭に迷うことになってしまいます。

 基本的には、歯槽骨破壊の著しい所や炎症が起こっている所には歯肉縁下歯石が沈着してい る(もしくは過去に)はずですが、意外と見当たらなかったり少なかったりすることもありま す。実際に歯石をとって残っていないことを確認し、更に経過をみて判断する以外に歯石を的 確に見つけ出す方法がありません。手術をして直視するのが最も確実ですが、できるだけ避け たい方法ですね。
 いずれにしても言えることは、如何なる処置をしたとしても、術後のメインテナンスが最も 重要です。治療後も、必ず月に一度は歯石除去を行なうよう心がけてください。


返信:2003年6月17日 21:31
 本日6月17日の質問させていただきました ASAです。早速のご回答ありがとうござい ます。歯周病の罹患が年齢があがるにつれ多いという現実がよくわかりました。
 ところで、私が今もっとも気になっております”一体型(14本連結)のブリッジ”という ものについて、このような補綴の経験者が周りにいませんので、そのベネフィットやリスクが よくわかりませんので、教えていただけますでしょうか?
 現在何本か抜歯の必要がある歯があるようで(抜歯しなくてもいずれ抜ける可能性もあり)、 それに対してブリッジにしていくとすれば、ほとんどがブリッジの状態にはなってしまいます。 今すぐに一体型の補綴にするのも、すこしずつブリッジになっていくものあまり変わりはない のでしょうか。抜歯したところへ部分入歯を入れようとしても、たぶん横の歯が支えに耐えら れないと思います。
 また、一体型の補綴というのは、個人差はあるでしょうけれど、メンテナンスを充分に行っ たとして何年くらいもつものなのでしょうか?
 お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い致します。

回答:
 フルブリッジをできるだけ避けたい私ですが、ひょっとしたら日本で一番多く手がけたかも しれません。但し、おそらくあなたが抜く、もしくは抜いた歯程度のものばかり集めて、最後の 手段として選択していると思います。早い話が、他の歯医者で抜きなさいと見捨てられた患者さ んに限って、手術をしてフルブリッジで固定しているというところでしょう。
 如何なる状況にしろ、メインテナンスが予後を大きく左右することは間違いありません。その ようなヒドイ状況でもフルブリッジにすれば、左右の咬合圧をバランスよく受け止めてくれます ので、驚くほどしっかりして何でも噛める状態に回復します。現在最長のものが17年で、今現在 再工事中です。「今度17年保ったら84歳やね」と大笑いですが、一般には10年から15年が寿命で す。お伺いした状況はもっと良好ですので、途中のやり変えを含めて30年以上は保たせて欲しい ものですね。
 でも現実は厳しいと思いますよ。とにかくメインテナンスの有無が滅茶苦茶に左右します。 虫歯の発生、根尖病巣の発生。それぞれ1本でも問題が起きれば再治療の必要が生じますが、 現実の問題として多少問題が起こったからといって簡単にやり返ることは不可能です。虫歯の 発生や歯槽膿漏進行はメインテナンスでカバーできますが、1本のミスもない抜髄や根管治療 って普通は存在しませんよ。担当医がそれ程までに自信があるのかしら。