今回も歯根のう胞
日付、時間:2003年9月2日 9:00
氏名: さんちゃん
所在都道府県: 長崎
職 業: 会社員
年 齢: 35歳
性別: female
質問:
10年前に左下第一小臼歯の下が、歯根のう胞だといわれ抜歯しました。その時に左上第
1大臼歯の神経を取りクラウンを入れて、金属(金で当時6万円)をかぶせました。今その
左上歯の歯ぐきが腫れてしまい(およそ3週間前)、近所の歯科医に行ったところ、「歯根
のう胞ではないが、根が炎症を起こしている。とりあえず、はぐきを切り膿を出しましょ
う。根の掃除をしても症状は良くならないこともあるので、そのまま腫れが引いたら様子
を見たらどうか」とのことで、「根管治療」はしたくないという感じでした。結局歯茎を
切るのはやめて、抗生剤をもらって帰宅し、現在腫れは引いています。
一応食い下がり「根管治療」してもらうようにお願いし、予約しましたが、先生のHPを
見てそこへ通うことはやめることにしました。今回の質問は以下の2点です。記ご報告しま
した左上第1大臼歯の炎症治療(おそらく要:根管治療と思います)をお願いしたいのです
が、(本気で行くつもりです)
- 現在住居が長崎です。通院は何回くらい必要になりますか。
- 期間はどれくらい必要でしょうか(おおよそで結構です)。
- 予約はとれますか。
感想:
先生のHPを見て、もしかしたら10年前の歯根のう胞も抜歯しなくても良かったのではない
かと残念でなりません。こういう情報を他の歯科の先生方がもっと公開してくだればと、、
強く思いました。このHPにキーワードでヒットして本当に良かったです。
初診時パノラマ |
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複雑な大臼歯と違って、単純な下顎小臼歯だとかなりの確率で保存可能だったと思います。
おそらく全国では、毎日のようにこの手の疾患で抜歯されているんでしょうね。最近は毎日の
ように私の医院に救いを求めて来院されています。成功率は多分95%、とにかく治療してみ
ないと分からないので、毎日がプレッシャーの連続です。
根管治療だけであとの処置は地元でするとして、治療回数は1歯につき原則1日です。
他の患者さんもいらっしゃいますので、治療時間は数時間は必要です。予約は、2週間ほど
先になると思います。пF0792-88-4682
診断:
レントゲン的には明らかな根尖病巣は確認できませんが、薄っすらと黒い影がみられます。
何よりも歯肉腫脹等の臨床症状があるということは、そこに炎症が存在していることを
意味しています。診査の結果歯槽膿漏によるものではないので、やはり根尖病巣があるものと
思われます。
頬側2根は根尖部分でくの字に弯曲していますので、過去の根管治療にも問題がありそうで
すが、病巣が小さいこと、過去に炎症を起こしていないことから不完全ながらもかなり完成度
の高い根管治療であると思われます。また、病巣の成長が非常に緩慢でしたので、現在の一時
的な炎症を抗生物質で押さえ込んでやれば当分症状を現すことがないであろうと予測されます。
最終的には、何時か何処かで根管治療を行なわなくてはいけませんが、今あわてて根管治療を
行なうことは得策ではないと判断いたします。
他に目を転じてみれば、中等度に進行した歯槽膿漏。それにかなり深く進行した虫歯等があ
って、これらを放置しておくことは新たな問題を引き起こすことは必定です。過去に失った
ものを追いかけるよりも、これから確実に失われていくものを阻止することの方がはるかに
治療効果が大きいと思います。