抜髄の妥当性は十分あると思います。
「赤っぽいしみ」

日付、時間:2003年7月29日 23:59   氏名:  Y.I.  
所在都道府県: 兵庫    職 業:  会社員  年 齢: 43歳      性別: male 

「赤っぽいしみ」 質問:
 2週間前、事故で前歯(左の中切歯)を1本強く打ちました。特段、ぐらついたり割れた りしておらず、今は痛みも感じませんが、2週間たった現在になって、歯の中ほどに横一筋 の薄い「赤っぽいしみ」が出てきました。
 近所の歯科医から「内出血なので、後ろから穴をあけて神経を取り出すべき」と助言いた だきました。しかし、単なる内出血であり、神経が根元から切れて死んでいないのなら、そ の必要はないように思えます。しばらく様子を見て、しみが固定したら表面を削りプラスチ ックで対応すればようように思えますが、アドバイスをお願いいたします。

回答  歯以外の場所であれば、血液が循環していますので内出血は自然吸収されます。しかし、 血液循環のない歯および少ない歯髄中においては自然吸収がなく血液は腐ってしまいます。 腐った血は生体にとって異物になってしまいますので、ほぼ間違いなく炎症を起こしてし まいます。そうなれば、痛みを発するかどうかは別にして歯髄が死んで、炎症は根尖部に 波及して根尖病巣を作ってしまうでしょう。一見何事もないように見える打撲ですら、歯髄 壊死から根尖病巣へと発展するケースが多い中で、内出血を確認した段階では抜髄の妥当性 は十分あると思います。
 最も、根尖病巣が確認されてからでも適切な根管治療を行なえば治癒の可能性が十分あり ますので、そのまま経過を見られていても取り返しはつくと思います。但し、“表面を削り プラスチックで対応”というのは、神経が生きた状態では全くあり得ない治療方法です。


返信:2003年8月5日 7:09
 先日は先生から丁寧なご回答をいただき、誠にありがとうございました。再度、質問させ ていただきます。
  1. 抜髄した場合、現在の前歯(左の中切歯)の褐色の横一筋のしみ(内出血による)は、 取り去ることができるのでしょうか。
  2. また、抜髄した場合は歯の色が変色すると聞きましたが、これを防ぐにはどうすれば よいのでしょうか。
    御多忙のところ恐縮ですが、人前で話す機会が多く、前歯の変色が心配です。

回答:
 抜髄後の変色には2種類あります。一つは、今回のようにヒビの中に入り込んだ血液や、 歯髄腔の中に残存する血液や有機質成分が腐敗して黒く変色します。これに関しては、有機質 成分が残留しないように可及的に削り取ることと、的確な根管治療および根管充填が必要です。
 もう一つは、抜髄後経年的に歯質が石灰化して茶色く変色する現象で、5年ほどすると徐々 に気になりだします。こちらの変色には対処方法はありません。現実問題としては、数年経って 変色が気になって仕方ないという場合に白い被せモノを装着するということになります。