矯正をする限り健全な歯を抜くことは当然!?
“くの字”のさし歯

日付、時間:Fri Aug 13 3:47:43 Japan 1999    氏名: E.A   
所在都道府県:東京   職 業:主婦   年 齢:35歳      性別: female  

質問:
 出っ歯は矯正でないと治らないのですか?
私の歯並びは以前の石野真子さんとよく似ています。小学生の頃 矯正していた子がとても馬鹿に されいた姿を思い出してしまい 矯正治療には踏み切れずに とうとう35歳になってしまったのです が、ずっとコンプレックスを感じ続けています。
今年の初めに出産を終え、現在子育ての真っ最中で 当分 仕事には復帰できませんし、出産で 度胸もついたので 矯正治療をするチャンスかもしれないと思い 思いきって矯正歯科へ相談に 行きました。現在の歯型を取り、それを元に作成された完成模型と治療方針の説明を受けましたが、 完了まで期間・費用のことや 健康な歯を上下4本抜く事、器具を可能な限り長時間装着する事にも 抵抗を感じましたが、何よりも ショックだったのが完成模型です。確かにまっすぐには並んでいるの ですが 今まで どの歯とも噛み合っていなかった前歯二本が異常に大きく長く見えるのです。 喩えて言うなら 「ネズミ男」の様でした。
「石野真子さんは どうやって治したのか」と尋ねたところ「うちでやったのではないので分からない」 と言われ、「差し歯にはできないのか」と尋ねたら「歯茎の中の歯と見える部分の歯の角度が くの字  になってしまうので物が噛めなくなるので 矯正治療しか方法はない」と言われました。
歯型をとる際に一度失敗した事も あいまって不信感を抱きました。勿論 先生のおっしゃるように  矯正治療をすれば根本的に歯並びは治るのだと思います。しかし私の場合、年齢も若くないですし  特に気になる前歯が 少しでもましになれば良いと思っています。
これからの人生で 飛行機を歯で引っ張ったり、生肉を引き千切る事もないと思います。 「くの字の差し歯」は不可能なのでしょうか? 

ご意見・ご感想:
先生のホームページは、内容もとても充実していてレイアウトや機能にも 凝っていて とてもすばらしいですね。その上 相談や質問にも丁寧に答えて下さっている姿勢 にも感激いたしております。

回答  「左右の犬歯の後ろ(4番)を抜いて、上顎の骨を切断して押し込む」こんな外科的な手法も もありますが、全く論外でしょうね。

 矯正以外の方法としては、ご指摘のように前歯をさし歯にして引っ込めることは可能です。 しかし、バランスを考えると少なくとも左右2本づつ/計4本の歯をさし歯にしないと効果が薄い でしょうね。しかも、歯茎の出っ張りは解消しませんので満足感は今ひとつでしょうか? 前歯がひどいムシ歯であるとか、すでにほとんどがさし歯になっているのならこのように 補綴(ほてつ)的な手法で回復することも考えられますが、出っ張って隙間がある分ムシ歯も なく綺麗な歯である場合が多く、実際にはあまり多く遭遇する症例ではありません。  全顎的な歯周補綴(歯槽膿漏末期)の症例では私も時々このような補綴を行います。「年を とって綺麗になった」と患者さんから喜ばれることもありますが、おそらく健全な35歳の女性の歯 をさし歯にするには大きな抵抗感があります。

 勿論症例によりますが、矯正をする限り健全な歯を抜くことは当然と考えていただいた方が 宜しいかと存じます。どの程度の費用か期間かはわかりませんが、保険が効かない以上矯正 をする限り相応の負担はしかたのないことではないでしょうか。 また、完成模型まで提示して的確なアドバイスをなされているようですので、“歯型の一度の 失敗”程度で不信感をもたれることもない様に思うのですが…。

返信:
早々にご回答いただきありがとうございました。お礼が遅くなりまして申し訳ありません。
先生のおっしゃるように「健全な歯をさし歯にする必要はない」というのは 家族の意見でもあります。 もちろん 私も今まで 治療に踏み切れないのは 同じ思いからです。でも、私はいままでの人生の ほとんどを「出っ歯」で過ごしており、自分の顔を鏡や写真で見る度に「出っ歯」を気にしています。 髪の薄い人がカツラをつけるのと同様に 周りの人は「そんなに気にする事ないのに」と思えても 本人は気にするものです。
でもカツラの場合は 自分の髪を損なうことはありませんが、歯の治療の場合、矯正にしてもさし歯 にしても 自分の健康な歯を失ってしまうと事が大きな問題点なのです。
普通に生活をしていた場合、人間が歯を失う原因は 虫歯か歯周病と考えて良いのですか?
歯の寿命は平均どれ位なのでしょうか?
もし さし歯にした場合のデメリットは どんな事ですか?
教えていただけると幸いです。よろしく お願いいたします。

回答:
 ご指摘のとおり歯の喪失要因は、ムシ歯50%、歯周病50%、残りわずかが事故による喪失 といわれています。“歯の寿命”は約50年、つまり10歳頃に萠出した歯は60歳ころに無くなるのが 現状のようです。ただこれは、従来の手入れの仕方であって、私の言う“プロフェッショナル ・トゥースクリーニング”を継続すれば、生涯ほとんどの歯を残すことが可能であると信じていますし、 実際に私の医院では実践して大きな手ごたえを確信しています。

 審美的な要求がとても強いようですのでさし歯の可否はさておいて、デメリットについて考えてみます。
処置する歯は状況によって異なりますが、前歯4本もしくは両犬歯を含めて6本になると思います。 歯の傾斜角度を大きく変えるわけですから、当然神経を取って金属製のポストで歯頚部から上の 角度を変えます。この時点で必ず抜髄操作が加わることになりますが、抜髄した歯はもろくなりま すので最終補綴物は全て連結することになるでしょうね。そうした場合、抜髄した歯に根尖病巣が できても治療のやり直しはほとんど不可能です。おそらくその時点で新たな悩みを抱え込むことに なります。最終的にはダメな歯を抜歯して新たなBridgeを作ることになると思います。  最大のデメリットは根尖病巣の発生でしょうね。

 また、審美的な観点からみて“くの字”に作った補綴物は歯茎の出っ張りを全く解消しませんし、 歯肉変色も新たな悩みに発展する可能性があります。歯冠形態もスペースとの関係で、気に入った 形態になるかどうかは疑問です。

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